ある休みの日、ゲームセンターで取ってきたスーパーボールを洗いたいと息子が言い出し、一緒に洗面台へ。髪の毛などが付着してもすぐに捨てられるように、元々あった白いキャッチできるもの(名前が分からん)を外し、使い捨てのピンクのものをはめていたので、そちらを外し黒い蓋をはめ込んで、水が落ちないようにセッティングしました。「これで水を入れると溜まるから、洗えるよ。あとは大丈夫ね!」そう言ってその場を離れ、家事をこなしていると、「あ~!!入っちゃった!」と息子が大騒ぎしているので慌てて洗面所へ向かいました。「どうしたの?」「水を流したらスーパーボールが流れていっちゃったの。」「え~!ボールを取ってから流さないとダメだよ!」と慌てながら伝えたので、随分怒った口調になってしまい、息子がしょげてしまいました。どうしよう、まさか排水溝に入ってしまうなんて。落ち着けと自分に言い聞かせ、まずはネット検索。すると同じような事例が出るわ出るわ。排水溝を覗いてみても引っ掛かっているような感じではなかったので、思い切って下の“し”の字のような管を取り外して見てみました。ない・・・そして、うまくはめられない・・・と困ったことだらけで、マンションの契約の時のことが蘇ってきました。トラブルがあった時、隠すのではなくきちんと報告してくださいとのこと。信頼して貸してもらったことを忘れてはいけないと思い、管理会社に正直に伝えました。休みの日も繋がることに安堵し、内容を説明すると改めてこちらから連絡しますと言われ、息子と凹みながら買い物へ。重たい荷物を抱え帰宅すると、着信に気づき電話を入れました。すると、思いがけない展開が。「ご入居されて間もないということですが、契約の際、お部屋内のトラブルに関するサポートの保険にも加入してもらっているので、そちらに電話をして頂くと、簡単なつまりでしたら無料で対応できそうです。」なんて有難いシステム!と感激しながら問い合わせをし、翌日の夕方来てもらうことになりました。やれやれ。
そして翌日、仕方がないので息子とキッチンの蛇口で顔を洗い、学区内まで送り届け、電車に乗って心療内科に向かいました。相変わらずほんわかした先生に癒され、別居してももう少し落ち着くまで通院した方がいいと言われて笑ってお別れ。その後、いつものカフェで姉と合流しました。「排水溝の中にスーパーボール落としたってSちんから連絡が来て、R君も男の子だなって笑ってしまってね。」「持って帰ってくると絶対に洗いたがるんだよ~。」「分かるわ~。米研ぐみたいにわしゃわしゃってやりたいんだよね。」「自分が女性だから、男の子の行動が読めない時があって今回は完全に想定外だった!」「何個落としたの?」「三個。」そう話すとゲラゲラ爆笑されてしまいました。「それって男の子あるあるだよ。Sちんを助けられないかなって思ってネット検索したら、めちゃくちゃ出てきたもん。」ああ、ネネちゃんも検索してくれたのねと思いながら、どちらも男の子のママなのは神様からのプレゼントなのだと改めて思いました。「うちの子なんて虫が大好きだから、バルコニーで沢山飼っていて、私は妹しかいなかったからびっくりすることばっかりだよ。」「そうだよね~。香川照之さんがあんなに虫に詳しいなんて、子供を持って初めて知ったよ。カマキリ先生。」どこまでも話が尽きなくて、日の当たるカフェで楽しい時間が流れました。
そして、ネネちゃんに感謝の気持ちを伝えなくては。「弁護士さんを紹介してくれてありがとう。とっても相性が良くて本当に有難いよ。」「それは良かった。でも、Sちんから弁護士費用の額を聞いて、びっくりする程高くてね。」「安心させてもらえるって大きなことだから。」「Sちんは、ここぞっていう時に投資ができるの。そういうお金の使い方って、後々生きてくるから。子供の権利を守るためにSが弁護士さんを立てたことについて、うちの両親は何も思わないのかなって。あの人達が別居する時は、Sちんが間に入って交渉したんだよ。本来しなければならないことを、娘がこうやって両親に見せているんだから、何か感じてよって思う。もうね、あの人達の茶番に付き合うのはもうやだもん。」その言葉を聞いて、爆笑してしまいました。これまでのこと全部、ネネちゃんの中では“茶番”という単語で片付いてしまうんだろうなと。Sが両親の婚姻費用を決めた、父が途中で減らした金額に激怒した母は、その怒りを妹にぶつけた。ふざけるな、二人でやってくれ、Sは都合のいいコマじゃない。それがいつも姉の本心でした。「久しぶりにお母さんに会ってどうだった?」「別に何とも思わなかった。謝ってこられたけど、何のことに対して謝ってきたのか分からなかったし。」なんだか姉らしいなと言えばそうなのかも。その言葉の裏側にあるのは、怒りや諦めや、子供達の為に会おうかなっていう母親としての姿も垣間見えて。そして何より感じたもの。Sちんが大金を使って弁護士さんを立てても、うちの両親は自分がしてきたことに気づかない。間に入った妹がどれだけ傷つき、悩み、両親の幸せを願ったか。そんな気持ち全然分かっていなくて、反省もなくてだから私は許せないんだよ。S、簡単に人を許すな、時にその人達の為にならないから。姉の中に渦巻いている感情を掴めた気がしました。私の代わりに彼女は怒ってくれていた。長く、そして深く。あなたが守ってくれたから、私は守り方を知っている。その気持ちを、息子へ繋ぐよ。「R君は大丈夫。Sちんが愛情をいっぱい注ぐから。」ありがとう、ネネちゃん。
嬉しい気持ちに包まれ、慌ただしく息子と帰宅。水道屋さんに見てもらい、詰まっていないことが分かって一件落着。『スーパーボール事件、どうやらそのまま下水に流れてしまったらしい。下水処理場の人もびっくりだ!』と姉にLINEを送ると画面の向こうで大爆笑。日の当たる場所でまた会おう。どんな時も笑っていて。