貴重な一年

新年度が始まり、息子もついに6年生。まだランドセルが大きく見えた入学式からもう5年が経ち、最終学年かと思うと感慨深いものがありました。始業式は雨、傘を差して学区内まで送り届けバイバイ。背が伸びたな、1日1日を大切にしようと思った帰り道。そして、いつもの公園までお迎えに行くと伝えてくれました。「担任の先生ね、若い男の先生だった!」それはそれは、新しいご縁が楽しみだねと二人でわいわい。そして、隣のクラスは4、5年生で担任をしてくれた広島ファンの先生でした。クラスは離れてしまったけど、卒業式に先生を見かけて助けられた日々が頭の中で駆け巡るんだろうな。細く長く続くご縁にも感謝。さあ、どんな一年が待っているのだろう。

春なので、何か新しいことを始めようと思い、以前に一度だけ行ったシェアオフィスの会員になりました。と言っても、在宅が基本で外に出たくなった時にふらっと利用できたらいいなと。春休み、息子が友達と遊び行ってくれたタイミングでパソコンを持って出向くことに。すると、知っている人はもちろんいなくて、ブース席に座りました。目の前は壁、この場所に来る時は自分とじっくり向き合う時間になりそうです。息子が苦手な算数、予習気味にやっておいたら授業中に不安になることも減るのではないかと一緒に学んだ春休み。やはり、点と点を頭の中で繋げて解釈することがウィークポイントなのだと、自分自身にも当てはまるのでその困難さがよく分かり、彼の歩調を大事にしようと思いました。そんな時、これまたどうでもいいことを思い出して。高校2年の時、体育の教員であり、野球部の監督でもあった30代の担任。最初の挨拶で先生の情報は頭に入っていたので、休み時間に話を聞いてもらうことに。私は中日ファンで、与田投手をずっと応援していたと。すると笑いながらわーわー言っているこちらの話を聞き、野球談義で盛り上がりました。その翌年、野球部は甲子園予選で勝ち上がり、応援に行ったグラウンドでユニフォームを着た先生を見て、はっとなって。先生、野球部の監督だったんだ!情報として知っていた、だからプロ野球の話に華が咲いた、でも監督という肩書がどこかでぼんやりしていて、ユニフォームを着た先生を見てようやく深く繋がっていきました。高校時代は茶道部、茶室は教室の廊下を突き抜けた先にあったので、外に出ることはありませんでした。動線の中に野球部のグラウンドがあってくれたら監督を目にして、どうやったらレフト前ヒットが打てるようになるのかもっと聞けたんだけどなと今さら小さな後悔。息子が、図形が得意なこともちょっと納得。視覚的に分かりやすい方が、あっさり理解が進むんだよ~。

桜が満開の今日、柔らかい風を感じていると、一枚の写真を思い出しました。それは、中学3年の時のものでした。陸上部春の大会では惨敗、この悔しさを秋の長距離大会でぶつけようと週末も休まないで走り続けました。その結果、両足の肉離れで補欠にも選ばれず。ユニフォームに袖を通すことなく大会は終わりました。その後、街中をその時専用のユニフォームで聖火リレーのようなことをするという不思議なイベントがあり、選ばれることに。陸上部のメンバーが、男女問わず私を推してくれて嬉しくなりました。そして、秋の大会でアンカーを務めた友達、陸上部キャプテンの男子、仲の良かったソフトボール部捕手の友達も参加することに。配布されたユニフォームを見て、ちょっとださいなとみんなで爆笑。そして秋も深まり、ノースリーブと短パンはちょっと寒いなと待機時間にぶるぶる震え、でもそんな輪があたたかくて。そして、順番が来て道路を走りだしました。誰かと競うこともなく、沿道にいた方達に微笑みながら走った時間。その先に、担任の50代の女の先生が笑顔で見守ってくれていました。受験勉強よりも、秋の大会を目標にしてきた、両方頑張るなんてそんな器用じゃないことを知っていた先生は、後悔のない道を選ばせてくれていました。その私が怪我で故障、ジャージを着てやや俯きながら大会を見守った姿を知っていて。そんな先生が、イベントで笑いながら楽しそうに仲間と走る姿を、目に涙を溜めて見守ってくれていて、結果が全てじゃないなと思いました。その道には進めなくても、こんな別の形で自分の努力を嬉しそうに見てくれる人がいる、仲間がいる、今感じている気持ちを忘れたらいけないなと。その後、走り終えたメンバーでカシャリ。その写真はきっともうどこかにいってしまったのに、春の風を感じていたら頭の中でふわっとその一枚が浮かび上がってきました。「Sちゃんとこうしてまた一緒に走れて良かった!」と言ってくれた陸上部のキャプテン、そんな気持ちをありがとう。お互い練習に明け暮れ、接骨院で何度も偶然会った。その時二人で施術を受けながら仰向けになり、天井を見ながら沢山語り合った時間。こんなにも優しいひとときだったのだと改めて知る。

息子と行ったお花見、周りはご家族連れが多く、いろんな気持ちが駆け巡りました。その時ふとオーストラリアへ短期留学した時、一人で行ったゴールドコーストを思い出して。プールに行った時はニュージーランド人の女性が話しかけてくれて、これからバーベキューをするから一緒にどうかと誘ってくれました。街中を歩いていたら、オープンカフェで楽しそうに飲んでいる男性二人が「Come with me!」と笑って声をかけてくれました。一人で入ったカフェで、男性店員さんがナイススマイルで写真に写ってくれました。一人で行ったのに、一人じゃなくて。そんな過程が自分を少しだけ強くしてくれたのかな、人の優しさが詰まっているから辛くなった時も頑張れるのかな、そう思っていると息子がひと言。「最高のお花見だね!」彼が気を使ってくれた言葉であることが分かりました。それも込みで、ありがとうとこの時間を楽しもうよ。一年経った来年の春、息子の卒業式にはどれだけの写真が頭を過るだろう。沢山の映像も声も、きっとメモリでいっぱい。だから、ここに残しておく。