最終手段

大分弱っていたある夜、本当にもうどうしようもなく辛くなったら、日帰り名古屋で小料理屋のママに会いに行こうと思った時、ふわっと少し気持ちが軽くなったようでした。前回会ったのは二年前、お茶でもしてゆっくり話でもできたら良かったわ、そんな言葉をさりげなくかけてくれたことを思い出して。ここにいるよ、そんなママの気持ちを改めて感じ、また頑張れそうな気がしました。それでも挫けそうになった時は、息子が学校に行ったタイミングで新幹線に飛び乗り、名古屋駅のスタバで彼女に会い、充電満タンにして戻ってこよう。ママに癒されるわ、スタバのスタンプをゲットできるわで帰りの新幹線は見える景色が違うはず。息子のおみやげに、名古屋めしを買って帰ったら何事かと思われるかな。思い出したよ、名古屋の街で感じたぬくもり。それだけで十分。

週末の土曜日は冷たい雨で、それでも息子の自転車を買いに行く約束をしていたので、お店まで向かいました。すると、息子がすっかり一目ぼれしたのは黒のマウンテンバイクのような一台、それは旭川でサイクリングをしたものと似ていてなんだかぐっときて。お店の人に聞くと、もう少し待てば展示品ではなく新車が入荷されるとのこと。それを息子に聞いてみると、この自転車がいいと言うのでその場で決めました。そして、今乗っていた自転車を引き取ってもらえるということで、それはそれで名残惜しそうにしていて。「ボクの相棒、今日で最後なんだね。ママ、写真撮って。」そう言われたので、やや雨に濡れながらカシャリ。その気持ち、大事にしなよ。そして、室内で手続きに入り、顔馴染みの男性スタッフさんがサドルの調整をしてくれました。このなんとも言えない昭和感のある自転車屋さんが好きなんだよな、そう思い、お礼と共にお別れ。そして、すっかり気に入った息子は翌日もサイクリングがしたいと言い出し、外を見ると小康状態だったので午後に出ようと決め、家のドアを開けました。すると、小雨が降っていて困惑。頭痛やめまいが軽くあるんだよな、でも超アウトドア派な息子を外に出して発散させないとまたぐずるかなとあれこれ考え、思い切って強行突破することに。ひんやりしているし、雨の中何やっているんだろうなと冷静に思いながら自転車を走らせ、折り返して戻ってくると、雨は止み、空には虹が見えて泣きそうになりました。神様からの小さなご褒美、なんだかそんな気がして。「ママ~、綺麗な虹が見えたよ!!」この瞬間の為のサイクリングだったのね。
そして翌日、また旗振り当番が回ってきたので早く起きて息子と学校へ向かいました。今回は校門の反対側、いつものように子供達に挨拶をしていると、ひょこひょこやってきたのはマリオの帽子を被った低学年の男の子でした。朝からかわいいマリオに会えるなんてね。その後、また相方が来ないなと思っていると、ささっとやってきたのはサングラスにマスクの再登場お父さんで、笑いを堪えながらご挨拶。今回はお互いの位置が逆で、校舎を背にそのお父さんが旗を持つ格好だったので、その何とも言えない風景に和ませてもらいました。そして、児童だけでなく、車に乗った先生達、徒歩や、マウンテンバイクで通勤されている朝の様子を見て、校門近くにどっしりと構えた木は、何十年もの間この学校に通う沢山の方達を見守ってきてくれたんだなと思いました。その太さは、年輪は、凛々しくも逞しくもあって。植物の力ってすごいな、その呼吸を感じ嬉しくなりました。そして、時間になり、お父さんに挨拶をして学校を後に。ほんの小さなエネルギーだけど、校舎に置いていったよ、誰かが拾ってくれたらいいな。

ふと一人になり、別居前に不動産関係のお仕事をされていたHさんの後輩にあたる弁護士の先生の元を訪れた時のことを思い出しました。初対面とは思えないフランクさで伝えてくれて。「どこから切り込んで話してもらっても大丈夫ですよ。」そう言われた時、先生も苦労されてきた方なんだなと思いました。何をどうしたらいいのか困惑している人が理路整然と話すのは難しい、とりあえず話したいことを伝えてもらったらこちらで整理し繋げていくので気にしないで言ってください。そのスタンスが本当に有難くて。有意義な一時間、その空間は今でも大事に取ってあります。そんな日常と平行にあった漢方内科の主治医の診察。医療の面で最大限のバックアップをしてくれているだけでなく、最近になって改めて気づいたことがあって。なぜ先生は、盾も矛も持たないのだろうと。年を重ねる上で、途中で捨てたとかではなく、最初から持っていないし、どこかのタイミングで持とうともしなかった。その理由は何なのだろうと。本人を直撃したところで、「そお?」ととぼけそうなので、時間をかけて考えることにしました。どれだけ嫌な思いをしても、いい事に目を向ける、その姿勢に心からの敬意を払いたいです。先生が見えている世界は、何色なのだろうか。
自分の辛さを遠くに飛ばす為にも、何かに熱中しようと、それはきっと私にとって野球であり、スポーツ。ひとつのことに熱狂していると、ずぶずぶっと沈んでしまわないような気がして。去年の夏休み、激アツの日に息子と神宮球場へ行ってきました。縁日のイベントで盛り上がったものの、試合が始まる頃にはどっと体が重くなり困惑。そんな時、息子の一席空いた隣で、ご年配の随分年季の入ったヤクルトファンのおっちゃん一人を見かけました。美味しそうにビールを飲み、売り子のお姉さんに話しかけたかと思うと、すぐ後ろの席で立って応援しているもう一人のおっちゃんと談笑。その方も、一人で応援に来ていて、すっかり顔なじみになった経過が伝わってきました。一人で来たのに寂しくなくて、ここに来たら誰かに会える、一緒に応援できる仲間がいる、そうやって歳を重ねてきた方達なのだろうと、全然知らない方からエネルギーを分けてもらえたようでした。一人なんだけど、一人じゃない。そう思えた時、何かが変わるのかも。そんなミラクル、素敵じゃない?