願いを込めて進んだ道

息子の夏休み真っ只中に、新宿の主治医の病院で診察になることは分かっていたので、とりあえず考えてみました。そうか、その日にヤクルト戦を入れてしまえばいいのかと。そして、テレワークをしているプログラマーのMさんに聞いてみると、こちらが通院中は二人でランチをしてくれることになり、本気で拝みたくなりました。これで予定は決まりだと喜んでチケットを取り、予約を入れ、当日の朝を迎えて。「昨日は雨で試合が中止になったし、今日もぐずついているから怪しいね。でも、てるてる坊主を作ったから願おう。お母さん、病院だからいつもより早めに出発でごめんね。」息子にそんな話をしていると、村上選手が出場するホワイトソックスの試合が、延長戦に入りそうな雰囲気に。電車の時間が迫っていたものの、9回裏までは見届けようと決めると、集中豪雨のような雨が。「え~!やっぱり今日の試合ないかなあ。とりあえずまだ家で良かった。一気に止むこともあるから、ギリギリまで待とう。」と言っていると、延長戦に入り、あっさり止んだことも分かりました。ホワイトソックスに感謝だね!と思いながら、慌てて出発。長丁場だけど、いい日になりますようにと空を見上げた時間。黒い雲は見なかったことにしよう。

その後、新宿に辿り着き、新大阪駅で別れたMさんと合流。予約の時間があったので、息子をお願いし、足早に一旦バイバイしました。病院に着き、診察室のドアを開けると、いつもの穏やかな先生が待っていてくれて。空気が驚く程柔らかくなる、主治医の持つ人間力がそうさせてくれるのかなと。昨日息子と一波乱あり、ざらついていた気持ちが包まれていくようで、そんな不思議な力に守られているのかもしれないなと改めて思いました。「今度は2か月後だね。お大事にね。」「ありがとうございます。先生もお体に気を付けて。」「ありがとう。」お互い微笑み、会釈をするひととき。優しさが交錯すると、近くにいた看護士さんまでもが微笑んでくれました。病院がマシュマロのようだ。それから、慌ててマックへ行き、二人と会ってランチをすることに。気圧の変動が大きく、三人とも滅入っていて、タクシーで外苑前まで乗せてもらい、近くのカフェで開門まで待つことにしました。すると、ヤクルトファンを次々に見かけ、少しずつテンションが上がってきて。ファミマに寄り、Mさんにお礼を言って神宮で別れました。出会ったのは、彼が本当に苦しそうにしていた時期で。人が良いからいろんなことを背負い込み、傷つき、辛い渦の中にいるようでした。私に何ができるだろうと思ったのだけど、話を聞くこと、それしかできない、でもそれが何より大切な気がしました。そこから、ゆっくりV字回復、一番底にいた姿は、今はどこにも見えなくて。恩人だと言ってくれるMさんに助けられているのはこちらの方で、こういった関係がお互いを成長させてくれたりもするのかなと思いました。ありがとうの気持ちをありがとう。

雨が一旦強くなった神宮球場、それでも入ることはでき、キッズ会員特典のピンバッジをゲットしてからライトスタンドへ向かいました。椅子はベタベタ、でも雨は一旦上がりほっ。蒸し暑かったのでパインがどっさり入ったかき氷をゲットして、拭いた椅子に座り二人で食べると、やっぱり気持ちがもう一段上がっていくようでした。すると、見上げた空には虹が。そこに光も射し込み、つば九郎?と思うと泣きそうになりました。神宮のお空でやっぱり見守ってくれていたんだね。その後、いつものようにスタメン発表が。時間通りに試合が始まりそうで、野球を見られることに心からの感謝だなといつもよりぐっときました。そして、プレイボール。先発の山野投手が安定していて、1回裏には広島から先制。息子と歓声を上げていると、前列の50代のご夫婦もこちらを振り向き、歓喜のハイタッチ。一気に傘が開き、東京音頭の大合唱が待っていました。ん~、曇り空に傘がきれいだ。それからも点数が入り、左隣の一人で来ていた若いお姉さんとも笑顔でハイタッチ。チャンステーマを歌い、タイムリーが出て、周りのみんなとハイタッチをし、傘を開き、東京音頭を歌ってバンザイをしてから、またバチに持ち替え応援歌を歌うとさらにタイムリーが。嬉しい忙しさが続きました。その時、USJの帰り道、三ノ宮駅で起きたことが思い出されて。ふと息子が伝えてきました。「今すれ違った若い男の人、ヤクルトファンだ!」「えっ?どうして分かったの?」「男の人はスワローズのユニを着ていて、ボクがヤクルトの帽子を被っていたから、目が合ったの!」「ええ~!神戸で会えるなんて嬉しいね!Rがヤクルトファンだって気づいてくれたよね?」「うん!同じクルーの帽子被っていたから、思いっきり目が合ったよ!」なんだか感激だな。地域が変わっても、仲間が見つけてくれる。お兄さんは燕パワーユニを着ていて、段々遠くなっていく背中を見ると、古賀捕手のファンであることが分かりました。旅先でお会いできて嬉しかったです、この想い届いていただろうか。

気が付くと、5回裏が終了し、花火の時間がやってきました。雨もほとんど降らず、夜空に広がる花に職人さん達の心を感じて。人の気持ち、大事にしたいね。その後も、打線は繋がり、ライトスタンドは大盛り上がりで、12対0という快勝でゲームセット。ヒーローインタビューを聞き、勝利をみんなと分かち合った後、目の前のご夫婦が帰ることが分かりました。すると、点数が入る度にハイタッチをした彼らが今度はこちらを向いて、グータッチをしてくれて。「お疲れさまでした!」その言葉を聞き、胸が熱くなりました。一緒に応援できて楽しかったよ!そんなニュアンスが感じられて。息子も同じようにグータッチ。こんな交流が堪らない。そして、前回は12回の延長の末、サヨナラ勝ちだったので終電が迫り、参加できなかった二次会を本気で楽しむことに。選手達の応援歌メドレーを、残っているみんなと歌いました。「いいぞ!いいぞ!応援団!」一番最後に声をそろえて届けるこの時間が、本当に優しくて。すると、隣にいたかわいいお姉さんもまだ残っていることが分かったので、声をかけると嬉しそうに答えてくれてわいわい。息子にもハイタッチをしてくれてありがとう、心の中で届けました。「ナイスゲームでしたね!お疲れさまでした!」と伝え、親子でバイバイ。さあ片付けるかと、二人でガサゴソやっていると、通りすがりに声がしたので顔を上げました。すると、ビジネスカジュアルの30代男性二人が、とっても爽やかな笑顔で伝えてくれて。「お疲れさまでした!!」全然面識がなかったのだけど、お姉さんとの会話が聞こえていたのか、最後の最後まで二次会を楽しんでいた私達を近くで見てくれていたのか、親近感のある声色で言ってくれたので驚きました。きっとお仕事帰りだよね、雰囲気で分かったのでその日一番の元気を届けることに。「お疲れさまでした!!!」と手を振りながら応えると、ビッグスマイルを向けてくれました。ねえR、小学生の時、引っ込み思案のあなたをライトスタンドに連れてきたら、ちょっと圧倒されるかなと最初は思っていたの。でも、逆だったね。嬉しい驚きと感動を知ってくれた。私達ね、シングル家庭だよ。いろんな葛藤がある。それでも、ライトスタンドに来ると、みんなが同じ方向を向いていて、推しチームを全力で応援する、その中に私達もいて仲間だと思ってくれている。それって幸せなことじゃない?この気持ち、忘れないでいようよ。まだまだ感激の中にいる彼に、そっと糸電話で伝えました。留守番電話に入っているかもしれない、でもいつかきっとこのメッセージは届く。
半日外にいて、へとへとになって自宅の最寄り駅に着くと、ヤクルトのユニを着たご夫婦が、うちと同じ方向へ帰っていくのが見えてほっこりしました。「近くにいてくれたんだね!」と最後の歓喜が待っていて。頑張った先にあるもの、今日のような一日をそっと握りしめ、また歩き出す。くじけそうな時も、取り出したら笑えそうな気がする。