最後にしない

段々寒くなってきたので、幼稚園後は真っ直ぐ帰ろうねと、朝に息子と約束しても、お迎えに行くと私にいち早く荷物を渡し、どこかへ行ってしまう習慣は直らず、仕方がないので時間を決めて待つことに。すると、「Hi!」という懐かしい声が。振り向くと、インド人の友達がそこにいて、感激と驚きが一気に押し寄せました。「どうしたの?」と聞くと、用事があって近くまで来たからという返事。その後、お互いの近況をひとしきり話し、友達が伝えてくれました。

「実は、夫が転職することになり、インドではなくシンガポールへ行くことになったの。故郷でもなく、住み慣れた日本でもなく、新しい国へ行くことに不安でいっぱい。夫は仕事が決まったし、彼の兄弟もいてインド人も多いし、文化も食事も、子供の教育も進んでいて何も問題ないのだけど、私だけが問題あるよ。」久しぶりに会い、一気に弱音を吐いてくれたことが嬉しく、同時に寂しさや心配もやってきました。彼女は日本語で考えながら話すのが面倒になり、自分の感情が先行する時は、急に英語に変わる時があり、本気で慌てます。どんな感じかというと、緩やかなスピードでテトリスをやっていたら、いきなり速くなり上から落ちてくるあの感じ。どうしようと焦りながら、何とか聞き取ろうとしても、多分理解しているのは半分ぐらい。とにかくショックだったよう。と、簡単にまとめてみる。

そして、声のトーンを落として聞いてくれました。「How is your job?(仕事は順調?)」「Yes, I’m very busy every day.(うん、毎日忙しくしているよ。)」笑顔でそう伝えると、にっこり微笑んでくれました。園庭の中でそこだけが異空間のような、一瞬ほわっとした優しい時間でした。私が司書をやっていて、仕事復帰について沢山迷っていたことを友達は知っていました。だから、その経験を生かしてライターとして活動を始めたことを、心から喜んでくれました。あなたのことを書かせてもらっているよ。そう心の中で呟きながら、溢れ出す沢山の想い。
「シンガポールに遊びに来て。日本を離れる前に必ず会おう。」彼女は、本当に強い。相手を不安にさせない芯の強さを持っているから、どこに行ってもきっと大丈夫。

そんなちょっと切ない別れを感じながら、ようやく捕まえた息子と帰宅すると、早速ビンゴゲームの始まり。なぜか彼が先生役で、私がビンゴを紙に書いていくという流れの中で、「“B”でもいいよ!」と言い出した息子。ビンゴにアルファベットもありなわけ?と突っ込みたい気持ちを抑え、せっかくなので“500”とか“0”などなんでもありの状態にし、それでも物足りなくなってきたので、小さなマスにカエルやひよこの絵まで描いてみることに。こんなでは永遠にビンゴにならないなと思っていたのですが、しっかり私の作品を見ていた息子は、数字をいくつか言った後、「ひよこちゃん!」と喜びながらあてにいってくれ、最後はカエルちゃんでビンゴ成立!!ってどんなゲームやねん!と二人でやっぱり盛り上がってしまい、笑い転げて無事終了。

なんだかよく分からないけど、こんな日は、全てのことを大切にしたくなり、くだらないビンゴゲームの用紙を取っておくことにしました。いつもはあっさり捨ててしまう私の様子を見て、「どうして取っておくの?」と聞いてきました。「この時間が楽しかったから。また思い出せるように取っておくよ。」そう伝えると、にっこり笑って、「じゃあ、ボクの部屋に飾っておこう!」
ビンゴの中にひよこちゃん。意味が分からん!!と何年経っても笑いながら思い出せるかな。
そして、友達がシンガポールへ行ってしまうことで、ほろ苦い気持ちになったことも。
そんな想いが、自分のエネルギーや優しさに変わっていることも。