両親が久しぶりに名古屋にあるお墓参りに行くことになり、母から連絡がありました。せっかくだから、Sが日本料理店でお世話になった小料理屋のママの所に行きたいから、行き方を教えてほしいとのこと。ネットで調べ、URLを貼り付けて、お父さんに聞いた方が分かりやすいかもと伝えてLINEを終了しました。すると後日、改めて連絡が入って。『お父さんに描いてもらった地図が分かりづらくてなかなか辿り着けなかったんだけど、ようやくお店に入ったら○○さんがとっても喜んでくれて、閉店の8時を過ぎても1時間ずっと二人で話していたの。お互いの話を泣きながらして、また春に来るわねって約束して、本当に楽しかった!』いろんな思いがこみ上げてくる。本当のお母さんと、心のお母さん、二人が交わった日。母が、ヒステリックな状態だった時、宥めるのに必死だった毎日の中で、いつも温かく迎えてくれたママ。沢山の愛情を注がれ、外で親子のような関係を育んでくれた大切な人がいてくれたから、今の私があるのだと思うと、色々なことが走馬灯のように駆け巡りました。閉店後も二人で話し込んだのは友達の証、彼女はそういう人。その後、ママからショートメールが入りました。『昨日お店にお母様がいらしてビックリ!お変わりなくとてもお綺麗でしたよ。Sちゃんも近くにご両親がいらして良かったね。』自分よりも相手のことを想う、ママの魂がどこまでも澄んでいて泣きそうになりました。この人に助けられてきたんだ。母にはすっかり先を越されたな。娘がお世話になったからと、地元の地酒を届けてくれてありがとう。二人のお母さんに乾杯。
地図を描くのが下手だったと言えば、父だけでなく私も同じ。二人とも地理は好きなのに、いざ描いてみるとよく分からない地図が出来上がるんだな。大学在学中、日本料理店の店長に言われ、最寄駅から自宅のルートを描いた紙を渡すと笑われてしまったことを思い出しました。駅から、二本線の真っ直ぐな道を描き、終点には三角と四角の幼稚園児でも描けそうな家が一軒。それを指し、「その家が我が家です。」と話すと大爆笑されてしまった訳で。もうちょっと途中に何かあるでしょ、と笑いながらこちらの話を聞き付け加えてくれました。もうね、十分過ぎるぐらいアイスブレークはできたよ。「Sちゃんさ、ものすごくきちんとしている部分と、ものすごくざっくりな部分があるよね。」はい、おっしゃる通りで。そこを分かってもらえると非常にこちらも働きやすいですと思いながら、楽しい時間が流れたアルバイトの初日でした。
そして、そんな下手くそな私が黒板に絵を描くことになった教育実習。ヨーロッパをなんとなく描いたものの、時間はかかるしなんだかいまいちだったので、次の時間は生徒に手伝ってもらおうと思い、描いてくれる人!と言うと、思いがけず沢山の手が挙がりました。よく見ると、いつも控えめな男の子が後ろの席で手を挙げてくれていて。その子にお願いをすると、張り切って描き、本当に私よりもはるかに上手く、みんなから歓声が上がりました。「上手に描いてくれてありがとう!本当に助かったよ!!」と教壇の上で、本気モードで褒めると、嬉しそうにしてくれて。この時間の主役は彼で決まり。いつも目立たない彼にスポットライトが当たり、みんなが喜んでくれたそんなクラスにしている社会科の恩師も、後ろで微笑んでいました。授業が終わり、一緒に歩きながら職員室へ。もしかしたらちょっと怒られるかもしれないと覚悟をしていたのですが、そこは味のある先生らしく伝えてくれました。「なんで生徒に描いてもらおうと思ったんだ?」「前回描いた時にとっても時間がかかってしまったし、それに先生から授業に参加させろって言われていたので。私が一方的に話すよりも、その子その子の得意なことが、社会科の授業で活かされたらいいなって思ったんです。」「できれば先生が描いた方がいい。下手なりにがんばっている姿を見せるのも教育だと思う。教育実習生のそんなひたむきな姿から感じられることは沢山あるから。でもな、今日描いたあの子は絵を描くのが元々得意なんだけど、目立たないから彼の良さも目立たない。黒板に描いてみんなが褒めた時、今までで一番いい表情をしていたぞ。あなたが引き出したんだ。」軽く怒られながら、それを大きく包む先生の愛に胸がいっぱいになりました。その言葉は、生徒と私、クラスを丸ごと包んでくれた言葉だったような気がしています。
週末のある日、少し弱気なメッセージを姉に送ると、思いがけず電話で話せる?と言われ、長電話をすることに。「9.11の番組を見ていたら、あの大変な状況の中でよくお母さんを連れてカナダまで来てくれたなって改めて思ったよ。Sは、オーストラリアにも二人で行っているよね、海外でお母さんと過ごしてみて何を思った?」「いやあ、結局お母さんといて嫌な思いをしてしまって、国が変わってもダメだった!」率直にそう言うと、電話の向こう側で大爆笑をされてしまいました。「S、ありがとう!」なんのありがとうなんだか。そこまで分かっているのなら自分の道を行きなさい、そういうこと?!「まだSちんの心のどこかで、両親を幸せにしなきゃ、私がいなきゃって思っているところがあると思うんだよ。でも、もう十分やったんだよ。Sは本当に我慢強いからなあ。犠牲バントじゃダメなんだよ!三冠王になれ!!」何だそれ!姉はこのサイトの存在を知らないのに、書いたこととリンクしてるし。そして、ネネちゃん節が再会をしたことにより、戻ってきていることに笑ってしまいました。「・・・はあ。」と拍子抜けしながら曖昧な返事をすると、でっかい球を投げられて。「自分が主役になりなさい!!」何なんだこの電話は。姉に球を投げると、時間差で3倍の球が返ってくることを思い出したよ。彼女の課題は横に置いて、妹の幸せを願ってくれた。私の未来を、先回りして応援してくれた人。妹を想う姉の声が生き生きしていることに気づいた日。三冠王を狙うか!