感動を忘れない

まだ息子が0歳だった頃に、ベビーカーを引いて時々行っていたカフェ。揺れが気持ちよくて寝たタイミングで入ったそのお店で、50代の女性スタッフさん二人が仲良くしてくれました。睡眠不足が続いていること、夜泣きが酷いこと、それでも滅入ってしまわないようにできるだけ外に出ている話をしたら、うちもあったあったと男の子ママの先輩達はいつも和ませてくれて。自分も通ってきた道、それでも本人は大変なのだとよく分かってくださり、一時のことだから頑張ってと応援してもらっていました。

そんな時期は過ぎ、私自身も忙しくなり、すっかり疎遠になっていたので逆に行きづらくなっていたのですが、どうしても気になり勢いで顔を出すと、二人に驚かれ、弾けた笑顔で迎えてくれました。まだ覚えてくれていたことに胸が熱くなりながら、「あの頃、本当に孤独の中で育児をしていたので、話し相手になってもらえて救われていました。ありがとうございました。」そう伝えると、目を潤ませながら喜んでくれて。「私なんてね、長年ここで働いていても昨日もミスしちゃって凹んでいたんだけど、こうやってまた会いに来てくれてこんなに嬉しいことはないですよ。」と。もう1年生になった息子の写真を見せると、時の流れと共に成長を感激してくださり、私もその場で涙が溢れそうでした。カウンターの前で、弱音を吐いた私はもうそこにはいない。それでも思い出すのは、こんな風に温かい気持ちで助けられたのだという人との繋がり。そして、沢山交わした数々の優しい会話。

この間、真剣に見ていたプレミア12の野球世界大会。オーストラリア戦の終盤、1対2で日本が負けている中で見せてくれたのは、日本選手にしかできない野球でした。1塁にヒットで出た選手に変わり代走で送られたのは、周東選手(ソフトバンク)でした。気持ちよく2塁まで盗塁をし、その後さらに3盗(3塁まで盗塁)。世界大会という大舞台で、余裕さえ感じさせる彼の走りにくぎ付けになりました。その後、ツーアウトの状況でまさかのセーフティスクイズ。あれ?今ツーアウトだよね?!と思う間もなく周東選手がホームイン。今まで結構野球を観てきたつもりだったのですが、ツーアウト3塁の場面でこの展開は初めてだったような気がしています。サインプレーではない?もしかしたら選手同士のアイコンタクトで決めに行ったのかもしれないと思うと、何とも言えないチームワークの良さと、スモールベースボールだと言われた日本の野球を世界に見せつけてくれた気がして、嬉しくて堪らなくなりました。そう、これは何より“チームの為に”。バットもグローブも持たずに足で魅せてくれた周東選手は、間違いなくヒーローであり、自分に託された仕事を、仲間を信じて成功させてくれたのだと思います。得意なことを伸ばしていく、なんだか一人の選手に改めて教えてもらったような気がして、野球っていいなと今更ながら思いました。息子の足も、活かされる時がくるだろうか。ここ一番の時、勝負に出て、勇気を出して走れ。結果はどうあれ、温かく迎えてくれる仲間はそこにいるから。

そして、そのグラウンドでJAPANのユニフォームを着て、1塁コーチをやっていたのは、中日で大活躍をした井端コーチでした。巨人へ行き、引退した後どうしているのだろうとずっと思っていた中で、選手として世界大会も経験した井端さんがそこにいてくれて、胸がいっぱいになりました。テレビ画面下のツイッターコメントに、『井端が1塁コーチ、感慨深いな』という文字が見えた時、同じ気持ちでその姿を追いかけてくれている人がいるのだと思うと、抑えきれない感動がこみ上げました。
短期決戦で侍ジャパンが伝えてくれるもの、それは一人一人の小さな技が、チームの大きな力になることを。