憧れの神宮球場へ

母から、息子が好きなヤクルト対DeNA戦のチケットをもらい、応援グッズを沢山リュックに詰め込んで、電車に乗りました。「ママと一緒に野球観るの、初めてだね!」そう言ってワクワクが抑えられないよう。私も、関東に来て初めての観戦が神宮球場になるとは思わず、喜びがふつふつと沸き上がってきました。せっかくなので社会見学も兼ねて、息子に国立競技場も見せようと思い、千駄ヶ谷駅で降車。プログラマーのMさんがそこで待っていてくれたので、道案内をお願いし、気持ちよく晴れた日、オリンピックが行われていた場所だよ~と説明しながら現地に向かいました。まだ開場までの時間があったので、近くのベローチェで寛ぎ、つば九郎のマスコット5匹をテーブルに並べると、隣に座っていた若い女性の方達が微笑みながら何度もこちらを見てくれるので、ヤクルトファンだとすぐに分かり、何とも言えない優しい時間が流れました。よく見ると、前のテーブルも、斜め前の席もヤクルトファン!帽子やユニフォームですぐに分かるそんな店内に、ホーム球場の良さを感じずにはいられませんでした。その後、ヤクルトショップにも立ち寄り、レアキャラのトルクーヤをゲット。ゲートまでMさんに見送ってもらい、バイバイ。さあ、いよいよ一塁側スタンドへ。

荷物検査をして、チケットを見せ、階段を登ると目の前に広がった綺麗なグラウンドを見て、泣きそうになりました。野球観戦は何年振り?高校の男友達がナゴヤドームに誘ってくれたのが最後だから、20年近く来ていなかったのね。そんな感慨にふけっていると、「ママ、つば九郎がいた!」と満面の笑みで教えてくれて、生つば九郎に感激。席に座ると、つばみちゃんも出てきて、あまりの可愛さに癒されてしまいました。息子は、前倒しの子供の日のプレゼントに贈った自前のカメラで嬉しそうに撮り出して。最前列まで行き、喜んで撮っている後姿を見て、来て良かったなと思いました。今日という日を忘れることはないだろう。それから、せわしなく戻ってきてひと言。「ボク、全部見逃したくないんだよ。だから、ママ適当にごはん買ってきてね。」「はいはい。遅くなっても席から離れたらだめだよ。」そう伝え、練習風景から釘付けになっている9歳児に笑いを堪えながら買い出しに向かいました。行列に並び、カレーとポテトとドリンクをゲットし、慌てて戻ると真剣に練習を見ていて。そして、席もどんどん埋まり、周りは人だらけという状態の中で、急いで食べる様子を見て全ての瞬間を逃したくないのだと思いました。沢山吸い込んで帰るんだよ。目に映るもの、聞こえる音、球場の匂い、あらゆるものが体に染みついていくでしょう。その感動をそっと取り出す日がきっと来るから。
そんなことを思っていたら、プレーボール!一塁側から見るサイスニード投手の球がとても速く、プロ野球の迫力を改めて感じました。そして、あっさりヤクルトの攻撃へ。すると、二番打者で青木選手の背番号『23』が見え、登場曲はGLAYの『SOUL LOVE』で感極まりそうになりました。大学在学中、私を励まし続けてくれたその曲が、まさか息子と初めて来た神宮球場で、しかも大好きな青木選手の登場と共に流れてくるなんて。ホームベース近くで何度も素振りをする青木選手の姿を見ながら、色んな気持ちが一気に押し寄せてきました。まだ肌寒い春のナイター、それは父が連れて行ってくれた小学生の頃のナゴヤ球場を蘇らせてくれて。日が暮れると急に寒くなり、それでも熱気で寒さを忘れる程、球場の雰囲気は盛り上がっていました。大きなメガホンを持ち、紙吹雪を用意し、ライト側スタンドでファンのみんなで歌った『燃えよドラゴンズ』を思い出して、感無量でした。

その後、二打席目の青木選手が、タイムリーヒットを打ってくれて先制。なんとその日は、日米通算1500試合出場というメモリアルゲームで、球場の皆さんと拍手を送りました。盗塁を狙いに行った時は、アウトの判定。それに異議を唱え、VTRで確認の時間に何度もバックスクリーンに映像は流れ、息子とあれはセーフだと言っていると、本当に判定は覆り大歓声。彼が大好きな村上選手が敬遠されると、質問が待っていました。「ママ、けいえんって何?」と。少年野球に敬遠はあまりないよねと思いながら、説明をすると納得してくれて。父からもこうやってルールを教わることもあったな。隣の息子が、自分と重なっていく。その後も6回に追加点が入り、ヤクルトファンのみんなと傘を広げ、東京音頭で盛り上がりました。立浪監督(中日)ごめんねと小さく思いながら。でも、プロ野球ファンであり、野球ファンだから許してもらうことにして。それからまた、唐揚げを買いに並んでいると、モニターが近くにあり、つば九郎のくるりんぱがやっていました。今回も失敗し、アナウンサーが「一度も成功したことがないようです。」と伝えると、解説者の人らしき方が、「可能性はゼロじゃないです。」とフォローしていて笑ってしまいました。つば九郎はみんなのアイドルなんだな。そして、席に戻りいよいよ最終回。リリーフはマクガフ投手。東京オリンピック、アメリカ代表で出ていて、日本に負けた後、ヤクルトの山田選手達と写真に写る姿は清々しかった。色んなシーンが駆け巡り、2対0でゲームセット。歓喜に包まれたヤクルトファンのみんなと勝利の喜びを分かち合った後、ヒーローインタビューが待っていました。好投のサイスニード投手、二点目のタイムリーを打った内山壮真選手の後、青木選手が立ち、バックスクリーンに映し出されると、後ろに座っていた男性がひと言。「この画(え)が見たかった。」と。ヤクルトファンにとって青木選手の活躍は特別なのだと思いました。「盗塁はセーフだという自信がありました!」という言葉に笑いが起きて、選手とファンの距離が近いこの球団のあたたかさを感じました。最後はみんなで一本締め。本当にナイスゲーム、いい一日をありがとう。

まだ興奮冷めやらない息子は、球場外にあるつば九郎とつばみちゃんのモニュメントを見つけてしまい、長い列を並んで待ち、後ろに並んでいたお姉さん達にツーショット写真を撮ってもらいました。お礼に写真を撮ると、なんと彼女達はベイスターズファンだと分かり、びっくり。試合が終われば敵じゃなくて、みんな野球ファンなんだよね。さてさて、電車に揺られながら息子にカメラで写真は撮れたか聞いてみると面白い返事が。「ボクね、よく考えてみたら、つば九郎しか撮っていなかった!」選手はどこ行ったんじゃ!!とツッコミたい気持ちを抑え、二人で大爆笑。「つば九郎が撮れていたら十分。グッジョブだよ~。」そう言って余韻に浸りながら帰った自宅。目を閉じると、応援したバチの音、東京音頭、カキーンとバットに当たったボールの音が聞こえてくる。そして、背番号『22』高津監督のユニフォームを着ていた男性ファンの方。高津監督の現役時代が頭を掠めた。ナゴヤドームで一日だけバイトをしたのはヤクルト戦。長い時を経て、ファンの一員になるなんて。私にとってまた一つ特別な球団ができた日。メジャーリーグでいくつもの球団を渡り歩き、ヤクルトに帰ってきた青木選手の魅力は届けられただろうか。