きっかけはなんでもいい

天気のいい日に、シェアオフィスに来ると、アルコール消毒をしながら入り口の電光掲示板が気になり、思わず見入ってしまいました。『乙女座の今日の運勢、生命力旺盛』、今日に限らずいつも旺盛なんだけどなと心の中で呟きながらドアを開けると、ちょっと晴れやかな気持ちになっていて。生まれた時から全力、占いの星三つどころではなく、はみ出しているよ。

少し前、たまたま誰もいないオフィス内で、若いIT技術者の方が話しかけてくれたことがありました。元々明るいキャラの方なので、全く違和感なく盛り上がっていると、たまたま声を聞いた女性のスタッフさんが私のことが心配になり、様子を見ながら通り過ぎてくれて。話を終え、ほっとした彼女が私にひと言。「実は、○○さん今日、少しお酒が入っていたみたいなんです。」え~!!もしかしたら若干絡まれていたの?!と一緒に笑えてきて。そして、次のタイミングでお会いした時、「この間はすみませんでした~。」とにこやかに謝られてしまいました。「いえいえ、楽しかったです。」と言うと安心してくれて。そして、平日は毎日見かけていた私が2月下旬以降あまり見なくなったことを心配され、息子の存在を話すと、さらに心配されました。それ以来、学校再開を祈ってくれるようになって。「また感染者の方がかなり増えてしまったみたいなんです。」「え?そうなんですか?」と話した翌週、お会いすることができ、控えめに話しかけてくれました。「実は、前回誤報をお伝えしてしまったようで。僕の友達が録画していたテレビで映った情報を僕にも教えてくれていたんですけど、それ録画したものだったので、かなり内容が古かったみたいで・・・。間違った情報を教えてしまってすみません。」はははっ。気にしないでくださいねと笑い、やっぱり最後に伝えてくれました。「お子さん、落ち着いて学校へ行けるといいですね。」と。息子が行く予定の中学校の先輩にあたる方。近い将来、同じ場所で学ぶことに親近感を抱いてくれていました。「僕達の頃には考えられなかったことが起きています。あの時、なんでもないことで悩んでいたことが、実はとっても小さなことだったんだなと思えて。今の子供達、本当に大変だと思います。また何事もなく笑って行ける日を僕も祈っています。」こんな言葉に、助けられているんだな。ありがとう、気にかけてくれることが何より励みになります。いい先輩がいた中学校へ行く頃には、新しい教育のあり方が見えてくるのかな。心の準備はいつもできています。

母の日を祝う名目で行われた餃子パーティ。私と息子と夫が作る係で、両親宅で皆が楽しそうにしてくれました。そんな中で、普段はあまり話さない父が、お酒が回り嬉しくなったのか、自分の部屋から一枚のバスタオルを持参。そこには愛知県警と書かれていて、キャラクターが可愛くプリントされていました。銀行の関連会社で裏方の仕事に回り、時に公共機関の方と仕事をさせてもらうこともあるのだと話してくれたことがありました。65歳の定年を迎えたら、その関連で声をかけてもらっていたことを知っていました。それでも、父は断り、母との同居を選びました。もし、お父さんが独り身だったら選んでいた道?後悔はない?私もお酒が入っていたら聞けるのに。公共施設の会議室で、姉と私と父が家族会議をした時、大泣きした私の顔を見て、父は自分の人生を決めたのだと思いました。これ以上、娘を苦しめてはいけないのだと。

私が息子と二人で遊びに行っても、ほとんど話さない父。それなのに、夫が行くと、母や私に気を遣い出す姿が垣間見えて、笑ってしまいました。美味しそうにお酒を飲む父。嬉しそうに笑う母。私は一度、あなた達にはもう二度と会わないと決めたことがあったよ。それがどれだけ苦しかったことか。少なくとも母には会わないと決めた時、それでも父が名古屋から遊びにきたタイミングで息子を会わせました。まだ補助輪の付いた自転車に乗り、父と息子が交差点の向こうで待っていた母に駆け寄っていく時、両手をいっぱいに広げ、満面の笑みで待っている姿を見て、この人の幸せを奪うことは、絶対にしてはいけないのだとマンションのバルコニーから思いました。それから、少しずつ距離を縮めていった今。また一つ屋根の下で二つの家族が交わっていく。だからきっと、人生は面白い。