深い繋がり

小雨がパラパラしているのに、何を血迷ったのか自転車でシェアオフィスに来てしまいました。すると、最近来てなかったので、不動産関係のHさんがにっこりご挨拶をしてくれて。お元気そうで良かった、そんな気持ちまで届くのが不思議。彼が元気のない時は、どれだけの思いを込めて励まそう。

最近、淀んでいた母。私と出かけた帰り道、自宅に帰りたくなさそうだったので、思い切って自分の隠れ家であるお気に入りのカフェを案内し、お茶をすることになりました。その時、姉とマブダチK君の声が聞こえてきて。「あんた、ばかが付くほどお人よしでしょ。」「お前、本気でばかだな。自分の隠れ家なら大事にしろよ。」そうそう、ばかなんだよ、だって母が辛そうにしていたから。そう思いながらも、時間が経つにつれてちょっとした後悔が押し寄せ、思い切って母に伝えてみることに。「お母さん、最後に行ったカフェ、仕事の合間に利用しているから、平日の午前中だけは行かないでくれるかな~。」「あなたの状況は分かっているからいいわよ。あそこのお店、若向きだったし。」そう言ってあっさり理解してくれてほっとしました。勇気を出して伝えること、こちらの意図を感じ取ってもらえること、お互い昔の関係なら考えられなかったこと。
そんな母と距離を取った数年前、本気で落ち込んだ状態で仲良しのKちゃんちに遊びに行かせてもらったことがありました。こんな話、本当ならめちゃくちゃ重いよねって思うことも、優しく聞いてくれて救われた気持ちになっていると、どこからともなく電子音が聞こえてきて。「あれ?何の音?」「あ、ごめんね。私が昔使っていたたまごっちを、○○(娘ちゃん)が育てているの。」とまさかのたまごっち登場に二人で笑ってしまいました。悲しい話の内容よりも、そんな時に一緒に笑えたこと、その時間は今でも宝物。

そういったことをあれこれ思い出していたら、ランドセルを開けて、明日の準備をしていた息子が話しかけてくれました。「今日ね、少人数の算数の授業があったの。クラスを半分に分けるから、僕は3階に行ったんだけど、授業が始まって挨拶をしたら、持ってきたのが書写の教科書でびっくりしちゃってね。先生に話して、慌てて2階の教室に取りに行ったの。」それを聞いて、一緒に大笑い。全然教科書違うし!綺麗な数字の練習でもするつもりだったの?!とツッコミどころが満載の間違いに、気圧低下の不調も吹っ飛んでいくようでした。「もうボク、慌てちゃったよ。まだ授業が始まったばかりで良かった~。」どんくさい所まで遺伝するのか?!息子よ、気持ちは分かる。そんなゲラゲラ笑う8歳児を見ていたら、男の子のわりに学校のことを話してくれているんだろうなと思いつつ、段々自然な形で減っていくんだなと彼の自立をこっそり応援。
以前、プログラマーのMさんに聞いてみたことがありました。「男の人って、同性同士であまり深く話さなかったりするじゃない?どこで弱音を吐いているの?」と。「そういう時はバーが多いかな。男同士ってやっぱり弱さを見せづらかったりするんだよ。人にもよるんだろうけど、そういう人多いよ。」そうだよね、ぐっと堪えて頑張っている男性、沢山見てきたよ。

父が出向になる前の40代後半、三年に一度の転勤がどんどん短縮されていました。土砂降りの雨の日、銀行まで迎えに来てほしいと別居中の父から一本の電話が。「お父さん、今○○支店だよね?」「違う、また転勤になったんだ。」「え?今、どこにいるの。」「○○支店。」遠い・・・。名古屋市内から随分離れた場所で、遠距離通勤をしながら、情けなさと戦いながら一人で頑張っているのだと感じて胸が痛くなりました。「ごめんね。ちょっと遠いんだ。名古屋駅まで帰ってこられる?雨が強くて運転も危ないの。」「分かった。時間は知らせるから。」雨足が強かったということより、父が私を呼び出す時は銀行内で何かあった時。それがなんとなくわかっていたので、複雑な気持ちを抱えながらも出向きました。革靴を濡らし、歩いてくる父の姿になぜか泣きそうになりながらお出迎え。「待たせたな。」「大丈夫。お父さん、また転勤になったの?」「おう、一年に一度の転勤になった。慣れた頃にはもう転勤だ。」出世コースから外れた父がどんな思いでいるのか、隣でただただ苦しくて。「早く辞めさせたいのかもしれないな。」と自虐的に笑ってくれた時、どうしようもなく辛くなってしまいました。本当にこの人冷たい所もあるのだけど、銀行員として全うし、その仕事を大切にしている人なんだなと。父のマンションの前に着き、「サンキュ。」とひと言言われ、お別れ。多くの会話もなく、それでも、一年に一度の転勤を靴底減らして頑張る父の背中を見るには、十分な時間でした。「また何かあったら呼んでね。」そう言うのが精一杯で。たった15分程のドライブ、そこに漂っていたもの、それは紛れもない信頼であり、娘だから見せられた父の弱さでもあったような気がしました。

「お父さん、銀行員人生どうだった?あの土砂降りの雨の日、何を思っていた?お父さんにとって家族って何?ダメダメな父親だったけど、銀行で働くお父さんは格好良かった。」いつか、本音で語り合おう。