向き合い方

シェアオフィスのエレベーターホールで、広報担当のMさんが他の男性スタッフさん3人と話しているのを見かけました。本当に久しぶりだったので、嬉しくなって軽く会釈。するとこちらに気づき、笑顔を向けながらひょいっと手を挙げてくれて、その動作があまりにも自然で、彼の人との向き合い方を感じ嬉しくなりました。私も同じように手を挙げると、周りにいたスタッフさん達も仲の良さを雰囲気で感じてくれたよう。Mさんから放たれる明るい色、気持ちがいいぐらい彼の生き様が内面から外に溢れ出し、会う度に嬉しくなります。その場を取り繕うのではなく、相手を尊重されてきた方なのだと、憧れの人生の先輩に会えて今日も1UPできたようでした。彼が凹んだ時は、またキノコを届けに行こう。

この間は、久しぶりに臨床心理士を目指している幼稚園時代の友達から連絡が入りました。LINEで弱音を吐くことのない彼女、それでも直接会うと何とも言えない葛藤を話してくれることがあり、拠り所にしてくれているのは感じていて。今回はスケジュールが合わず断念、それでもまた都合がついたら会う約束をし、いつでも連絡をしてねと伝えました。彼女との出会いはプレ幼稚園、実際に深くなったのは年中の時だったかな。たまたま入った一凛珈琲で、友達はテキストを片手に勉強中でした。そこで、臨床心理士を目指していることを知り、せっかくなので母の話を聞いてもらおうと思い、可能性のある人格障害の話をすると、ページをめくり「これ?」と見せてくれて、思わず笑ってしまいました。「そう、それそれ!」「先ほど勉強したばかりだったんだよ~。」とそのタイミングにもびっくり。実際に母とも会ったことがあり、表面上は明るい人、でも閉鎖的な二人の状況では言いたいことを言われてしまうということを、彼女は深く理解してくれました。そして、Sさんにだから話すけどね、と前置きをした上で伝えてくれた子供時代の苦悩。鬱のような状態に苦しみ、両親の理解が得られなかった辛さを、勇気を出して話してくれました。だから、心理学部に入学し、今でも恩師にカウンセリングをたまに受けているのだと。今も、波のような状態で、たまにどうしようもなく苦しくなる時は、抗うつ剤を飲んで仕事に行ったりするよと正直に伝えてくれた彼女を見て、なかなかできることじゃないなと思いました。自分を支えるだけで大変な時もある、でもだからこそ、悩んでいる子供達の気持ちが分かる気がするんだ、そう伝えてくれているようでした。スクールカウンセラーのサポート業務をしている彼女、治療薬の副作用で気持ちがどうしようもなく沈む辛さを味わった今、友達の痛みにまた一歩近づけた気がして、落ち着いてゆっくり話したいと思っています。いつか、本当にいつの日か私の前で泣いてくれたらいいなと。よくここまで頑張ったね、そう言ってハグができたなら。

姉が家庭教師をしていた娘さんの理容師さんご夫婦。お邪魔をさせて頂く中で奥様が色んな話をしてくれました。「中には身分を伏せていらっしゃるお客さんもいてね。その中で、ここだけの話保護司さんだと教えてくれた方がいたの。その人がね、こんな話をしてくれて。『年を重ねるごとにみんな地位とか名誉とか少しずつ沢山の鎧を身に付けて行く。でもそれを一枚ずつ脱いでいくと、最後に残るのは人の心だって。保護司をやっていると色んな人の本当の姿が見えてくるよ。』って。その話を聞いて、私達とっても考えさせられて、Sちゃんに聞かせてあげようって思ったの。あなたは鎧を着ないんじゃないかなって。ちょっと無防備過ぎるよって周りは思うこともあるかもしれない、無防備な分傷つくことも多いと思う。でも、私達はそんなあなたから学んだし、そんなあなただから相手は素直になれたりするんじゃないかなって。うちの旦那さんね、最初はそんな技術で本当にお客さん来るの?っていうぐらいの腕前だったの。でも、おやじさんとまた話したくて来たよって言ってくれるお客さんがいて、それが本当に嬉しくてね。もちろん技術も大事、でも、また会いたいって思ってもらえるお店にしようってここまで来たんだと思う。Sちゃん、時に鎧も必要な時があるかもしれない、でもあなたが持っている中身を大事にしてほしい。私達が言えるのはこれぐらいだけど、あなたのこれからを応援しているよ。」そう言って笑ってくれました。こんな言葉をかけてくださるご夫婦だから、お客さんが途切れることはないんだろうな。こんなことがあったよ、あんなことがあってやらかしちゃって、しょうがねえなってまた頑張るかって酒飲みながら思ってさ、せっかくだからおやじさん達に聞いてもらおうって今日来たんだ、そんなお客さん達の声がいつも飛び交うような店内でした。まだ使っているよ、大学入学祝いにプレゼントされたイブサンローランの定期入れ。ご夫婦の言葉を忘れないための大切なお守り。

随分と時が経ち、SNSでたまたま娘さんが私を見つけて連絡をくれました。『今はね、理容師になって、修行を終えて実家で両親と働いています。喧嘩ばっかりしてる。Sちゃんに沢山話を聞いてもらって、助けられました!』一人娘をがんじがらめにしないように、本人が望む道をいつも用意していたご両親。その気持ちを十分感じて選んだ道なのだと嬉しくなりました。お嫁に行き、またご両親だけになった理容院。名古屋駅から時間があったら会いに行こうか。目を閉じると、お客さんとの明るい声が今日も聞こえてくる。