そういえば、息子が風邪を引き、気圧の変動も大きく自分に全然余裕がなかった時、ラーメンが食べたいと言ってきたので、昼食に作ろうと慌てていたどんくさいエピソードを思い出しました。私の分は残っていた焼きそばを消費したくて、フライパンでささっと炒め、隣のコンロでみそラーメンの準備を始めることに。彼が暇そうにしていたので、手伝ってくれる?と声をかけ、指示を出そうとしながらフライパンに粉を入れた途端叫んでしまって。「焼きそばにみそラーメンの粉を入れちゃった!」と自分のケアレスミスに本気で落ち込んでしまいました。やっちまったな!「お母さん、それなりに長く生きてきたけどこんな凡ミス初めてだ。」と凹んでいると、「意外と美味しいかもしれないよ。」と慰めてくれて。気持ちは有難いけど、どうしても焼きそばを食べたいんだよと思いながら、やけくそになって残っていた焼きそばの粉を追加してみました。味見をすると案の定しょっぱくなっていて。それでも、てんこ盛りのキャベツを投入し、なんとか食べられる味になったつもりで、ほっ。息子のラーメンは、まだ自宅にあったみそラーメンの粉を入れ、通常の味に。塩分摂りすぎ焼きそばを食べていると、息子が伝えてくれました。「ママ、普段は健康的な物ばかり食べているから、たまにはいいんじゃない?」フォローをどうもありがとうと笑うしかなかった優しいランチタイムでした。こんなでよく大学図書館で働いていたな。どれだけ頭痛があっても、程よい緊張感の中にいたからなんとかなっていたことを改めて思い出しました。睡眠もまともに取れず今日はだめな日だと思いながら出勤した日、今私に話しかけないでくださいオーラを炸裂し、パソコンの前に座ってひたすらカタカタと自分の仕事に集中していました。すると自席の内線電話がかかり、ピクッと反応して咄嗟に取ると、近くで年の近い男性職員が笑いを堪えていて。何で笑っているのか分かっていたので、電話を切り、伝えることに。「どれだけ集中していても、電話の音だけ聞こえるんです~。」「取るの、早くないっすか。」そう言って一緒に笑ってくれました。しんどい中にもあった和やかな時間に、こうやって助けられてきたんだ。
息子の中学校生活、新しい環境に入るとまた慣れるまでにいろんな反動があるだろうなと構え、最近ようやくリズムが分かってきたのか少し落ち着いてくれました。それに合わせ、私自身にも少しのホールができたのか随分懐かしいことが思い出されて。それは、アメリカ育ちの元彼と付き合っていた20代の頃で、彼の部下と3人で飲んだ時のことでした。人生を仕事に捧げていると言っても過言ではない彼は、私といる時も社内の話をしてくれたので、部下の男性はよく知っていて、初めてお会いしても初対面とは思えず想像通りのおっとりとした方でした。穏やかな時間の中、お酒が入り今日がチャンスだと思ったのか部下の男性が私に伝えてくれて。「○○さん、いつも深夜まで働いて、先に帰りづらいんですよ~。僕、新婚で、小さな子供もいるのでもう少し早く帰りたいんですけど、上司より先には帰れなくて。Sさんも寂しがっていると思うし、なんとか言ってやってくださいよ~。」これはもう笑うしかない。「いやあ、気にしないで帰っていいよって言ってるんだよ。」と笑いながら言っている彼。「あのね、これはもしかしたら日本文化かもしれないし、社風にもよるのかもしれないけど、いくら上司が帰っていいよって伝えても、忙しくしている姿を見たら帰りづらかったりするよ。」ほらねと思いながら、彼に言ってみる。この件についてはすでに、何度も喧嘩済みなんだよなと思いながら、部下の方が私に本音を話してくれるので、気持ちが分かるだけに微笑みながら聞いていました。行間から、表情から、そしてトーンから人柄が滲み出ていて。もう少し早く帰りたいっていうだけじゃない、あそこまで働いていたら心配にもなりますよ、Sさんも同じような気持ちですよね。この思いは、あの時の彼には届かなかったんだよな。だからこそ、部下の方の優しさが嬉しかった。心配していたのは、私だけじゃなかったんだなと。「S、俺の上司が血尿出しちゃったんだよ。」そんな話を、何気ない会話の中でしてきた彼。負の連鎖が起きてしまうかもしれない、とんでもないストレスの中にいるのではないか、でも会社は彼の聖域、踏み込み過ぎてはいけない。でもね、心が壊れてしまいそうになる怖さを知っているんだよ。壊れた後、修復するのがどれだけ難しいかも、自分の家族を見てきたから分かる。本当にもういろんな感情が渦巻き、伝えたいことが一気に押し寄せるので、冷静に話すことも難しく、時に泣きながら時に怒りながら、言い過ぎてしまったことが何度もありました。その度にお互いが辛かった、そのことははっきり覚えていて。随分時が経ち、タイに赴任し、そこからアメリカに戻っていると思っていたら、横浜に戻りトップに立っていたことが分かったのは少し前のこと。肩の力がやや抜け、穏やかな表情をしていた写真を見て、いろんなことがあったねってなんだか感無量でした。別れ際に、これだけは約束してほしいと伝えました。「どんなことがあっても、体にだけは気を付けて。」それはね、心も守ってねっていう意味でもあって。俺はタフだから、それが彼の口癖でした。だからこそ、あの頃にこちらの言葉は届かなかった、引退してからものすごいタイムラグを経て、ふとした瞬間に伝わってくれるのかもしれないな。
息子と私が時々利用する、近くのコンビニ。いつも別々に行く中で、毎回のように接客してくれる元気のいい30代の女性スタッフさんがいました。もしかしたら店長さん?と思うような頻度でお会いしていて。そんな中、たまたま息子と一緒に行く機会があり、店内でわいわいやっていると彼女の頭の上でピコンとランプが点いたように見えて。親子だったんだ~と余程答え合わせができたことが嬉しかったのか、ビッグスマイルで応対してくれました。引っ越してきた時、二人暮らしを不安に思う気持ちを吹き飛ばそうと毎日必死でした。選んだのは自分で、簡単に泣き言を言うものかと。そんな時が過ぎ、ふと力が抜けた時に、実はこんな身近に見守ってくれている人がいたんだなと思うと胸がいっぱいでした。顔を出さない日が続いたら、心配してくれそうなあたたかい店員さん、その笑顔に救われた。渡してくれたものをインプットしてアウトプットする、その好循環をどんな時も大切にしたい。