居心地の良さ

ふと姉から一通のメッセージが入りました。『連敗中だった就職活動なんだけど、昨日お仕事決まりました。ちょっとバタバタするようになってしまうから、お茶でもできたらなと思い連絡しました。』雨の日、猛烈に辛い頭痛と戦っていたので、思いがけない吉報に痛みが和らいでいくようでした。予定をすり合わせ、お祝いのコメントを送ると喜んでくれて。『実はまだ家族には言っていなくてSちんが第1号』とハートマークを付けて届けられた文面に色んなことを感じました。その連敗を知っているのは妹だけ。励まし続けてくれたSちんに、最初に報告したかったんだ。そんな律儀なネネちゃんの社会復帰が、光り輝くものになりますように。あなたは沢山輝ける人。

そして、当日の朝、気圧の変動でまともに寝られず、朝から雨でコンディションは最悪。それでも、明日から仕事だという姉にどうしてもエールを送りたくて、約束した駅まで出向きました。すると、カフェの手前で後ろから声をかけてくれたネネちゃん。彼女の心がどんどん軽くなっていることを感じ、なんだか泣きそうになりました。いい仕事に出会えたんだね。そんなことを思いながら対面し、就職おめでとう!と改めて伝えると嬉しそうにしてくれました。「もうね、本当に色んな所に履歴書を送っても散々で、ようやく決まったの。その中で、○○大学も司書を募集していることに気づいてね。Sちんが持っている国家資格やっぱり強いよ。」「いやいや、私はへなちょこだし、ブランクもあるし、全然だめだよ。」「そんなことないって。私、今度生まれ変わったら、国家資格取ろっ。」と姉らしい励まし方をされ、一緒に笑ってしまいました。もう一度大学に行って、司書の資格を取る!そんな私を近くで応援してくれた姉。大学に車通学を始めると、会社の近くを通過するから、途中で降ろして~と助手席に便乗してきました。1週間に数回試験があるという短期集中講義に疲弊しながら、助手席で問題を出してくれたネネちゃん。妹の努力が実を結びますようにと願い、そこにいてくれた日々が懐かしく思い出され、堪らない気持ちになりました。現役を離れても、私を支え続けてくれている大切な資格なのだと。試験の前日に一家で食中毒。それでも乗り切れたのは、絶対に諦めるなという姉の声が聞こえてきたから。

そんな20年近くも前の記憶を思い出していると、息子のことを伝えてくれました。「R君は、大人だなって思う。優しいしね。」「私が思っているよりも、Rは色んなものがよく見えているんだなってはっとなることが増えたよ。くだらないことなんだけど、歯磨き粉が嫌いでなかなか付けようとしないの。ちゃんと子供用のぶどう味にしているんだけど、全然減っていないから冷静に伝えたの。甘いものを沢山食べたから、歯磨き粉を付けないと虫歯になっちゃうよ。お母さんも匂いとか苦手だったから、色んなものに敏感なRが嫌がる気持ちも分かるけど少量でも付けた方がいいよって。そうしたら、使っているんだけどなぜかこの歯磨き粉減らないんだよ~って言われてね。どんな歯磨き粉やねん!と思いながら、苦手なことを頭ごなしに怒ってもいけないのかなって、Rの繊細さを早い段階で気づけて本当に良かったよ。」そう話すと、ゲラゲラ笑い転げてくれて。「学校の集団生活も最近かなり疲れていて、家に帰ってから、お菓子をぼりぼり食べながらクレヨンしんちゃん見ているの。食べ過ぎでしょって思う時もあるんだけど、そういうことでストレス発散できるならいいのかなって。注意しながらも、その気持ち分かるよって伝えるようにしているよ。本当に笑っちゃうぐらい似ているんだけど、男の子ならではの面白さもあってね。この間、公園に行ったら水遊びができる場所があって、着替えがないから足だけならいいよって言って裸足で入らせたの。そうしたら、ずぶぬれになって笑いながら戻ってきてね。この後電車に乗って帰るとか、お構いなしでTシャツを絞りながらやってくるから、一緒になって笑っちゃってね。ボタンがあったらとりあえず押してみるとか、押したらその後どうなるとか本気で考えていないの。本能のまま生きるって、腹が立つけどなんかいいなって毎日学びがいっぱい。」そう話すと、ずっとお腹を抱えて笑ってくれて、男の子あるあるの話は尽きなく、姉は笑顔を取り戻してくれたのだと思うと、じわっとこみ上げそうになりました。「ネネちゃん、人格ある一人の人間を育てるって大変だね。でも、めちゃくちゃ喜びもあってさ。その子の良さを大切に、伸び伸びできる環境を作ってあげることで、花開いていくと思うんだ。そんな日までお互い頑張ろうね。」そう伝えると、その日一番の優しい笑顔で頷いてくれました。
独身時代に入った私の死亡保険、その受取人を夫から姉の名前に変更したいと伝えると少し驚かれて。「私の方がSちんよりも先に逝くよ。」その表情はちょっと切なく、絶対に姉を一人にさせてはいけないのだと強く思いました。妹に見送られたい、そんなネネちゃんの気持ち受け取ったよ。

その後、明日からのお仕事頑張ってね!とビッグスマイルでお別れし、お礼のメッセージを送ると、夕方返信がありました。『SちんとR君の繊細さの話は、私はとても面白く聞かせてもらっていて、人ってみんな心地よい感覚ちがうんだなあって尊重したい気持ちになります。いい母子だね。母ちゃんハッピーになろう。今日はありがとう。』姉の優しさが沢山詰まった言葉に胸がいっぱいでした。「学級委員をやったらようやく褒めてくれて、お母さんの愛情はいつも条件付きだった。そんな親にはならないでいようって思う。」そう話してくれたネネちゃん。この人は、幼少の頃から、ありのままの妹を見てくれていたのではないかと思うと、心から笑える環境をいつもそっと探してくれていたのではないかと思うと、堪らない想いに包まれました。今度は私があなたの光になる。根を張り、自信を持って花を咲かせられるように。居心地のいい太陽でいよう。