溢れた日

1月16日、学校から帰ってきた息子が、思いがけないことを伝えてきました。「明日ね、随分前に大きな地震があった日なんでしょ。先生が、授業で話してくれたの。ものすごい沢山の人が大変な思いをしたって。ママはその時どうしていたの?」「お母さんね、その時中学3年生だったの。朝早くに地震を感じて飛び起きたの。まだ揺れの小さな地域にいたから無事だったけど、大きな揺れがあった地域は本当に大変だったのよ。」「それって何時?」「朝の6時だよ。」「違うよ、5時だよ。先生がそう言っていたもん。明日になったらニュースでやるって。ボク、その映像を観たい。」
コイツ、しっかり先生の話を聞いていたな。そして、随分前にK君が話してくれた言葉が蘇りました。「お前さ、いつか結婚して子供を産んだら、お前とそっくりな女の子が生まれるぞ。同じような感性を持った子に、はっとさせられる時がくると思う。Sの人生だから、結婚するか子供を持つかはもちろんお前の自由だけど、もし子供ができたら間違いなくお前と同じような深いヤツになる。断言してもいい。」K君の勘は半分当たっていたな。私にそっくりな“男の子”だったよ。アイツはどうして私の未来が見えていたのだろう。「お前の感性って、なんかずば抜けているんだよ。どうしてそこまで考えられるんだろうって、Sのセンサーってどうなっているんだろうって、コイツただもんじゃねえなって思う時がある。そいつが産んだ子供は、ものすごいものをお母さんからもらうんだよ。」確かそんなことを言われたな。

17日の朝、起きてすぐに自分からテレビのチャンネルを点けた息子。「ボクが観たいニュースがやっていない。」とボケボケしながらもしっかり覚えていて驚きました。まだその時間はやっていないかもしれないねと説明して、少し複雑な気持ちで見送った朝。震災の映像を観て、小さな心を痛めることは分かるので、言葉だけの説明にしようか思案中です。「おうち、燃えちゃったの?どれだけひどいことになっていたの?」一体担任の先生はどんな想いで子供達に話してくれたのだろうと思うと、それだけで胸がいっぱいでした。25年前の今日、先生も教職に就いてすぐくらいの頃だったのかもしれないなと。

そんな色々な気持ちを抱えながらシェアオフィスに着くと、最近お会いできていなかった事務局長さんに挨拶をすることができ、軽く談笑をさせてもらいました。「僕ね、そこの校長先生と仲が良くて、“オヤジの会”を作ろうよ!なんて声をかけているんだよ。でも先生達、結構忙しくてね。」ははっ、なんだか楽しそうですね!って笑い合い、朝からの少し沈んだ気持ちをふわっと優しく包んでくれたようで、なんでもないことで笑えるっていいなとすっかり感慨にふけった仕事前。
そして、ラガーマンのTさんにもお会いできたので、話したかったことを一気にまくしたてると、私に負けない温度と熱量で、一緒に盛り上がってくれました。待ってましたと言わんばかりに、受付に企業ラグビーに関する冊子を置いておいてくださり、良かったらもらってくださいと渡してくれて。「なんだったら切り抜いてもらってもいいので。」なんだかもう、私には何でもありのノリですね!と思いながら、喜んで頂きました。「もう僕、こんなに好きになってもらえて嬉しいです~。」言葉ではなく、行間から伝わるラグビー愛、血も筋肉も全て、きっとラグビーでできているんですね。もちろん、心もね。
「Tさん、現役復帰は無理ですか?」「いや~、今やったら間違いなく怪我しますよ。」「それじゃあ、いずれ監督に。」「いいっすね。やっぱり学生さんを教えたいです。小中高、どれでもいいです。」聞きましたよ。そして忘れずに記しておく。Tさんの夢をそっと追いかけよう。こんな日は、特にそんなことを願わずにはいられない。京都出身の彼もきっと、内に秘めているものはあるはず。