いつものように学校へ送り届ける途中、横を走って通過していった方がいたので、なんとなく息子に伝えてみました。「陸上の○○先生に似てるね~。」「○○先生だよ!」えっ?!まさかの本人?後姿を見てみると、ノースリーブに短パン、コンパクトにまとめられたリュックを背負い、すごい速さで駆け抜けていくので息子と思わず笑ってしまいました。「先生ね、マラソン大会にも出ているみたいなんだよ。」通勤がもうトレーニングなんだなと思うと、なんだかエネルギーを少しもらえたような気がして、私も頑張ろうと思いました。息子といつものようにハイタッチをしてお別れ。陸上部だった頃を思い出したよ、気持ちが沈みそうな日ほど走ってみようか。何かを掴めるかもしれない。
そして週末、息子が土日とも友達と遊びに行くと言うので軽く困惑。「この間、ゲーセンでもらったメダルの有効期限、そろそろ来てしまうからRと行こうと思っていたの。でも遊びに行くなら、一人で電車に乗って行ってこようかな。」と伝えるとひと言。「せっかくなら行ってきたら?」とあっさり言われたので、本当に行くことにしました。息子を先に送り出し、ロングスカートを履いて、本を持って家を出ることに。日曜日の電車に乗り、本を読んでいると不思議な錯覚に襲われて。まだ二十代の頃、一人暮らしをしていた時にこんな休日をよく過ごしていたな、本当は結婚していたことも子供がいることも幻で、ずっと独身だったのではないかと思考が随分違う所に飛ぶと、ふと微笑みたくなりました。辛いこともあった、でも蜜の濃い結婚生活で、かわいい息子がいるんだよなと。結婚式当日、慣れないウェディングドレスや苦手なイヤリングなどで、緊張感もあり、あまり体調はよくありませんでした。その後、着替えた元夫と合流。彼もなんとなく緊張をしている中で、二人のショットを撮る為の写真撮影があって。すると、男性のプロのカメラマンさんが本気モードで、位置や目線を細かく説明し、ぎこちないながらも言われるとおりに制止することに。そして撮影が始まったものの、カシャカシャ撮りながら何やら伝えてきて。「新婦さんもう少し顎を引いて。新郎さんはもう少し目線が上。新婦さんは右肩下げて。」と微妙なことを色々言われる中で、彼が聞き間違いで右肩を下げたりすると、「いやいや、あなたじゃないんだよ~。」と突っ込んでくるので、それがツボにはまってしまい、私が吹き出すと彼もつられて吹き出してしまい、その様子を見ていたウェディングプランナーの方も、メイクさん達も半笑いで見届けてくれて、優しい時間が流れました。カメラマンさんのプロフェッショナルぶりにすっかり和み、緊張は解れ、彼と式の前に一緒に笑えたこと、形式よりもそのひとときを大切に持っていられたことが電車の中で嬉しくて。『病める時も健やかなるときも・・・』結婚生活で色々なことがあった、その誓いが悲しくなる時もあった、それでも結婚式で『はい』と言ってくれた彼の言葉は本物で、その瞬間そう思ってくれただけでもう十分だと思いました。離婚を考えている時、不動産関係のお仕事をされていたHさんが聞いてくれて。もしかしたらまた誰かと結婚する気になるかもしれませんよと。「もう懲りました。」と笑いながら伝えると大爆笑してくれました。自分が歩いてきた歴史をこんな風にポジティブに聞いてくれる人がいる、だから大丈夫なのだと。婚姻届よりも離婚届よりも結婚式前に二人で笑えたこと、それはきっと尊い、生きるって多分そういうこと。
さてさて、ゲーセンに着き、100枚ほどを引き出し、釣りのメダルゲームをやったものの、全然お魚は釣れず撃沈。息子の方がはるかに上手いなとあっさり撤退し、とりあえず残っているメダル期限は引き延ばされたのでミッションは終了だとタリーズへ転がり込みました。そこは、ネネちゃんとたまに姉妹カフェをしていた場所で、向かい合うと彼女の辛さも心が軽くなる時もダイレクトで伝わり、そのひとときを思い出して泣きそうになりました。姉の中にいるインナーチャイルドはまだ泣いている、私にできることはなんだろうか。近くで小さなお子さんと若いご夫婦が、仲睦まじく会話をしているのが目に入った。私にもそんな時があった、でも今は息子とふたり。そこには1%の後悔もなく、いつも笑いが絶えないその生活を大事に守っていこうと思いました。普段と少し違う週末を迎えたら、沢山の気持ちが巡り、また本を片手にゆっくりと電車に揺られて帰宅。
チキンカツカレーを作り、待っていると、ただいま~!とわんぱく11歳児が帰ってきました。いつもの日常にほっこり。一緒に野球を観ながらの夕飯。そして、食べ終わった頃聞いてくれました。「ママ、そういえばメダルどうだった?」「行ってきたんだけど、釣りのメダルゲーム、全然お魚が釣れないの!下手くそ過ぎてみんな逃げられたよ~。」「え~!釣りざおレベル上げた?」「うん、一度やってみたけどだめだった~。」とくだらない反省会でわいわい。あたたかいご家族が渡してくれたメダルを有効期限切れでなくしてしまうのは違うと思った、だからひとりで出かけた、そうしたら過去の自分もその電車に乗っているようで、沢山の気づきがあった。本当はいつもこうやって時間を旅しているのかな、私もスニーカーを履いて景色を楽しみながら今を駆け抜けることにしよう。