毎日のように行っている息子のお迎え。待ち合わせの公園で夏空を見上げていたら、暑さで疲れ切った小5男子が重たいランドセルを背負いながら帰ってきました。「おかえりなさい~。」「ただいま~。」と全部のひらがなに濁点が付きそうなへとへとの様子に笑いを堪えながら、ランドセルを自転車の荷台へ載せることに。すると帰り道、なんだか後輪がガタガタするなと思ったので自宅に帰り空気を入れ、一件落着。そして翌朝、送り届けようと自転車に乗るとパンクしていることが分かり、仕方がないので歩いて学区内まで見送りました。その後、自転車を引いて修理屋さんへ。50代の男性スタッフさんに事情を説明し、もしかしたらチューブごとの交換になるかもしれないと言われ、1時間半後に取りに行くことになりました。思いがけず時間が空いてしまったな、駅近だし、仲良しのKちゃんや不動産関係でお仕事をされていたHさんに連絡を入れてみようかなと思っていると、彼女が息子君といることが視界に入り歓喜!「Kちゃん!」すると再会を喜んでくれたものの、息子君が風邪を引いていることが分かり、少しだけ話してバイバイしました。その短時間がね、大きな活力になって。会うと、ぐちゃっとした自分の心が解れる感覚があって、こうやっていつも助けてもらってきたのだと改めて感じました。随分早い段階で、彼女は私のことを理解してくれていて。Sさんのペースが大事。歩調を合わせてくれていたのはいつもKちゃんの方で、その優しさを絶対に忘れたらいけないと思いました。どうしようもなく苦しかった数年前、家族会議の後、彼女にだけは会うことができ寄り添ってもらって。その時見上げたまだ咲かなかった桜の木、そのそばで妊娠していることを伝えてくれました。その命が、こんなかわいい男の子になったのねと感慨深いものがあって。大きくなったね。
それから、1人でロッテリアのモーニングを食べていると、BGMに身を委ねながら、ゆっくりと思考が巡りだしました。その前日、メジャーリーグのオールスターゲームを自宅で観戦していると、シアトルマリナーズの本拠地で開催されることが判明。そこで、たまたま映し出された観客席に背番号『51』イチロー選手のユニフォームを着たファンの後姿が見えて、泣きそうになりました。私にとってイチロー選手が特別なように、マリナーズのファンにとってももっと特別なものなのだと。残してくれたものはあまりにも大きく、そして今度はコーチとしてまた沢山の遺産をチームにもたらしてくれるのだと思うと、堪らない気持ちになりました。いつかシアトルに行けたらいいな。そして、とても自然に思い出された最近行った神宮のライトスタンド。そこに、60代の男性が昔のヤクルトのユニフォームを着用されていて、背番号を見ると池山選手のものだと分かり、なんだかぐっときました。その時代の空気を運んでくれたようで、この方はもうずっと前からファンでその背中から長い歴史を感じました。今二軍の監督をされている池山さんが知ったらきっと嬉しいだろうなと。そんなことを思っていると、すぐ後ろの方で声を張り上げて応援していた若い男性二人。ヤクルトの選手がバッターボックスに立ち、ファールで粘っていると、応援の途中で「なげ~な。」とその兄ちゃんが呟くので、周りのみんながつられて笑ってしまい、とても和やかな雰囲気が流れました。本当にもう、次の日声がかすれて出ないんじゃないかぐらいの大きな声援を送っていた彼、ファールでもずっと歌い続けるので、思わず出た本音になんだかヤクルト愛が自分の心に届きました。息子も一緒に笑い、その雰囲気がとても気に入ったよう。帰り道もゲラゲラ笑い、その兄ちゃん達はビールを10杯は飲んでいた!と教えてくれました。同じようにスワローズクルーのユニフォームを着ているお客さんも多く、思いっきりホームを楽しんだ息子の喜んだ声も笑顔も、私のエネルギーに変わりました。本当は7回の途中、天気の急変で一気に吐き気に襲われていて。その日は満員、両サイドは埋まり、トイレに行くタイミングを逃し困惑。いやな汗が出始め、それでもこの時間を台無しにしたくなくて、深呼吸しながら頭をフル回転させました。液体さえ飲むのも辛い状態、さあどうする?とその時なぜか、ネネちゃんが以前に話してくれた声が聞こえてきて。「Sちんは胃袋が小さいから、子供風邪シロップとか効きそうじゃない?逆に負担が少なくていいかもよ~。」半分冗談で言ったんだろうけど、本当に効いたことを思い出し、そう言えば息子の酔い止めをいつも持ち歩いていた!とこっそり安堵。ダメ元でチュロップを一粒舐めてみると、少しずつ楽になり難を逃れました。試合は勝利し、先発のピーターズ投手とホームランを打ってくれたサンタナ選手が、ボールにサインを書いて、ライトスタンドの前まで来てくれて。その時、サンタナ選手がスタンドに向かって投げずに、車いすエリアの方に渡す為、ネットの下をくぐらせ、渡している姿を目撃しました。「サンタナ、優しいね。」と息子がぽつり。その光景を見た他のみんなも口々に、サンタナ優しいなと呟いていて。魅せてくれるのはプレーだけじゃない、そう思いました。手術をしてから、思うように心や体がいうことを利いてくれない時があって、もどかしくもあり、とことん向かい風を楽しんでやろうと意気込む時もあれば、その逆もあって、そんな時にサンタナ選手の優しさに触れ、なんだか救われた気がしました。今の自分を好きでいようと。
さてさて、修理の時間が終わり、取りに行くとやっぱり劣化などで、チューブ丸ごとの交換でした。思ったよりも費用がかさんだことを気にしてくれたスタッフさんが、ブレーキや鍵の錆なども一緒に見てくれていて。お礼を言い、自転車を走らせてみると驚く程軽くなっていて、感激。ふと息子と去年の夏に行った旭川のサイクリングを思い出した。緑が本当に綺麗で、彫刻の街を駆け抜けました。苦しさは人それぞれ違うけど、その辛さを分かろうとしてくれる人はきっと周りにいる、少なくとも私は、このサイトは、そんな小さな存在になれたらと思っています。長い時を、共に歩んでくれてありがとう。