音が記憶を辿る

今日は、朝から電車に乗る機会があり、通勤ラッシュの中、駅構内で待っていたら、なぜか3.11後のことを思い出しました。

電力を抑えるために電車の本数が減り、色々な気持ちを抱えながら大学図書館に向かうと、本の整理を手伝いに来てくれたのは、入試課でとても感じのいい10歳ぐらい上の女性の方でした。いつも仲良くさせてもらっていて、配架の方法を伝えている時に、そっと話してくれました。「あなたにだから話すんだけどね、ここの大学に受かった東北の学生さんが、入学を取り消してほしいと連絡をくれたの。」その話を聞き、言葉に詰まり、涙が溢れそうになり、それでも伝えました。「大学側は、大学費用のこと、なんとかならないんですか?」と。すると、胸を傷めながら言葉を繋いでくれました。「費用面については、可能な限りこちらでは待ちたいと伝えたんだけど、本人の強い意志で、入学は取り消すことになったの。具体的なことは聞かなかったけど、ご家族に何かあったのだと思ってる。なんの力にもなれなくて、なんだか情けないよ。落ち着いたら、関東には来られなくても、地元でもう一度頑張ってほしいね。」目を潤ませながら話してくれた入試課の方は、とても情が深い人で、その目を見ながら私も一緒に泣きたくなりました。その学生さんは、一つの資格を取る為に、自分の夢がはっきりした上で、受験をしてくれました。どうか、諦めないでほしい。その願いは、二人とも同じでした。今、どうしているのだろう。幸せに暮らしていますように。心から、笑っていられていますように。そして、一人の学生さんを想い、心を傷めていた入試課の方の涙を、私自身が忘れないでいる。

最近、移動中も音楽を聴こうと思い、久しぶりにその当時使っていた小さいWALKMANを引っ張り出してきました。すると、聴こえてきたのは、CHEMISTRYの『約束の場所』(作詞・作曲:槇原敬之)という懐かしい曲。その当時にもがいていたことも、それでも未来をみようとしていたことも、一気に蘇り、なんとも言えない嬉しい気持ちで溢れました。

まだまだ息子が5か月ぐらいの頃、毎晩まともに睡眠が取れない中で、何とか自分を取り戻そうと駅近のスタバまで、ベビーカーでゴロゴロ。ようやくたどり着き、ソファ席に座り、揺れで心地よく眠ってくれた息子の寝顔に安堵し、ほっとしたのも束の間、近くにいた高校生の男女4人がこちらの様子を伺っていて、思わず話しかけてみると、1人の男子高校生がひと言。「マジ可愛いんですけど。」あ~、もちろん私ではなく赤ちゃんねって、一緒に笑えてきて。「起きるとちび怪獣みたいだよ。」そう話すと、「いや~、いいっすね。お母さんは大変なんだろうけど、見ている方は癒されます。」随分年の離れた高校生君達に、なんだか私の方が励まされてしまい、スタバの音楽が全く耳に入ってこなくても、弾けた声が本当に心地よくて。話すと、ちゃんと親しみを込めて答えてくれて、外に出てきて良かったなと思わせてくれた、温かいひとときでした。

別れ際、「ありがとうございました。」と皆が会釈。大変な時に、話をしてくれてありがとう、赤ちゃんを見せてくれてありがとう。沢山の気持ちを込めてくれた彼らに、「私の方こそありがとうね。また今日から頑張ります。」そう伝えると、ほっとした笑顔を見せてくれてバイバイ。

音楽そっちのけで笑い合った時間までも、活力に変えていく。そして、涙をぐっと堪えたあの図書館での二人の時間も。