絶妙な相づち

緊急事態宣言中、主治医の所へ通院があったので、両親宅に息子を預け車で行ってきました。入り口近くでは、問診と検温。厳戒態勢の中で、その対応がとても有難く、安心と共に院内へ入りました。いつもと少し違う気持ちで先生と対面すると、ほろりとくるものがあって。電話診療では得られない包容力のような温かさを感じ、ほっとしました。「最近はどう?こんな事態だから、そういったことも含めて。」絶妙な話し方にすっかり解れていき、数か月の不調を伝えました。おそらく女性ホルモンのバランスを崩しているということを言われ、納得。自覚があっただけに、先生と答え合わせができるとなぜか助けられた気持ちになりました。「そう言えばね、もう一か所の病院でも非常勤で働くことになって、緊急の時などはそちらに来てもいいよ。」一体どれだけの道を作ってくれるんだと笑えてきて。「ありがとうございます。最近の不調は、短期間だけのものだと思っています。」そう伝えると、0コンマ何秒あったかと思われる間を挟み、優しく頷いてくれました。完全に寄りかかろうとしない、あなたはそういう患者さんだと知っているから、応援もしたくなるし、心配にもなる。顔がそう言っていました。「先生も、感染しないように気を付けてくださいね。」そう言って笑顔でお別れ。次の患者さんを呼ぶまでの数秒、一つ息をして、そっと微笑んでくれているだろうか。

そして、自宅に帰り、家事をこなし、担任の先生からの電話を待っていました。学校再開に向けて、児童達の様子を聞きたいという学校メールを頂いていたので、こちらの都合を予めオンライン教材のメッセージで伝え、早めに夕飯準備を終えたまさにそのタイミングでコール。やや緊張しながら取ると、とても穏やかな口調で話し始めてくださり、再開時期についての具体的な内容を教えてもらった時、光が見えたと感じ、ちょっと声が震えました。「親も先生達も同じ気持ちなんじゃないかと思うんです。出口が見えるかもしれないって。どこまで頑張ればいいんだろうって思っていたので、こうやってお電話を頂けて嬉しいです。私達親って、先生の何気ないひと言に救われるんだなって実感しました。」正直にそう伝えると、感激してくれた先生が心を込めながら頷き、精いっぱいの気持ちを届けてくれました。「この3か月という休校の中で、子供達もストレスを抱え、そして支えてくれた親御さん達のストレスや不安感もこちらが受け止め、和らいでいってくれることが一番だと思っています。担任とお母さんは、二人三脚ですよね。学校が始まったら始まったで、別の不安材料が出てくるかと思います。だから、何かあればすぐにご連絡ください。」どうだろう、もしかしたら30歳前後の若い男の先生。その先生に、ここまで気持ちを汲んでもらい、この感動は、学校が通常通りにあったら得られないものだったかもしれないと思いました。私、先生達の裏側の苦悩を、不思議な角度から知っています。「R君、お母さんに勉強を教えてもらえて、幸せだなって思います。」そんなこと言ってもらえるとは、思っていなかったよ。

その後、嬉しい余韻と共に電話を終えると、自宅のピンポンが。モニターに映る父と息子を見て、この生活ももうすぐ終わるのだと思いました。あと少し。「お父さん、今日はありがとう。夕飯のおかず、良かったら食べてね。」そう言ってタッパーを渡すと、お礼を言われながら伝えてくれました。「わしは何もしとらん。ずっと相手をしていたのは母ちゃんの方だ。」いかにも父らしい返答だと思いました。自分をよく見せようとはしない、そして、色々面倒な人だけどお母さんなりに頑張っているからそこは認めてやってくれ、そう言われているようでした。息子と二人になった途端、「今度はいつおばあちゃんに会える?」と聞かれ、胸がいっぱいに。さあ、なんて答えようか。いつでも会えるよ。困った人だけど、それ以上に素直な人だと知っているから、もう恐れない。

「マリオに出てくるハンマーブロスではなく、プクプクぐらいにお母さんのことを思えたら、Sもだいぶ楽になるだろうね。そこまで、頑張りなさい。」・・・あはっ。姉らしい例えに救われた日が、そろそろ来たのかも。自分の気持ち一つで、見え方や感じ方が変わるのだと教えてくれた人。