別の視点

今年度も家庭訪問はなく、その代わりに個人面談へ行ってきました。ショートカットの似合う女の先生とご挨拶。学校が通常通りに行われ、行事も中止になることなく開かれる日常に、前よりも感謝の気持ちがこみ上げてきました。目の前にある当たり前が、小さな明かりにも感じられる今日この頃。そんな感慨にふけっていると、斜め前に座ってくれた先生が、温かい言葉をかけてくれました。「R君、いつも頑張っていますよ。算数の文章問題が苦手なようなのですが、少し説明すると理解してくれるので、上がってくる点数よりも、本当はもう少しできているのだと思っています。」なんだか本当に有難いなと思いました。数字で表される結果だけでなく、経過も見てくれているんだなと。理解力が追い付いていないだけに、珍解答も続出。最初のとっかかりさえ掴めればスムーズにいくはずが、違う解釈をしていきなりこけるんだな。それを、担任の先生が分かってくれている、本人にとってそれはきっと大きな力に変わるのだと、そんなふわっとしたキャッチボールをさせてもらった嬉しい面談でした。「とっても穏やかな子です。」これが息子の代名詞、そんな彼の長所を大切にしていってほしいと願わずにはいられませんでした。親の価値観を押し付けることなく、自分で選び、何を守りたくて、どうしていきたいのか、沢山悩み、躓き、失敗から得られたものを心の財産にしていってくれたらいいなと。芯を見失いそうな時も、それを精一杯届けてくれる人がいたらそれでいいじゃない。人を大切にしていたらきっと返ってくるよ。

それでは、自分の代名詞は何なのだろうと、あれこれ考えてみる。今まで言われた誉め言葉の中で一番嬉しかったのは、ホストママが言ってくれた“You are so sweet.”だったのかなと。姉が辛口なら私は甘口なのか?!そういえば息子はバーモントカレーの中辛を食べられるようになったなと、これまたどうでもいいことがぐるぐる回ってしまいました。ホストママが伝えてくれたニュアンスは、“思いやりのある”という意味を含んでくれていたような気がして、今でも大切にしている単語です。可愛らしい美容師さんが、カラーリングをする時にお勧めの色を教えてくれて、自分で選んだのはミルキーでした。もうね、心も体も全体で甘さを目指すしかない。

そんなオーストラリアで行われた授業の議題に、笑ってしまったことがありました。元々、その学校の初日に、クラス決めをするお偉い女の先生と一対一の面接が。どれぐらい英語の能力があるのか確認し、その生徒に合ったクラスに割り振っていくというものでした。「How do you think about Australia?」オーストラリアについてどう思うって、随分スケールの大きな話だなと思いつつ、とりあえずその場を取り繕うことにして。「Very big.」ダメだ、あほがバレる。「Australians are so kind to me anytime, so I’m happy in here.(オージーはいつも私に優しいから、ここにいるとハッピーです)」正直な気持ちを伝えると、ふっと笑ってくれて和やかな面接で終わり、一件落着。その後、クラス分けされた中で、同じようなレベルの生徒さんがさらに集まったグループディスカッションのような授業があり、その担当の先生が妊娠中だということが分かりました。「私達の新しい仲間、日本から来たSよ、みんなよろしくね~。」というハイテンション。そして、まさかのお題。「今日は“愛”について語ろう!」は?と私の目が点になっていると、台湾出身の男の学生さんがそっと耳打ちしてくれました。「先生ね、妊婦さんだから、とにかく愛に満ちた話題に触れたいの。赤ちゃんに届くからじゃない?」となんとなく状況が分かったので、ここは乗っておくことに。人差し指を立て、親指も出し、左手で『L』の字を先生が作り、「Love!」、え?なにこれ?!と思いながらも楽しくなってしまい、先生の真似をすると、突っ込まれてしまいました。「S、声が小さい。あなたがシャイなのはわかるけど、大きな声を出した方が恥ずかしくないわよ!」というまさかのアドバイス。「LOVE!!」開き直ってみんなの前で言うと、大笑い。これですっかり仲間の一員。その後も、どんな時に愛を感じるかという話で盛り上がり、楽しい時間が流れました。今、この質問をされたら私はなんて答えるだろう。空の雲が綺麗だった時、下を向いていた人が顔を上げて笑ってくれた時、そして、誰かの優しさが自分の心に沁み込んでいった時。

プルルプルル。「お姉ちゃ~ん、今日の授業のテーマ何だったと思う?愛について語ろうなんだよ。本当にどうしようかと思ったよ。」そう話すと、一緒に笑ってくれました。「Sさあ、国民性があんたに合っていると思うよ。日本にいるとちゃんとしなきゃっていう気持ちがいつも先行してるじゃない。でも、そこにいると、まあいいかって思えること沢山あると思うんだよ。とにかく、あほになって帰ってきなさい。ジャンクフードいっぱい食べて、肌が荒れて、太って帰ってきてくれた方が安心するわ。SがSらしくいること、それが何よりだと思っているよ。」少し遠くに聞こえた国際電話。それでも姉の心はそばにいてくれた。オーストラリアにいる、羽を伸ばした妹の姿を誰よりも喜んでくれた人。お金とパスポートさえあればなんとかなる、彼女の名言を思い出すと元気になるのが不思議。