タイミングを信じて

調子がなかなか上がらないこともあり、映画の『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』をなかなか観に行けないまま上映が終わってしまいました。すると、プライム・ビデオで観られることが分かり、気持ちが沈んでいた日、パソコンを開けずに自宅で観ることに。内容は伏せますが、何か熱いものがもう一度自分の中に流れ出ました。3月下旬に、たっちゃん(ラーズ・ヌートバー選手)のピンバッチと、村上選手(ヤクルト)のキーホルダーを購入。8月に到着予定だと分かり、それでもこの熱は冷めることはないだろうと思い、楽しみに待っていると、6月下旬に届きびっくり。そして息子に渡すと大喜びして、これどうしたの?と聞いてくれました。「WBCが終わってから、Rと熱狂したこの大会を形に残しておきたくてネットで注文したの。村上選手のキーホルダーはプレゼント。たっちゃんのピンバッチはママ用。また侍JAPANのユニフォームを着てくれたらいいね!」そう伝えると、3年後の大会を楽しみに、高揚しながらヤクルトキッズ会員特典のリュックに付けご満悦の様子でした。私は、スタバのサコッシュにたっちゃんのピンバッチを装着。二つのルーツを持つ、彼の情熱と苦悩を忘れないために。

そんな侍JAPANの中に、私の旧姓と同じ名字の選手が活躍してくれて、胸がいっぱいでした。今回籍を抜くにあたり、息子の姓をどうしようかとことん悩みました。お世話になった弁護士の先生にも、何度も相談させてもらっていて。「全く気にしない子もいれば、とても気になってしまう子もいる、どこか変えやすいタイミングの時に一気に変えてしまうのもひとつです。その時また裁判所の許可が必要ですが、きちんとした理由があれば通りやすいです。」と教えてくれました。どんな時もあなたを守るから、そう約束して別居に踏み切った日。それは、どんな時でもどんな場面でも守り抜くということ。息子が今は変えたくないという気持ちを大事にし、そのタイミングを待とうと決めました。ただひとつ気になったのは、時間が経てば経つ程、息子の変えたくないという気持ちは強くなるのではないか、その時はおじいちゃんごめんねとずっと思っていて。そういった時期に侍JAPANのメンバーで旧姓が同じ選手を、息子が愛着を持って応援していて、なんだか救われたようでした。
わが家の大きなキーマンだった祖父。姉や私が女の子だから、家を継いでもらうのは諦めようと母と二人で話したこともあったんだそう。せめて、実家の近くに住んでくれたらと祖父がどこかで望んでいることを知っていました。その気持ちに応えることなく、関東へ。あまりにも大きな決断でした。本当にこれで良かったのだろうか、自問自答した日々。その後、お腹に男の子を授かり、祖父のことを思いました。悪阻と戦いながら、名前を考え、そこに沢山の意味を込めることに。名字とのバランスや画数を思った時、父もまた養子に入ってくれたのは大きなことだったんだなと改めて感じました。そして、色々調べる中で、私と息子のファーストネームの画数が全く同じであることに気づき、笑ってしまって。悪阻が酷すぎて、そんなことまで考えていなかった気もするし、それが何年も経ってこの時期に気づくなんてね。ということは、名字が変わっても変わらなくても二人の運気は似ているのかもしれないと思ったら、少し楽になったようでした。そして、父の画数も調べてみると、旧姓よりも養子に入ってくれた後の方が格段に良くなっていることが分かりました。ネット情報だから何とも言えない、ただネネちゃんに話すと深く納得し、伝えてくれて。「お父さんってなんだかんだ言って強運の持ち主なんだよ。銀行時代も大変だったと思うけど、結局生き残れていたよね。養子に入るのは勇気がいったと思うけど、お父さんにとって結果的に良かったんだと思うよ。」ネネちゃんのこういう視点は、妙に説得力がある。お父さんも、おじいちゃんやご先祖様に守られていたんだね。

去年の秋、ドラフト会議を見ていたら、ひとつの家族の物語がそこにはありました。シングルマザーのお母さんが、独立リーグで選手として活躍している息子さんの名前が呼ばれることをそっと待っていた時間。確率は限りなく低いかもしれない、それでも、こんな夢を見せてくれてそれだけで本当にもう十分ですというお母さんの気持ちが画面を通して届き、胸がいっぱいになりました。そして、育成選手として本当に名前が表示され、息子さんのプロ入りが決まった時、大泣きするお母さんの姿を見て、一緒に泣けてきました。分かりますよ、その気持ち、私もそんな母親になれるように頑張ります。そう誓い、息子さんがそっと泣いているお母さんの肩を抱くそのシーンを忘れないでいようと思いました。私の旧姓は、今はミドルネームのように心の中にしまっておこうと思っていて。法的にはそうではないのだけど、そんな想いでいるよと祖父に届くといいなと願っています。
息子は10歳、成人するまで折り返し地点、母親としてまだまだだけど、助走をつけ始めたら、振り向くことなく思いっきりジャンプしてほしい、夢が見つかったなら本気で掴みに行ってほしいと思っています。その時には、私の中にある数々のトラウマも薄れているといいな。10年後に向けて、もう助走は始まっているのかもしれない。あなたそのものが大きな愛になれ。