秋の空を見上げ、白鳥が飛んでいるかのような綺麗な雲を見ると、感激してしまいます。曇りも雨も、今の私にとっては辛い天気。だから、気持ちよく晴れてくれた日が嬉しくて、自然と共存しているのだと実感できる心の流れを大切にしようと思います。四季があるこの国がやっぱり好き。
昨日は、ワクチン接種が前倒しで受けられるようになり、公共施設へ行ってきました。すると、見たことのある医師が一人。椅子に座り、記憶を辿ると息子がまだ小さかった時に、私が風邪を引いてしまい、抱っこをして連れて行った内科の先生でした。一生懸命こちらの症状を話したものの、ぷにぷにの息子の足を触り、頬を触り、ひと言。「赤ちゃん、かわいいね~。で、なんだっけ?」もう~先生聞いてくださいよ!と思いながら、すでに何回か受診をして顔馴染みだったので、思わず笑ってしまいました。「咳が出て、熱もあって、喉も痛いんです。」「はいはい、風邪ね。それにしても赤ちゃんってなんでこんなにムチムチしているんだろうね。」と近くにいた看護士さんに話を振る始末。「ずっと触っていたくなりますよね!お肌つるつるで羨ましい!」とノッテくれるものだから私の診察はどこへやら。一緒にみんなで笑い、免疫力を上げてもらった優しい時間を思い出しました。ふと現実に戻ると、その先生が真剣な表情でワクチンを打っていて、懐かしさがこみ上げて。お会いしていなかった間も、沢山の患者さんを助けてきたんですね。
この間は、夫のお義父さんが眠るお墓参りに行ってきました。毎朝、我が家にある仏壇のお水を入れ換え、手を合わせる度にお義父さんに話しかけていたので、いつも親近感があって。人はなぜ生まれ、亡くなっていくのか。小学2年生で祖母を亡くした時に、沢山のことを思いました。生まれつき体が弱かったおばあちゃん。それでも、内側にあるものはいつも力強く、揺るぎないものを感じていました。人より何か優れたものがあるかと言えば表面上は分からない、それでも、彼女が持っていた強さは美しかった、今でもそう思っています。抗がん剤の影響で、嘔吐が酷かった祖母、周りに迷惑をかけてしまうといけないからと個室に入っていたこともありました。そこで、こんなに辛い治療ならここから飛び降りたいと母に言ったこともあったそう。それでも、一時退院の時にはいつも笑っているような人でした。仲の良かった小学校の女の教頭先生の所に、一緒に遊びに行った時には校長室に案内されて。「薬の影響で髪が抜けちゃって!」とカツラを外した時も、笑いながら伝えていて隣で驚きました。たった一人弱さを見せられたのは、一人娘であった母。祖母はどこまでも人間らしくその生涯を全うしたのではないかと時々そんなことをぼんやり思うのです。
「Sは、前世でやり残したことを、現世でやっているのかもしれないよ。お母さんを幸せにしようっていつも頑張ってしまっていたけど、もう十分できましたって宿題を提出していいんだよ。そうしたらきっとSのこれからはハッピーになる。後世もね。」そんなことを姉に言われて。なかなか深いな。そして思いがけない提案をされてしまった訳で。「いつか催眠療法をやるのもひとつかなと思っているよ。Sの中に何か強引に押し込んだものが眠っている気がするから。」どこまでも鋭い。カノンに秘密が隠されているんだよ~。父がレコード盤を何枚も持っていてコレクションにしていました。その中にあったのか?!
陣痛室。ものすごい痛みの中で、助産師さんがお腹にいる息子の心臓の音を大きく聞かせてくれていました。ドクンドクン。もうすぐ、外の世界に出るからね。ママのお腹の中ではなく、自分で呼吸するんだよ。温かさに溢れた世界だから大丈夫。もがきながら心の中で沢山話しかけました。そして、痛みと戦いながら無事に出産。その知らせを聞いた祖父が喜び、母は真っ先に仏壇に行き、祖母に朗報を伝えてくれました。本当はね、そんなことをしなくても見守ってくれていたんじゃないかと思っていて。おばあちゃんの息子、一週間で亡くなった赤ちゃん。おばあちゃん男の子だよ、大切に育てます、そう誓った分娩台の上。
祖父の葬儀の後、家族会議でみんなに自分の胸の内を話した時のこと。お母さんには一週間で亡くなったお兄ちゃんがいたこと、そして、私達姉妹には3人目の弟がいたということ。その話を聞いた姉の旦那さんは帰りの車の中で姉に伝えたそう。「この親族はすごい女系だと思っていたんだよ。でもSちゃんの話を聞いて、男の子の存在を知って驚いた。伯父さんが生きていたらまたちょっと違っていたかもしれないね。」そう、祖母が私に母を託した理由の一つ。伯父さんが背負うものを母に背負わせ、荷が勝ち過ぎたことを祖母は感じていました。でも、もう十分宿題はやったよね、おばあちゃん。そして、私はお義父さんにも守られていると感じているよ。秋の綺麗な空を見上げながら、義理のお父さんのお墓の前で深呼吸をしてみる。生きることって、何を意味するのだろう。お義父さんは幸せな人生でしたか?空に少しだけ近づけた気がした、あまりにもやわらかな陽射しの一日。