毎週月曜日に息子が楽しみにしている『ピタゴラスイッチ』(NHK)。お菓子を食べながら、一緒に見るこの時間がとても好きで、この間もぼんやりと見ていたら、トップリーグのラグビー選手達とアルゴリズム体操をやっていて感激してしまいました。しかも、上手い。欧米人の選手もリズム感がよく、何度も子供達の為に練習したんだろうなと思うと、それだけで元気をもらえたようでした。
そして別の日。缶詰の工場で、缶の一個一個にトントン音を叩くと、音の違いで中の状態が分かるという番組内の説明に息子がくぎ付けに。そのことを覚えていたある日、紙コップをいくつも並べ、「この中にみかんちゃん(小さなぬいぐるみ)がいるよ~。ボク叩くから当ててね!」という難易度の高い問題を出されてしまいました。感覚が鋭いということは当たるのではないかとよく分からない闘争心が芽生え、集中力をフル稼働。おもちゃのバチで叩く音を聞き逃さないようにして、微妙な変化を逃すものかと思っていると、一か所だけ違う音が。「これ!」「ブッブー、空でした~。」ああ、所詮こんなもの。そして、次々と外し、ようやく当てたと思ったら、小籠包ちゃん(ぬいぐるみ)と一緒にぎゅうぎゅう詰めに押し込まれている状態で発見。一匹じゃないんかい!!と二人で大笑い。そして息子の方が、正解率が高く、なかなか珍しい夜会を終えて本日の業務終了。この一時間がね、長いんだよ。でも、それが彼の瞼の向こうにある優しい夢に繋がるなら頑張らないと。
去年の豪雨。近くの川が氾濫するかもしれないという時、一通のメールが届きました。『S、大丈夫か?』それは、私に恋愛相談をしてきて、半分喧嘩のような状態で音信不通になった地元の男友達からのものでした。怒りたくて怒ったんじゃない、でも幸せそうに見えないのに心から応援することはできない、それを誰が言うの。私しかいないじゃない。色々な気持ちを抱えて投げた球。それを彼がどう受け止めたのかも分からないまま時が過ぎ、返ってきた球があまりにも優しく、こんな風に何かあっても繋がっていられる人とは縁が切れないのだと思いました。『こちらは大丈夫。ありがとう。また近況でもよかったら聞かせてね。』短いキャッチボールでも、友情の深さが感じられた時。いつかまた、笑って会おう。その時まで格好よく頑張ろう。
その友達が、関東に出張がある度、一人暮らしの私に連絡をし、待ち合わせました。時に東京駅で、時に横浜駅で。「俺さ、前に飛行機の整備士の仕事していただろ。皆が大学受験の時、やりたい仕事が明確で専門学校へ行って、皆よりも早く就職して、やりがいのある仕事に就けた時は本気で嬉しかった。大きな飛行機があってさ、なんだか自分の夢が叶ったんだって。でも、どうしてもそりが合わない先輩がいて、いつか見返そうと思って頑張っていたんだけど、俺、耐えきれなくてさ。だから地元に帰って転職したんだ。だけど、本当はそのことを無茶苦茶後悔していて、どうしてもっと頑張れなかったんだろうって、たった一人のことでやけになって、好きだった仕事を辞めて、情けなく思っている。」ビール片手に、何度その話をしてくれただろう。「整備士だった姿、知ってるよ。私がまだ大学生で姉の出張で横浜に遊びに来た時も会ってくれたじゃない。ネクタイ締めて、緊張感があって、いい感じの疲労感もあって、その姿を見て私も頑張ろうって思ったよ。後悔し続けたら、ずっと辛いまま。その決断が、これで良かったと思えるまでまたゆっくり進んでいこうよ。私なんて、失敗の連続。何が正解かなんて未だに分からない。でも、いい友達を沢山持ったなって、それだけは自信を持って言える。弱さをさらけ出してくれる友達がいてくれると、なんか自分はこのままでいいのかなってそう思わせてくれるよ。」素直に話すと、くしゃっと笑ってくれました。だから、俺達ずっとこうしていられるんだろうな。悔しい思いをしても、聞いてくれるヤツがいる、幸せなことだよな。一つの後悔がビールの泡と共にそっと無くなっていきますように。彼の喉ぼとけを見ながら、そんなことを願ったことがまだ最近のよう。
「一人暮らしの大変さは、経験した人にしか分からない。お前は人に頼る人間じゃない。でも俺は地元を離れて孤独も知った。だから、辛くなったら俺に言え。経験が役に立つこともあるんだよ。」人に助けられるのはこういう時。その気持ちが、とてつもない原動力になるんだよ。それを伝えられる人は、後悔なんて言葉は必要ない。
とりあえずビールで。振り返るよりも、目の前のあわあわのビールを楽しもうよ。