気分転換のうまい人

気圧の変化で頭痛が酷く、朝からどう立て直していこうかと考えている中、シェアオフィスでいつもの席に座り、ほっとしました。近くの席に荷物だけが置いてあり、誰だろうと思ってふと机を見ると、そこには山盛りのミルキーが。あっ、ギターのKさん!と本人がいないのに笑わせてもらい、気持ちのいい朝の始まり。彼は私のお気に入りの席を知っていて、わざと空けておいてくれていることも感じ、気が付いたら仲良しに。そして、ランチから戻ると、建物の外でぼーっとされていて、話しかけられました。「いつもどこに行っているんですか?」「ベーカリーカフェです。」「長い時間、お菓子ボックスを置いていなくなることが多いから、どうしているんだろうってずっと気になっていたんです。」「文章を書いているので、こもってばかりでは何も書けなくて、気分転換しながら、歩きながら考えているんです。」「なるほど。やっと理由が分かりました!」「実は、長期間来られなかったのは、手術していたからなんです。」「ええ!!僕、ずっといてくださっていたと思っていました。なんだか存在感があるから、本人がいなくてもいるような気がしていたんです。」そう言われ、一緒に笑ってしまいました。今も続いている薬物治療の話もさらっとすると、心配と応援をしてくれて。これで、自席で寝ていても長期離脱をしても、仲のいい仲間に余計な心配をかけなくて済むよ。

プログラマーのMさんにも、技術営業のFさんにも、休載という選択肢の話をされていました。そして、復帰が早くないかと。予約投稿ボタンがあることは、このサイトを始める前から知っていたので、休載しなくても何とかなると考え、私の選択肢からは外れていました。そして、週3日に戻すとMさんに伝えた時、もう少し後でもいいのではないかと最初は心配されました。それでも、こちらの強い意志を感じ、辛くなったらまた週2日も検討してほしいと安心材料も用意してくれて。入院前日の夕方まで、パソコンを開いていた私を知ってくれている彼。そして、病院のベッドの上では、スマホからサイトが安定稼働しているか毎日見ていました。私は一体何をやり遂げたいのだろう、どこが目的地なのだろう、ずっと考え続けていることです。

高校1年と3年の時の担任の先生は同じ人、いつもこんがり焼けたサッカー部の顧問でした。校則がとても厳しく、定期的に学年全体が体育館に集まり、スカートの長さや頭髪検査がありました。「地毛で元々茶色かったりする者は、予め申し出るように。保護者面談の時に親から言ってもらう方がより説得力があるぞ。」と言われたので、元々少し栗色がかっていたことが気になり、母にお願いしました。「お母さん、うちの高校頭髪にもうるさいから、面談の時、地毛ですって言ってきて。お母さんも少し茶色いから分かってもらえると思う。」「そうね、その方が一目瞭然よね。」とあっさり分かってくれたので安堵。面談の当日、ちゃんと先生に言ってくれたか聞いてみると、「最近白髪が目立っちゃって、黒色に染めてから行ってきたの。」「なんだそれ!全然説得力ないじゃん!!」「ごめ~ん。ちょっと気になっちゃって。でも、ちゃんと先生には地毛だって伝えてきたから。えへっ。」腹立つわ笑えてくるわ。えへってなんだ。

とりあえず、先生には伝わったので安心して頭髪検査に臨むと、他のクラスが担任の先生から一人ずつチェックを受けているのに対し、うちのクラスだけ先生から全員座れの合図が。え?なんで?と思っていると、前にいたサッカー部の男子と談笑している姿があり、先生自身、こんなことがばかばかしいと思ってくれたのだと分かりました。翌日の朝、改めてみんなから聞いてみると、「やっても意味がない。染める奴は染めるだろう。個人的に言えばいいだけのことだ。」と、あっさり言ってくれるので、感激してしまいました。先生自身が面倒だということもあったのだろうけど、私達を守ろうとしてくれたんだなと。

1年生の終わりがけ、2年生になったら選抜クラスに入れという担任の言葉を振り切りました。「先生、私、自分のライバルは自分しかいないと思っていて、ゆったりとした気持ちでいた方が伸びるタイプなんです。普通クラスで自由気ままに勉強して、結果的に上位にいられたら嬉しいから。」そう言うと、これまた拍子抜けするほどあっさり分かってくれて。「おお、そうか。」・・・それだけ?!
そして、卒業式。みんなと別れた後、体育教官室の先生の所へ。「2年間お世話になりました。先生が選抜クラスに入れなかったから、伸び伸び勉強ができました。言葉数少ないのに、信頼してくれているのが分かって、嬉しかったし安心した。ありがとうございました。」最後は涙声になる私に、横を向きタバコをふかし、涙を溜めて伝えてくれました。「2年生になって、お前が学年で上位に食い込んできて、自由にさせてやって良かったなと思った。3年でまた担任になって、成績優秀者で表彰された時、担任として鼻が高かったぞ。ここまでよく頑張ったな。」滅多に褒める先生ではないことは、体育の先生みんな知っていて、だから、そこにいる先生達がぐっときてくれたのが分かり、堪らない時間が流れました。

職員室ではなく、体育教官室。いつもタバコ臭くて、先生達は随分ラフな格好で、本当に高校の先生達?!と思うような雰囲気をまとい、だからこそ吐けた弱音がありました。「先生、これまでありがとう。」「おうっ。」そう言って目も合わさず片手を挙げる。でもそこに、照れも喜びもあってくれたこと、知ってるよ。先生の気分転換は、体育で繋がる仲間とタバコと、生徒との何気ない会話。私を束縛しない方が、自由に飛べるかもしれないと最初に感じてくれた人。