形のないプレゼント

今年の40歳の誕生日。究極にどんくさいことをしてしまい、小学校の大切な資料を無くしてしまいました。本当に慌てて、クリアファイルを片っ端から探しても見つからず、冷静な息子が不穏な空気に気づき、「ママどうしたの~?」と聞いてくれました。「大事な紙が見つからないの。」「物は大切にしなきゃいけないんだよ~。」お前が言うな!!

そんな顔面蒼白な中で、仲良しのKちゃんにメッセージで泣きつくと、住んでいる地区が違ったので同じ資料はなく、そのことをとても申し訳なく思ってくれて、その気持ちが沁みました。いつも助けてもらってばかりだから、お役に立てたら嬉しかったのだけど、力になれなくてごめんねと。こういう時に、本質って出るんだろうなと改めて思いました。結果的に資料が無くても、彼女のそんな気持ちは友情の深さを伝えてくれている。この関係は、きっと本物。

そんな半泣きの夜、マブダチK君からも一通のメールが。『素敵なアラフォー女子へ 深夜にゴメン。少し遅れたけどお誕生日おめでとう♪中年男子より』なんじゃそりゃ。褒められているんだか、いじられているんだか。ただ一つ言えるのは、K君は私が家を飛び出した二十歳の誕生日を忘れてはいないということ。16歳の誕生日から、必ず当日に祝ってくれる学生からの友達は彼だけ。そして、ある時伝えてくれました。「お前の両親のことは、俺ははっきり言って腹が立っているけど、Sを生んでくれたことに対してはありがとうと思っている。だから、おめでとうなんだよ。この世に生まれてきてくれて、俺が一番感謝している。」自分に自信を無くすな、もっと自分を大事にしろ、そう言い続けてくれた彼だからこそ、誕生日のおめでとうはやっぱり堪らない気持ちになります。短い文章の中には、アイツの良さが沢山詰まっているから。

高校1年の時、K君と仲良くなってから、彼の男友達何人かに同じようなことを言われました。「Kは、Sさんに出会ってから、随分変わったよ。中学の頃は、自分のことしか考えていなかったし、もっと人を寄せ付けなかった。あんな風に丸くなったことに驚いているよ。」と。それを丸ごと本人にぶつけてみました。「一体今までどれだけ性格が悪かったの?」と意地悪なことを言ってみると、意外にも直球が返ってきて。「お前が変えたんだよ!人のこと考えるなんて、正直めんどくせえなとかずっと思ってた。でも、Sってさ、真剣に相手と向き合うだろ。俺、コイツの為なら死ねるかもって本気で思った。だから、幸せでいてくれないと俺が困る。」
彼から何か形のあるプレゼントをもらったかというと、ゲームセンターのメダルぐらいしか思い出せません。しかも下手くそすぎて、吸い込まれてしまったし。でも、この時に言われた言葉は、間違いなく私の芯の部分にあり、消えることはありません。アイツには大きな借りがある。だから、本当に苦しい時は、助けたいといつも思っています。

無くした資料は、同じマンションの友達にコピーをさせてもらうことになり一件落着。そして、夫からはうさぎのバスケットに入った焼き菓子と、息子からはお手紙とてんこ盛りのシールのプレゼント。「ママ、お誕生日おめでとう!」家を飛び出した20年前の今日、こんな日が想像できただろうか。大きなボストンバッグの重みと、心の傷みは優しくゆっくり消えていく。
そして、結婚9年目に突入。うさぎのバスケットには何を入れていこう。沢山の失敗。その先にある、数えきれない優しさ。誰かを守るということ。

お誕生日、おめでとう。そこにいてくれる心温かい読者の皆さんへ。365日分の気持ちを乗せて。