変わることと変わらないこと

少し前に、久しぶりの旗振り当番。前回は退院後2週間ぐらいで回ってきたので、散々迷って、現地で倒れたら洒落にならないと思い、地区長さんに事情を話し代わりにやって頂きました。そんな時期を越えての当番だったので、なんだか通常の体に戻れたことが嬉しくて。副作用が悪化しているという訳の分からない状態も、吹っ飛んでいくといいな。

朝から慌ただしく準備をし、息子と一緒に家を出発。相変わらずランドセルを背負いながら走ってくれて、気持ちのいい時間が流れました。交差点でバイバイすると、やっぱり何度も振り返ってくれて。もう3年生だよ、そんなことを思いながらも、その瞬間を切り取りたいと願っている自分がいました。そして、初めて組むお母さんとご挨拶をし、旗振りを開始すると、Kちゃん!実は、3人のお子さんを持つお母さん。息子と同級生の娘ちゃんの下には2歳違いの妹ちゃんがいて、さらに弟君もいて、みんな彼女に似ているというかわいらしいご家族。その妹ちゃんが1年生になったので、途中まで送りに来たのだそう。久しぶりの再会が交差点だとは思わなくて、日常の中に友達との自然な繋がりがあるのだと思うと、感激してしまいました。「Sさん、体大丈夫?」「うん、ありがとう。」周りのことも気にしながら、さりげなく届けてくれる優しさは何も変わらないまま。このひと言で、どれだけ励まされ、これからも助けられていくのだろうと思うと、変わらない友情がどうしてこんなに自分に優しさを向けることを教えてくれるのだろうと思うと、朝からこみ上げるものがありました。「またゆっくり会おうね!」そう言って笑ってお別れ。

そして、市の職員の方がパトロールの車に乗りながら助手席の方がわざわざ窓を開け、「お疲れ様です~。」と深々と頭を下げてくださり、嬉しくなってこちらも同じ温度で返しました。送り届けに来た1年生のお母さんにも話しかけられ、「いつまで送ればいいのか判断に迷ってしまって。」と相談され、「うちは最初の1週間だったんですけど、いつでもいいと思いますよ~。」なんて言って軽く談笑。さらに、前回にもお会いしたスーツを着てバッグを斜めがけにしたお父さんらしき方も、自転車に乗りながら気持ちのいい挨拶をしてくれました。息子の野球チームで一緒のお兄ちゃんは、誰よりも大きな声で挨拶してくれていて、そこには皆に囲まれ大きな輪ができていたのに、もう中学生になり、ちょっとだけ寂しい気持ちに。30分程の旗振りに、これだけのことがあったら、そりゃ学校では色んなことの連続だよね。沢山のことを吸収して、喜びも痛みも何もかも糧にしていってくれたらいいなと思いました。今日も空が綺麗だな。

大学2年、父が実家を出た後、母と祖父の様子がおかしくなり、平静を装っていた私はキャンパス内でノックダウン。昼休みに猛烈な気分の悪さに襲われ、好きだった地理の講義を休むと友達に伝え、学内にある保健センターへ転がり込みました。顔色の良くない私の姿を見た看護士さんはすぐにベッドに寝かせてくれて、そこで点滴をしてもらいました。少し落ち着いた頃に最近の様子を聞かれたので、「多分疲れが出たのだと思います。」とやんわり伝えると、何かを察知した看護士さんはさらに突っ込んで聞いてくれました。「もしよかったらなんだけど、月に一度だけ心療内科の先生が来てくださっているの。そこでカウンセリングを受けてみない?倒れてしまってはいけないから。」親身になって心配をしてくださる看護士さんの気持ちに沁みながらも、そんなに追い込まれているのかなと、そこまでの自覚がなかっただけにやや混乱してしまいました。それでも、こういった気持ちを無駄にしたらいけないような気がして、一度だけ予約を入れてみることに。そして、約束の時間に行くと、とっても穏和な男の50代の先生が待っていてくれました。自分が置かれている状況を話すと、優しく頷きながら時々メモを取り、聞いてくれた先生。「今の環境を考えると難しいのは分かっていて伝えるのだけどね、あなたが一度物理的にお母さんから離れないと、あなたが参ってしまうような気がしたよ。それが困難なことも分かるから、せめて意識だけでもしてみて。なかなか人には話せないこともあると思う。一人で頑張らざるを得なかったこと、きっと沢山あると思うんだ。あなたがここに来て話をしたいと思ったタイミングで待っているよ。」そう言って、微笑んでくれました。肩の荷が少しだけ降りた時。人に話すことが、こんなにも心を軽くしてくれるのだと実感した時。本当に、自分のペースで、大学卒業まで片手で数えられるだけの頻度で先生に会いに行きました。そして、最後の時間。「これまで本当にありがとうございました。」「段々とここに来てくれる期間が空いていったから、頑張っているんだなと思っていたよ。よく笑うようになっていったから安心もしていたよ。卒業おめでとう。」なんて優しいやりとり。こんな形で、そっと自分の生き方を応援してくれる人もいるんだ。

そして、漢方内科で出会った主治医。その先生にどこかで雰囲気が似ていて驚きました。届け続けてくれる想いは、共通しているような気もして。“環境に左右されることなく、どんな自分も好きであれ”こんな気持ちをもらっていたらね、誰かに同じ温度で伝えたくなる。外野は気にしないで、あなたらしくいてほしい。