大きな空

ある日曜日、息子が野球のユニフォームを着て野球に行ってくれました。その背中を見て泣きそうになったのも束の間、短時間で帰宅し、「野球やっていなかったよ~。」と言われ大慌て。「え?ちょっと待ってね。」とカレンダーを見てみると、ワクチン接種の駐車場になっていたグラウンドが使えることになっていたことを忘れていて、息子にごめんなさい。笑いながら分かってくれて、せっかくなので一緒に向かうことにしました。またいつ行かなくなるか分からないので、ユニフォーム姿をスマホでカシャリ。うん、いい笑顔、いい時間にしようね。そんなことを思いながらわいわいとグラウンドへ到着すると、ご年配のコーチにお会いしご挨拶。「欠席が続いていてすみません。」「いいんだよ。お菓子を渡そうと思って、○○コーチの子供に伝言を頼んでおいたんだ。」「はい、聞きました。本当にありがとうございます。」裏側で連携プレーをしていたのはやっぱり正解。そして、チームの仲間が息子を見つけひと言。「R、久しぶりだな!」この言葉で胸がいっぱいになりました。どれだけ空いても変わらない温度で待っていてくれる仲間がいる。優しくてあたたかい、そんなチームにまた自然と溶け込んでいった息子の背中がいつもより大きく見えて。ぼんやり守るライトの守備も、思いっきり振った三振も、そこで喝を入れてくれる監督も、なんだかいつも通りで嬉しくなりました。見上げた空は雲が広がっているけど、沢山の気持ちをありがとう。

その数日後、両親と息子と4人で旅行に出かけました。姉と私の下にいたかもしれない弟。4人で同じ時を過ごす中で、本当に息子のような子供だったのではないかと思いました。産まないという選択をした両親、長い時を経て、孫が何かを届けようとしてくれているような気もして、不思議なものを感じ取った優しい時間でした。おばあちゃんが孫の為にと買ってくれた人生ゲーム。ホテルまで持ってくるので荷物が多くて大変だったものの、母と息子と三人で大盛り上がり。その前には、夫とも三人で練習をやっていて若干複雑な気持ちになりました。これから離れる者同士が、ゲームの中で結婚だ出産だとやっているのだから、本当に面白い。それをこうやってゲームとして楽しめた時間は、きっと前に進んだ証拠なのだとひとつほっとできたような気がしています。さてさて、ホテルでやった順位はというと、宝くじが当選した母が大儲けで一位。無難にゴールをした私が二位、意外と支払いの多かった息子が三位で、絶対にお金持ちになる!という目標がさらに膨らんだよう。いろんな経験を積んで、味のある人になれ。
ソフトバンクホークスの甲斐捕手。母子家庭だった彼が、子供の頃、仕事で大変なお母さんのことを思い、自分でキャッチャー用の防具を段ボールで作ったとテレビで見たことがありました。お母さんに対する感謝を、しみじみ話した彼の表情を見て泣きそうになりました。それから数年後、東京オリンピックの大舞台で、ピンチの時にキャッチャーマスクを外し、ピッチャーに駆け寄る姿を見て色んな思いがこみ上げました。お母さんが、息子にやりたいことをやらせてあげたいという思いからタクシー運転手をしながら野球チームの送迎、そこでキャッチャーというポジションを磨き上げ、登りつめた日本代表の捕手、ピッチャーに向かい走った時の包容力は、お母さんからもらった沢山の気持ちが乗っかっているような気がして、母子家庭だった彼のお母さんの気持ちや、甲斐捕手の中に流れている愛や感謝が届き、堪らない気持ちになりました。私も、そんな母親になれるよう、自分の幅を広げて、息子の大きな空になりたいです。

そして、このサイトの一番最初の読者でいてくれた仲良しのKちゃんが連絡をくれました。『どうしても伝えたいことがあって連絡しました。私はいつでもSさんの味方だから、何かあったらいつでも連絡してね。頑張り過ぎず、周りの人を頼って無理しないでね。私を含めSさんの周りにいる人達は、いつでもSさんの力になりたいと思っているよ。Sさんのこれからを応援しているよ。これからも沢山の思い出を作っていこうね。』夜に、泣けた。彼女がこういった気持ちでいてくれているのは分かっていて、そっとしておこうか迷っている中で、ぐっと踏み込んできてくれたのが分かりました。彼女はどんな時も、同じ場所にいてくれて、どれだけの安心と優しさをもらってきただろうと思うと、心の底から温められたような気持ちに。大好きな心の妹もいるから大丈夫。泣かせてくれる人がいるって有難いな。

連休などがあり、大家さんからの連絡待ち。いい方向に転がると祈って、日々を過ごそうと思っています。旅先でお土産を買う時に、選んだ商品を母が私から取り、伝えてくれました。「これから何かと大変になるから、ここは私が払うわ!」その言葉は力強く、そして娘へのエールなのだと分かりました。そう、それは姉が私との別れ際に届けてくれていた旅先の帰りと同じもの。家族っていいな。そう思わせてくれたその日は、気持ちのいい快晴。頑張って働いたお金で、息子のグローブを買おうか。沢山の人の気持ちが乗った世界に一つだけのグローブ。ライトのポジションから、何を思ってくれるだろう。