ぼんやりとネットサーフをしていると、飛び込んできたのは、ヤクルトで活躍してくれたマクガフ投手がダイヤモンドバックスと２年契約をしたという嬉しいニュースでした。彼の夢を一ファンとしてずっと応援したいと思っていて、だからこそ、手にしてくれた挑戦に胸がいっぱいでした。アリゾナ州はグランドキャニオンがあり、別名「神の恩恵がある場所」と呼ばれているんだそう。そんな『聖地』で、マクガフ投手がマウンドに上がる姿を日本から祈ろうと思っています。彼の野球人生アメリカ編が、笑顔で溢れますように。
そんなアメリカの地を少し調べていたら、ある出来事を思い出しました。それは、アメリカ育ちの元彼に誘われて行った飛行機の旅。日本人である伯母さんが、アメリカの方と結婚し、ハーフである従姉がアメリカ人男性と結婚式を挙げるから、フィアンセとして一緒に行ってほしいというものでした。なんだか、全然頭はついていかないし、随分場違いの所に自分は行くのではないかと躊躇っていると、伝えてくれて。「結婚式はカリブ海の島なんだけど、その前にせっかくだからロサンゼルスにいる友達の家に遊びに行こうと思っているんだ。この間日本で会った彼らだよ。」ああ！と思い出し、ようやくほっとできる内容を伝えてくれてこっそり安堵しました。彼の大学時代の友達である白人女性は、黒人男性と結婚し、日本が大好きで新婚旅行も兼ねて遊びに来ていました。とても感じのいいカップルだから一緒にディナーでもどうかと誘われ、同席させてもらうことに。すると、とってもウェルカムな雰囲気で迎えてくれて、下手くそな英語もせかすことなくゆっくり聞いてもらい、柔らかい時間が流れました。その時、彼の通訳も交えて伝えてくれて。箱根のバスの中で彼女が吐いてしまうと、車内にいた日本人のみんなが優しくしてくれて、言葉は通じないのにその温かさが伝わり嬉しかったと。その話をとても嬉しそうにしてくれるので、彼らの温もりがダイレクトに届きぐっときました。人柄は、言葉の壁を越えるんだな。肌の色が違うこと、宗教の違い、いろんな違いに家族は結婚に反対。それでも、振り切って入籍したこと、だから二人で日本に来られてとても幸せだと、ありのままを話してくれるので泣きそうになりました。その後も、みなとみらいのホテルまで送り、バイバイ。そんな彼らにまた再会できると思うと、胸が高鳴りました。フライトまであと少し。
そして、彼と成田空港まで行き、L.A.行きの搭乗口へ。長距離フライトをなんとか終え、ロサンゼルス空港に降り立ち、彼が電話を入れて迎えに来てもらうようにお願いすると、男性の友達が１日日にちを間違えてゴルフをやっていることが判明。その事実に笑いながらのんびり待っていると、Tシャツにハーフパンツを履いて、さっきまでコースを回っていたぜ！という雰囲気で登場してくれるので笑ってしまい感激の対面。それから、自宅に招き入れてもらい、彼女ともハグをして再会を喜んでくれて胸がいっぱいでした。その後、映画の『プリティ・ウーマン』が大好きな私の為に、大型のショッピングモールに連れて行ってくれて、女性陣の買い物に付き合う男性二人。紙袋がどんどん増える度に主演のジュリア・ロバーツに近づけた気がして、異国の地で過去の自分から少し脱皮できたようでした。それからも、映画のロケ地や、ハリウッド、西海岸の遊園地などを案内してくれたお礼に、現地の日本スーパーで買った野菜を乗せた味噌ラーメンを作ると、二人が感激。あっという間に楽しい時間は終わり、別れの夜がやってきました。空港まで二人が送ってくれると、車を降りた瞬間、寂しさのあまりに泣いてしまい、それを見た彼女がすぐに助手席から降り、私の涙を拭いてハグ。すると、一時停車の場所に車を停めていたので、後続の車からクラクションを鳴らされてしまう始末。それに気づいた彼女が、「Relax!!」とドライバーにブチ切れていて、笑ってしまいました。それでも、ドライバーが窓を開けて何やら言ってきたので、彼女も応戦。「日本人の彼女が別れ際に泣いてくれているのよ。見て分からないの？」と英語でまくし立ててくれて、最後まで心を寄せてくれた彼女の優しさに泣き笑いした、感動の別れでした。
それから、東海岸までの長距離フライトがまた待っていて、カリブ海まで何度も乗り継ぎ、飛行機酔いが酷くてぐったり。ようやく現地に着いたものの、夜には前夜祭が行われ、翌日には海岸で結婚式、船上パーティや夜にもまた屋外でディナーがあり、疲れと下手な英語でどんどん気持ちは沈んでいました。その時、彼のアメリカ人の伯父に学歴などを色々と聞かれ、なおさら凹んでしまって。高学歴で、地位も名誉もある彼の親戚一同。いつもより、隣にいる恋人が遠く感じられ、私はきっとこのご家庭にふさわしくない人間なんだと、小さな染みができてしまった辛い時間でした。そして、また西海岸に向かう飛行機へ。時差ぼけや気疲れなどが重なり、機内で彼に冷静に切れてしまいました。「もし私が大学を出ていなかったら、あなたの親戚はフィアンセだと認めなかったの？一流じゃなきゃ、人として認識してもらえないの？大学教授がそんなに偉いの？」「伯父達がSを傷つけたこと、ごめん。俺もあんな質問をするとは思わなかったよ。」そう言われ、もう何も話したくなくてそのままロサンゼルス空港へ。その地にまた降り立った時、泊めてくれた彼らの優しさが蘇り、余計に泣けてきました。二人は、心の奥深くで会話をしてくれた。社会的立場なんて全く関係なく、目の前にいるあなたが好きだと。それが、本当の愛であり優しさだよね、私もそうでありたいと彼らを思い出し、ひとしきり泣いたロサンゼルスの夜。
息子と住む自宅のクローゼットを開けると、L.A.のショッピングモールで買い、従姉の結婚式に着ていったサマードレスがまだ入っていて。あの時の悔しさ、忘れるものか。そして、彼女が私の為にお店でめちゃくちゃ値切ってくれたルイヴィトンのバッグもそのまま。これは、彼女の気持ちをいつまでも覚えておくため。もうひとつは、左頬。海岸沿いを案内してくれた黒人の男友達が、TシャツのV字にくっきり焼けた私の首元に大笑いし、左の頬にチュとしてきました。I like you. びっくりしたけど、なんてあたたかい人なんだろうと。そんな彼らが大好きだと言った箱根にまたいつか行ってこようと思います。なんのしがらみもない日本で愛を誓いたいと思った、そんな二人の聖地へ。沢山の祈りを残していってくれているに違いない。