登り坂だった

担任の先生に勧められた学校カウンセラーの方との面談。強制でもなんでもないのですが、少しでも何か気になることがあれば、保護者の方に勧めるようにしているんです、以前そう言われたことが頭を過り、せっかくの機会なので、予約をさせてもらいました。

学校へ出向くと、穏和でとても優しい女性のカウンセラーの先生。なんだかそれだけで嬉しくなりました。指定された教室に一緒に向かい、斜め前に座るよう促され、真正面ではないことにも意味があるのだと、そんな配慮まで有難く感じられました。話し始めると、なんだか全然大したことないんじゃないかと思えてきて。そしてある程度話し終えると、穏やかに伝えてくれました。「お子さんは、お母さんに弱音が吐けているので大丈夫ですよ。嫌な経験って、とっても大事でそこでものすごく学ぶんです。自分がどう感じたのか、それを周りの人に伝えられるということが今後に生かされていきます。息子さんはちゃんとできていますよ。お母さんとの今の信頼関係を大切にしてあげてください。」なんだ、あっさり合格の判子を押されたな。それよりもなぜか蘇った自分自身の過去。越えたものと越えられていないものが、その時間になぜか一気に押し寄せ、まだまだだなと変な凹み方をしてしまいました。母親としては、合格ライン。でも自分自身は、50点。先は長い。それにしても、話し方って大切だな、優しいカウンセラーさんと対面し、また未来への宿題ができたようでした。

そんな弱気な私に気づいたプログラマーのMさんが、オンライン上で伝えてくれました。「こんな時も必要なんだと思います。トンネルでもないかもですよ。ちょっと長めの登り坂、顔は上向いていますよ。ゆっくり行けるといいですね。」珍しく図書館でパソコンを開いていて、その文面を読み、泣きそうになりました。さぼっている場合じゃないな。忙しい合間にこの場所に来てくださる方達がいるのに、凹んでいる場合じゃない。空を見上げよう。

高校2年の時、友達の紹介で他の高校の男子高校生と会いました。待ち合わせ場所は図書館。なかなかいい出会いで、友達以上恋人未満の関係に。ちょっといいなと思っていた頃、野球部だった彼は、怪我で体を故障。段々無口になっていった彼に、バレンタインのチョコを渡し、そこからまた励みに頑張ってほしいと思っていると、言われてしまいました。「チョコは受け取れない。俺、サードでなかなかレギュラーが取れなくて、それで怪我。本当に悔しかったんだけど、もう一度後悔のないよう3年の夏を迎えられるように、野球に専念しようと思うんだ。だから、ごめん。受け取れない。」交差点で言われたひと言。溢れそうになる涙をぐっと堪え、満面の笑みで伝えました。「応援しているから。絶対レギュラーとってね。私は大丈夫。」そして、自分からその場を離れました。何がどう大丈夫なんだ、そう自分に言いながら大泣き。その後、その悲しみを乗り越える為に猛勉強。びっくりする程成績が伸びた、大きな出来事でした。彼は結局、補欠で予選に参加したと友達から聞きました。絶対いい女になってやる!

それから、大学に進学し、学食前で一人の男性が声をかけてくれました。「Sちゃん。」「・・・、ああ!○○君、同じ大学だったの?」そう言って久しぶりの意外な場所での再会でした。「その後どうしていたかなと思っていたんだよ。」お互いがお互いを気遣いながらも、視線はもう別の所。懐かしさとほろ苦さと、優しさが入り混じった、何とも言えない再会でした。「またキャンパス内で会えたらいいね。」どちらからともなく言ってお別れ。今はメイクしているし、少しは大人の女性に映ったかな、あの別れがあったから必死で勉強して指定校推薦勝ち取ったよ、野球を続けているのか聞けばよかった、精いっぱい笑えていたかな、沢山の気持ちが渦巻きながら、それでも格好よくキャンパスを歩こうと思いました。前に進んでいるのだ、そう自分に言い聞かせながら。学部が違った彼に会ったのは4年間でたった1回だけ。偶然の1回は、1歩前に進んでいると証明してくれた神様のいたずらだったのかも。

登り坂が終わって平坦になった時、もっと空が広く感じられるのかな。だったら、その空気を吸い込まないと。