今シーズンもやってきた、応援しているラグビー、ブラックラムズ東京の試合。寒暖差の影響で若干の睡眠不足だったものの、黒いユニを着て息子と家を出ました。見事な快晴に心が躍り、電車に乗ることに。すると、寝不足だったからか、横移動する車内がやはり年表のように思えて。左は過去、そして右は未来だ。過去に一日だけ戻れるとしたらどの日を選ぶだろうと思っていると、たったひとつ浮かんできた日があって。それは、祖父が他界するその時でした。それを思うと、こみ上げそうでした。逆に言えば、その日以外は精一杯歩いて来られたのかなと。そして、10年後の未来、どんなシーンを見逃したくないのか考えてみました。いつか息子が社会に出て、どこかのタイミングで小さく重ねてきたことが頭の中で繋がる日が来る、自分にもこんな力があったんだな、その時感じた内側から溢れ出た表情を見てみたい、そう思って。つま先に少しだけ体重を乗せたら、今を感じました。さあ、光をいっぱい浴びてラグビーの聖地へ行こう。
外苑前の駅に着くと、プログラマーのMさんが待ってくれていて、3人で歩き秩父宮に着きました。Mさんはラムズのシーズンシートを買っているので、自由席の私達と一旦バイバイ。屋根のある席に落ち着き、気持ちのいい空気を吸い込みました。その日は三菱重工相模原ダイナボアーズ戦、席が黒対緑といった色合いになり、観客のみなさんの高ぶりが伝わってきて。その後スタメン発表、15人の名前が呼ばれ、23番までの控え選手も呼ばれ、「24ラムズファミリー」とコールされると、毎回泣きそうになりみんなと歓声で応えました。この瞬間が堪らない。そして、キックオフ。前半に攻防の中トライが決まると、体中から熱が放出されるような感動に包まれ、「ルーカス!!」と叫びました。隣で息子が引いていようがそんなの関係ない。それからももう1トライ決めてくれると、さらに大きな声で叫び、緊急事態宣言明けで声なし応援の日のことが蘇ってきました。トライが決まると、声の代わりに蛇腹折になったTRYの文字を広げるのだけど、マスクをしながらどうしても小さく叫んでしまって。有観客でも人数制限はあり、両隣は空いていました。その時のことを思うと、一つ一つのプレーに感激し、大勢のファンの方達と思いっきり声を上げられる今に胸がいっぱいでした。感情を本気で爆発させることができるスポーツがあったからこそ、自分を保つことができた、やっぱり負の気持ちを分解させてきたんだよと実感することができて。その後も、トライはどんどん決まり33対7でノーサイド。毎年観戦に来ていて、初めて勝ちゲームを目にすることができ、息子と歓喜のハイタッチをしました。それから、ルーカス選手のヒーローインタビューを聞き、選手達がゆっくりグラウンドを一周し挨拶してくれて。全ての時間を味わい、心に留めておきたいなと思っていると、近くまで歩いてくるのが見えたので、もう一度その日残っていた最後の力を振り絞り叫びました。「ルーカス!!!」すると、両手で目一杯手を振るこちらを振り返り、笑顔で手を振り返してくれて。勘違いも甚だしいかもしれないけど、声は届いてくれた、そう思いました。オーストラリアのブリスベン出身の彼、その街にね、20代に短期留学して助けられましたよ。バスの中でも、駅周辺でも、地図を広げているだけで沢山の方が声をかけてくれて。別れ際に握手をしながら伝えてくれた、「It was nice meeting you.」お会いできて良かったです、この言葉ともらった優しさは今でも大事に持っています。背番号『15』を見ながら、そっと届けました。2032年のオリンピックはブリスベン、また沢山の気持ちが溢れ出すんだろうな。
再度Mさんと合流し、息子とグラウンドをバックに写真を撮ってもらいました。あとどれだけ身長が伸びるんだろうね。あとどれだけ一緒に行くスポーツ観戦が待っているのだろう。この“時”が愛おしい。秩父宮の空を仰ぎ、桜に微笑み、一緒に夕飯を食べ、お別れしました。特急電車に二人で乗り込むと急に眠気に襲われて。すると、佐賀の祖母の葬儀後、一人で帰った博多発の新幹線の車内が急に思い出されました。とても静かで柔らかい光に包まれて。驚く程心が穏やかで、今までの苦悩が幻だったかのようにすっと眠りに落ちました。ほっとすると深い眠りになることがある、その日と似たような感覚に包まれ、短時間だけ寝ることができて。はっと目を覚ますと一日中あった頭痛が軽くなっていました。隣ではゲームをやっている息子がいて。佐賀のひいばあちゃんね、脳に病気があって最後はおじいちゃんのこともよく認識できないでいたの。おじいちゃんはそのことを受け入れて時々帰省していた。でもね、葬儀でビデオが流れて、ひいばあちゃんずっと笑顔が素敵で、全然会えていなかったんだけどその笑った表情が昔のままで、それが嬉しかったし、もう会えないんだと思ったら寂しかった。それでも、人の心には残る。だから本当のお別れじゃないんだ。肩の温度が伝わるぐらいの距離にいる息子に、心の中で伝えました。生きることって桜のようだね、優しくて儚くて、切なさもあたたかさもいつも同居しているよう。だから魅了されるのかな。
そんなことを思いながら電車を降りようとすると、席の後ろに座っていた若い男性も同じ駅で降りるのが分かりました。ん?サッカーファンの方?とユニがうっすら見えたので、気になり始めていると、西武ライオンズのファンであることが判明。最後の最後でプロ野球ファンの方に会うのは、こちらが引き寄せているのか?!と笑ってしまいました。千葉までロッテ対西武戦を見に行っていたよう。お互い、空の下で応援お疲れさまだねとそっと背中にエールを送りました。ね、こんな毎日が重なってその人になる。