花よ咲け

息子を迎えに行った帰り道、ランドセルを私の自転車の荷台に乗せ、身軽になったので、先に少し走っていってしまいました。すると、木の陰に隠れ、私が来たと思い、「わーっ。」と驚かせると、やってきたのは高校生の男子君達でみんなが「わーっ、びっくりした~。」と笑いながら驚いてくれるので、その光景を見て笑いを堪えながら謝りました。「すみません、驚かせちゃって。」「いや、いいっすよ。」とみんなも笑いながら去って行ってくれて一件落着。「みんなに迷惑かけちゃだめでしょ。お兄さん達びっくりしていたよ。」と息子に注意する声まできっと聞こえていたんだろうな。子育て頑張ってね、彼らの背中がそう伝えてくれているようで、ほっこりした夕方。こうして今日も人の優しさに助けられていく。

どんどん気持ちが沈んでいくここ最近。ホルモン治療の影響が強く出ているなと自覚しながら、なんとか自分の気持ちを上げようと思っていたらシェアオフィスの若い受付の方との会話を思い出しました。美術系の学校に通っていた彼女は、私のパーソナルカラーを見てくれて、随分興味深い回答が。「○○さんは、春です。真っ白というよりかは少し黄みがかったアイボリーなどがお似合いだと思います。春と言っても、冬から春にかけてではなく、夏に近い春です。」ということは5月?となんだか嬉しくなりました。彼女は寿退社をされ、もうお会いすることはなくなってしまったけど、明るい置き土産を残していってくれたようで、受付を通るとその時の柔らかい会話を思い出します。北海道の桜は、5月にも咲いてくれる。どんなに落ち込んでも、私も花を咲かせよう。
北海道と言えば、旭川に行った時、やり残したことを思い出しました。最近になり、スタバのアプリをあれこれタップしていたら、スタンプの存在に気づき軽く凹んでしまった訳で。それは、アプリからチャージした画面で商品を購入すると、そこの店舗のスタンプを画面上でもらえるというもの。息子と旭川に行った時、駅方面に歩いていたらスタバのマークが見え、嬉しくなりました。ここに住めるなと心の中で思っていると、息子がひと言。「あれってママが好きなカフェだよね!ボクが好きなのはマック。おもちゃがもらえるから。」「Mのマークね!スタバのマークを見ると吸い込まれそうになるんだよ~。」とわいわい。本当に吸い込まれたら良かったなと、今さら小さな後悔が押し寄せてきました。旭川スタバのスタンプをもらいに、もう一度現地に行ったらみんな笑ってくれるだろうか。私ならやりかねないと思われるかもしれない。

以前、父が伝えてくれた話をずっと覚えていて。「老後になってもっと時間ができたら、都道府県全部を回りたい。短時間でもいいんだよ、その地域に足を踏み入れたい。」と。地理が好きな父らしい話だなと思い、少しだけ私も便乗したいと思いました。そんな父がバランスを崩した時があって。それは両親の別居中、二人でうまくやっていこうともう一度決めていた時に一悶着あり、お正月の家族旅行に父を呼ばなかった母。彼女の精神状態は悪化し、訳の分からない状態をフォローしていた矢先に父からメールが入りました。マンション内で怪我をして、ちょっと辛いと。お正月、みんなが家族団らんでいる中、一人でいることが寂しいのは分かるけど、女性の物を置きっぱなしで原因を作ったのはお父さんでしょと思いながら、かなり緩い変化球を投げました。『お父さんが私の名前を決めてくれたとお母さんから聞いていた。本を買ってきて沢山調べて、その中で画数の合う名前を選んだと。そっぽを向かれて悲しい時沢山あったけど、お父さんが愛情や時間をかけて付けてくれた名前だと思うと、大切にしようと思った。その時のお父さんを忘れないでいてほしい。』泣きながらそう返信すると、返事はありませんでした。そして、家族旅行先では、私の前で横柄にしている母に気づき、ネネちゃんが端に呼び出してくれて。父からの連絡も伝えると、呆れながら話してくれました。「お父さんもお母さんも、全部Sちんに向かうんだよ。二人のことなんだから二人で解決しろっていつも思うのに、受け止めてくれるSに向かうの。それが私は許せない。Sちんが寄り添ってくれるって分かっているからなんだよ。いつまでも娘の優しさに甘えるな!って言いたい。ねえ、もう少し勇気を出して距離を取らない?」お母さんがそばで聞こえるかもしれないから英語で教えてとか、下手くそ過ぎる英語で話す私に笑いを堪えながら、途中で日本語になった私の話に姉の強い怒りを感じ、色々な意味で泣き笑いしたくなりました。ネネちゃんに伝えたら、傷つく内容が盛りだくさん。こうやって沢山隠してきたし、でも抱えきれないものもあって、少し話すと彼女はその大きさに気づき、ごめんねとありがとうが混在した温かい時間でした。「大丈夫。もう少し頑張ってみるよ。」もう聞き飽きたであろう、妹の言葉。手を掴み、一緒に逃げることができたなら。姉の優しさは、ずっと私の心の中で不燃物を取り除こうとゆっくり巡ってくれています。なぜSちんは曲がらなかったんだろうね、曲がっちゃっても良かったんだよ。何度も伝えてくれたネネちゃんの言葉。あまりにも沢山の人達が私の幸せを願い、ぬくもりを届けてくれたから。そして何よりあなたがいてくれたから。それが答え。シンプルなんだよ。

4年半ぶりに再会した時、スタバのリユーザブルカップ(くまちゃんのキャップ付き)をプレゼントすると、とっても喜んでくれた姉。「Sちんがこんなにカフェ好きだって知らなかったの。」「図書館だけじゃなく、カフェでもバランスを取っていたの。一人になって淡くかかったBGMを聴くと、自分を取り戻せる気がしてね。」「そうか。沢山自分の居場所を見つけてきたんだね。」そのひとつがネネちゃんの大阪の女子寮だった。花咲かせるよ、これまで支えてくれた方達に感謝を伝えるために。