日常が戻ってきた

雨が降った日、初めて徒歩で息子を学校まで送り届けることになりました。教材費などの銀行引き落としを、夫から私の口座へ変更した隙間で、集金袋を息子から渡され、それを直接先生に届けることになったため、いつもより少し早く出ました。どんよりとした空を見上げながら、毎日こうして送っていると季節の変化を楽しめるんだろうなと嬉しくなって。そして、校門をくぐって息子にバイバイ。職員玄関で傘を閉じ、中へ入ろうとすると後ろから挨拶をしてくれたのは、担任の先生で驚きました。先生タイムリー!と心の中で喜び、「集金を持ってきました!」と再会に感激しながら伝えると、笑いながらお礼と共に受け取ってくれました。お母さん元気そうで良かった、そんな気持ちが流れ込み、優しさを感じながらにっこり笑顔でお別れ。その後、自転車ではなかったのでちょっと疲れてしまい、コメダに吸い込まれていきました。ボーっとしながらモーニングを食べ、新生活も慣れてきたななんて思いながらレジに行くと、「久しぶりっ!!」と満面の笑みで声をかけてくれたのは、コメダで働いている友達で、急に現実世界に引き戻されたかのようなテンションに笑ってしまって。「もうね、学級閉鎖になってどうなるかと思ったけど、オンライン授業がちゃんと成り立って、みんなが先生~って喜んでいて嬉しくなっちゃった!」と話してくれて、感激してしまいました。隣のクラスだけ学級閉鎖、子供も親も大変だろうなと思っていたら、こんな微笑ましい情報をコメダで聞けるなんてね。無事に登校できるようになり、出勤した友達からもらった元気にこちらの方が励まされた朝の時間。こうやってみんなで乗り越えてきたんだよね。休校3か月間がなんだか懐かしくなる。

引っ越した後、シェアオフィスに行くと時々かかっていたアコスティックギターのBGM。なんだろうな、この曲を聴くと優しい気持ちになる、どこかで聴いたことがあるような。心の奥底でじわっと熱くなるそんな曲に歩いてきた道のりを感じました。そして、またかかっていたので、このチャンスを逃してはいけないと思い、受付にいたラガーマンTさんに聞くと流している画像を見せてくれたので、スマホでカシャリ。そして自席で検索をかけると、絢香さんの『にじいろ』(作詞作曲:絢香)であることが分かりました。動画を見て歌詞を読むと、今の自分に深く染み込み泣きそうに。心から笑うこと、それを願ってくれた人達の顔が次々に浮かび、堪らない気持ちになりました。そんな溢れる想いを胸に、息子を自転車でお迎えに行くと、仲のいい男の子二人と帰ってきていて、遊ぶ約束をしたよう。一旦自宅に帰ってから、公園で待ち合わせをすることになり、喜んで遊びに出かけました。すると、同じ野球チームで『そうごう害虫部』の名刺をくれた友達からみかんを沢山もらって帰宅。「あらあら。お礼を伝えておいてね。」「うん。S君ね、善逸のじいちゃんが好きなんだって。」彼と一度語り合いたい!「いいよね~じいちゃん。分かるわ~。」とまた鬼滅の刃で大盛り上がり。もう一人の友達も元野球チームで、今はドッチボールチームに入ったそう。野球で繋がった男の友情、学校の外でも太くなってくれたようで、こちらが心配するよりも息子はもっと逞しいのかもしれないなと思えた安堵のひとときでした。さてさて、みかんのお礼はどうしようか。野球チップスなんてどう?

善逸と言えば、私が好きなことを知っている広報委員の友達が、クリスマスプレゼントにクリアファイルと缶バッチをくれました。そして、姉が引っ越し祝いに、黄色に三角のマークの生地で作られたランチョンマットを送ってくれて。善逸グッズがどんどん増えて、こっそり喜ぶ42歳、もうすぐ独身。彼の中にある強さと弱さがとても好き。今回、一気に色んなことがあり、自分にはものすごく強い部分と、ものすごく弱い部分があることを知りました。危うさとでも言うのかな、120%の状態で走ったらそりゃすり減るよね。そのタイヤが脆かったら、周りはみんな心配する訳で。それでも止まる訳にはいかなかった、だからアクセルを目一杯踏み込みました。そんな時に出会った引っ越し業者さん。奥様も子供達も気づかない間に出て行った彼は、彼にしか分からない苦悩をくぐり抜け、私の話を聞いて伝えてくれました。「あなたが二人目を望まなかったのは、旦那さんのこともあったからじゃないですか?」と。体の弱さもあった、息子を難産で産んだこともあった、でもそれだけではなく、悪阻で苦しんだ時にそばにいてくれなかったことが私の中であまりにも大きなひびになってしまったこと、それを話さなくても初対面の彼は感じ取ってくれたことに驚きました。「息子の為に、中学3年生までは頑張ろうとも思っていたんです。ひとりっ子だし、辛い思いはさせたくなくて。」「さすがはお母さん。でもね、逆の発想だと思うんです。中3まで頑張ったら、Sさんもそれだけ年を重ねることになる。その時に、体力とか気力とか今よりもないんじゃないかなって。お子さんはお母さんに笑っていてほしいと思うんです。このまま頑張っていたら、あなたは潰れていたかもしれません。だから、今のSさんの判断は正解だって思っていますよ。」その結論を出すのに、どれだけ悩んだか分かりますよ。初対面の僕でも分かるんだから、もっと近い人はもっと沢山感じていると思います。だから、みんながあなたのこれからを後押ししてくれますよ。もう苦しまなくていいから。そんな気持ちを感じ、自分の弱さも好きになれそうな気がしました。まるっと包むってきっとこういうことなのだと。

年明けに両親と富士山の近くまで行った旅先で、息子が一目ぼれしたマメ柴のマメ太。くみちゃんとくりちゃんとマメ太の三匹が交代で車掌さんになり、寝かしつける時は電車ごっこで息子の部屋へ。こんな日々がずっと続きますように。前のマンションの寝室で息子に聞きました。「お母さんのこと信じられる?」その言葉が何を意味するのか分かっていた息子は、分からないと小さく呟きました。「・・・そうか。」「ママのこと、信じる。」固く繋いだ手を取り、一緒に飛んだ。どんな時も、息子が信じてくれたお母さんでいる。