今年の運動会はあるのだろうかと色んな気持ちの中で受け取った学校からのプリント。半日の開催、そして、さらに前半後半に分けるという学校側の最大限の配慮に胸が熱くなりました。一つの行事を、そこに携わる全ての方を守ろうとする姿勢に、学校教育の真の姿を見せてもらったようで、いつもと違うからこそ感じられる沢山の想いを、吸収できたらと願わずにはいられませんでした。
予定していた土曜日は、まさかの台風で延期に。そして、平日の開催で、保護者は原則一人だけ、前半後半入れ替え制でできるだけ密にはならないように、何もかもが変化した運動会当日の朝を迎えました。朝早くに起き、息子は体操着に着替え、慌ただしく準備をして、お見送り。「お母さんは役員の仕事で、前半も学校に行くから後で会おうね。後半の競技は見られるから見つけるよ。いってらっしゃい。」「うん、後でね。」そう言ってバイバイ。腕章を付けて、帽子を被り、マスクをして自転車で学校へ。本部役員の方が、大きなプラカードを作ってくださったので、それを持ち、来校者の方にご挨拶をする担当に。こんな時なので、大声を出さなくてもいいようにという配慮に感謝。『駐輪場はこちらへ』という手の矢印マークがこんな時は温かい。通過する一人一人に挨拶をしていると、どれだけの方が「お疲れさまです。」と言ってくださったことか。校長先生、教頭先生、沢山の役員さんや、保護者の方達、給食センターの運転手さん、ボランティアで毎日子供達を誘導してくださる男性の方。こういった角度から学校に携われることの喜びを感じ、時代が変わっても、人の心はそのままでいてほしいなと優しさを沢山の人達からもらったようでした。
最初の準備体操は、全校児童合同。同じ役員の3人の子供を持つお母さんに、ぜひ見に行ってきてくださいと伝えると遠慮されてしまいました。「3人もいると、同時に見るなんてほぼ不可能で、平等でいたいから大丈夫。ありがとう。」1人の子供を持つ私にとって学びが多く、はっとなりながらもそのお母さんの深い愛に胸がいっぱいになりました。「昨晩なんてね、息子が急にメガネを壊してしまって大騒動。でもなんとか修理出来てほっとしたの。イベントの前日ぐらい大人しくしていようよって大人は思うのに、子供ってお構いなしよね~。」と笑わせてくれて。いいお母さん、会わなくても子供達が沢山の愛をもらっていることを感じられる、嬉しいひとときでした。
そして、短時間だけ持ち場を離れ、体操が終わった息子が教室に入っていく姿が見えたので、手を振ると小さく振り返してくれました。いい一日になりますように。
その後、後半担当の方と交代をし、いよいよ2年生の競技へ。忍者の格好をして、飛び石と一本橋を越え、担任の先生達が本気で作ってくれた巨大な蛇とカエルを、大きな球を投げてやっつけ、戻ってきて交代というもの。その作品の出来栄えに競技そっちのけで見入ってしまいそうでした。何時間かかったの?たった半日の運動会、その一競技の為に、子供達の思い出に残るようにと時間を惜しまず作り上げてくれた先生達の想いに泣きそうになりました。残るよ、何年経ってもきっと彼らの心の中に。その時だけじゃないんだ、純粋だからこそ残るものもあるような気がして、苦手なビデオを片手に、一生懸命走り、白い蛇に本気で球をぶつける息子を見て、どうかその一瞬を忘れないでいてほしいなと願いました。「最後はね、みんなで白い部分を貼ったの。」嬉しそうに話してくれた彼の笑顔を思い出し、ビデオを持つ手が震えました。世界に一つだけの白い蛇、いいじゃない。そして、忍者姿の小さな男の子姿も格好いいよ。同じ忍者の格好をしていた担任の先生、そのまま放送席まで走り、アナウンスをしてくれました。もしかしちゃって、一日忍者でいるつもり?!
二つ目の競技、50m走が呆気なく終わり、息子に手を振って、控え席の様子を後ろで見ていようと思ったら、選抜のリレーに何やら呼ばれている様子。あれ?補欠って言っていたよね?と思っていると、はちまきを渡され、他の学年の子達と並び始めました。見逃さないで良かったと安堵していたのも束の間、並び順を見ていると第一走者ではないか!慌てて、また下手なビデオを取り出し、ピストルと同時に撮り始めたものの、あまりにも一生懸命に走る息子を見て、岐阜の小学校にいた自分と重なり、涙でぼやけてしまいました。5年生の運動会で、足の速さを買われ、リレーのアンカーに。でも、何度練習をやっても前の走者の子達がなかなか抜かせず、いつも最下位でバトンを渡され、しかもぶっちぎりで離されていたので、自分の足をそれほど生かせないまま4位でゴールしていました。運動会当日、本当にたまたま前に走った子達のレースで転倒が相次ぎ、まさかの1位でバトンが渡され、それだけでなんだか堪らない気持ちに。来た当初は転校生扱いをされ、“転校生”という言葉がとても苦手で、そんなレッテルを貼られるのが嫌でした。でも、段々打ち解け少しずつ壁がなくなり、クラスのみんなが本気で「S、頑張れ!」と叫んでくれている声が聞こえた時、もう転校生じゃないんだと思えたら、走りながら涙が出てきそうで、1位で両手を上げてテープを切ると、みんなが本気で喜んでくれて、頑張って良かったなと、神様いてくれたんだなと思うと溢れそうになりました。もうこれで、みんなの一員。
そんな想いが、息子の走りと共に一気に駆け抜け、動画はブレブレ。気が付くと次の走者にバトンをパスしている息子の姿が見え、今の子達速かったね~と隣のお母さん達が話してくれていて、子供からもらう計り知れない力を目の当たりにして、感無量でした。
そしてフィナーレ。最後のトリを飾るのは、6年生の旗の演技。黄色の旗を使ってくれたのは、こんな時期に、見てくれる人達の気持ちを明るくさせる為。その色を選んでくれた先生達の気持ちを感じました。一緒に朝の役員の仕事をやってくれた6年生のお母さんが伝えてくれて。「今年は、練習時間もなかなかなくて大変だったみたい。」そんな言葉が頭を過り、短い時間の中で、堂々と魅せる演技をしてくれた6年生の姿に、凝縮された時間だからこそ、そこに心も込められるのだということを教えてもらったようでした。その気持ちを持って、いい中学生になってね。
閉会式。三つの拍手をお願いした校長先生の言葉が、今年は特に沁みました。頑張った子供達へ向けて、協力してくれた保護者の方へ、そして、イレギュラーの状態でここまでやり遂げてくれた先生達への労いと感謝の気持ちを込めて。こんなに温かい拍手、聞いたことがあっただろうか。開催できたことに、どれだけの意味があり、価値があり、時間の長さではなく、そこに詰め込まれた想いを肌で感じさせてもらった、優しい運動会でした。
同じ役員の仲良しのKちゃんと、お片づけを先生達と行い、本日のお仕事終了。疲れたけどほっとしたね、帰宅しながらお決まりの穏やかな慰労会。何年か経った時、そう言えばあの時の運動会は半日だったね、なんて一緒に思い出すんだろうな。同じ時を生き、共有している喜び。
体操服のまま給食を食べ、5時間目もしっかりとやってきた息子が帰宅。連絡帳を見ると、持ち物には『元気』と書かれていて、先生らしいなと、優しい気持ちと共に笑ってしまいました。「明日、元気を持っていかないといけないよ。」「持っていかなくていいよ。だって、学校で元気をもらっているから。」一体どれだけのものを、こんなに小さな心に先生は入れてくれているのだろう。
選抜リレーの動画がブレていて、息子からは大ブーイング。その理由は、いつか気づく時がくるのかも。どうか、今日という日を忘れないで。