タイトルを被らないようにするだけでも意外と苦戦、書けば書くほど、ハードルは上がっていくのかな。でもね、薬物療法は3か月を切ったよ。治療が終わって、髪の毛がぼわっと立って金髪になり、スーパーさくらいろになったらどうしようと今からワクワクしています。体調は、前のようには戻らないかもしれない、それでも今ある姿を素直に伝え続けようと思っています。そんな私の今日を読んでくださる皆さんにもエールを。
中学3年の担任は、50代の国語の女の先生でした。なんて言うのかな、“ザ中学教員”みたいなイメージの先生だった訳で。1学年が3クラスで規模もそこまで大きくなかったので、3年間国語の授業はその先生が担当になってくれました。そのおかげで、基礎である国語力が身に付いたのかなと今でも思っています。出身の愛知県は、中日新聞が主流。新聞を全部読むのは大変、でも、コラムである『中日春秋』を読むのはそんなに苦にならないはず。決まった枠の中で伝えたいことを的確に伝えるとはどういうことなのか、とても勉強になるから、朝の忙しい時間でも読む習慣ができるといいですねというのが先生の口癖でした。私も、なんとなく目を通すようになり、あの文字数で届けたいことを沁み込むように伝えてくれるってすごいなと、中学生ながらに思っていました。そして、人の前に立ち話すことで、面接の練習にもなるし、自分の考えを伝えることの大切さを学べるからということで、朝の会に順番で一人ずつ日常のなんでもない話をすることに。それは、3年全部のクラスで行われていたのですが、随分フランクで、本当に皆がどうでもいいことを話すので、朝から笑いが絶えなかったそんな毎日でした。無口な女の子も、クールな男の子も一生懸命話し、それをみんな心のどこかで頑張れって応援しながら聞く、そういった優しい時間までもが、今の私を作ってくれたのかもしれません。
そんな仲のいい3年生は、体育祭も自分達で盛り上げようと奮闘。学年を超えた縦割りの色分けされたブロック3つを作り、なぜか副ブロック長に推されてしまいました。テニス部のキャプテンが、生徒会の副会長でもあり頑張っていたので、私も断る理由が見つからず引き受けることに。そして、全校女子が踊るダンスを彼女が考えてくれたので、覚える為に何人かのメンバーが教室に集まりました。中から流れてきたのは、まさかの西城秀樹さんの『ヤングマン』。本気で踊っているキャプテンを見つけ、思わず笑ってしまいました。一区切りがつき、「本当にヤングマンを踊るの?」とこちらが聞くと、「そう。」という返事が。「YMCA?」「そうだよ。もうこれしかない!」と言われるので、爆笑してしまって。「私達が振り付けや隊形の位置を覚えて、後輩に教えるから、今から振り付け覚えてね。」と展開の早さに慌てながらも、本気で5人ぐらいの女子が確認し合いながら踊りました。その後、全校女子の練習で、みんなに教えながら少しずつ様になっていく状態に胸が熱くなって。その時、体育のギターが大好きな先生がどれだけ誇らしい表情で見ていてくれたことか。自分達で作り上げろ!と言われたから、キャプテンを筆頭に本当に自分達で作り上げるよ。
いよいよ、体育祭当日がやってきました。その日は曇り。どんよりとした空の下、開会式が始まりました。みんなが整列する斜め後ろに構え、手作りの弓矢を校舎の屋上に向けたキャプテン。矢が軽く飛んだと同時に、屋上にいた生徒会の男子が、これまた手作りの華のような火を大きな器に入れて、聖火のような演出にみんなの歓声が上がりました。そんな華やかな開会式の数時間後、生憎の雨が降ってしまい、平日に延期に。少し落ち込んだ私達を思ってくれたのか、仕切り直しになった日は見事な快晴でした。気持ちのいい青空の下、全校女子が集まったヤングマンは、体育祭の華に。みんなの笑顔が嬉しくて、踊りながら泣きそうになりました。このイベントが終われば、前期の生徒会は後輩にバトンされ、3年生は受験モードへ。それを思うと、今日という日が大きな分岐点のようにも思え、なにもかも噛み締めたいと思いました。大きな拍手に包まれたダンスを終え、一番最後はリレー。色分けされた自分達のブロック席で応援していた女子みんなを立たせ、ぎりぎりまで前に出て横一線に並んでもらいました。「泣いても笑っても最後の競技、女子の可愛らしさを出そう!みんなで肩を組んで声援を送ろう!」そう言うと、みんなが気持ちよく並んで精一杯の応援をしてくれました。体育祭は、日をまたいだものの大成功。片づけをしながら、同じ色のブロック長が寄ってきてくれて。「女子の応援良かった。一緒にできて嬉しかったよ。いい体育祭だったな。」「こちらこそありがとう。なんだかちょっと寂しいね。」そう言うと、そっと微笑んでくれました。同じ気持ちでいてくれた。
随分と時が過ぎ、成人式の受付で「Sちゃん!」と声をかけてくれたのは、テニス部のキャプテンでした。お互い振袖姿で、久しぶりの再会に何とも言えない気持ちになって。「テニスコートのバイトでおじさんには会っていたの。お客さんとして来てくれていてね。」「ああ!よく話してくれていたのはSちゃんだったんだね!」とひとしきり大盛り上がり。実は、彼女は幼稚園の時の親友でした。二人の女の子に「Sちゃんはどっちが好きなの?」と聞かれた一人。年齢と共に少しずつ距離はできたものの、私の心の中にはいつも幼稚園の制服を着た仲良しの彼女がいました。中学の制服を着て、テニスのユニフォームを着て、一緒にヤングマンを踊っていても、女の子三人でつるんでいた幼稚園の思い出は私の宝物で、振袖姿で再会した時、もしかしたら彼女も同じことを思ってくれていたんじゃないかとこみ上げてきて。ダンスが好きと言った友達のハートに火が消えることはないだろう。だから、私も今の気持ちを燃やすことにする。