勘違いに気遣い

先月の夜、名古屋の父から珍しく電話が。取ってみると、こちらの様子を気にしてくれつつも、能天気な内容にこけそうになりました。「今さ、こっちに来ているんだよ。」「はあ?だからさ、お父さん、来る時は前もって連絡してよ!」ああ、ごめんと言われながらも変わる気ないなと呆れながら通話終了。翌日、役所関係の用事が終わって、息子の小学校の途中までお迎えに行くと連絡が入り、シェアオフィスにいた私はやや慌てながら片づけを開始。もう、慣れています。

そんな状況の中で、受付にラガーマンのTさんを久しぶりに見かけたので、急いでいることも忘れてひと言だけと思いつつ、絡んでしまった帰り際。「週末、なかったのでちょっと寂しかったです~。」「ああ僕、金土日と階下で仕事をしていたんです。」ごめんなさい、私はトップリーグの話題を出したつもりだったのですが、Tさんは自分のことだと思い込んでしまったらしく、直球で訂正するのもなんだかそれはそれで失礼な気がして、瞬時に変化球。「そうだったんですね(トーン控えめ)。週末、ラグビーの試合が無くて残念でした。」これで誤解は解けた?なんだ、俺じゃないんかい!と心の中で思ってくれたら成功なのですが、本当にそのままの解釈をされてしまっていたら、公開告白みたいでちょっと恥ずかしくなってしまいました。当分、挨拶だけにして通過予定。誤解が自然と解けるまでの冷却期間です。色々冷静になって考えてみたのですが、元トップリーグの選手が週末いなくて寂しかったと伝えたところで、一ファンのセリフなのでまあいいか。

その後、父が息子を迎えに行ってから、自宅で実にくだらない話をしてくれて大盛り上がり。「うちの隣に東南アジアのカップルが住んでいてさ。挨拶をされた時に、おじいさんこんにちは~って言われてショックだったよ。確かにおじいさんなんだけど、その言葉って孫にしか言われたくなくて、外国人の方って正直だなって思ってさ。飲み屋に行っても、“社長さん”とか“おやっさん”だったんだけどな。」ははっ。それどこの居酒屋よ。いつからお父さん社長になったの?!娘からしたら、まだまだしゃんとしているから大丈夫だよと心の中で呟き、笑って話を終わらせました。父も私もどこかで、母に関する話題を避けているようにも感じる。これまでのことも。本当はもっともっと話さなければいけないことがあるのに、“今”に触れていたくて、何とも言えない時間が流れました。宿題をやりながら聞いていた息子は、何かをキャッチしたのだろうか。

母宅に泊まることになり、父に3人分のシュークリームを渡し、見送りました。父の手を繋ぎ、嬉しそうに歩き出した息子。それでも、私の様子が気になり振り向いてくれた時、楽しいことが前に待っているのならもう振り向かなくていいんだよって、お母さんのことはいいから自分の道を行きなさいと、様々な気持ちがこみ上げ、手を振ってからそっとその場を離れました。大切だから離れる。後ろ髪を引かれて進むことは辛いこと。あなたの優しさは知っている。その気持ちだけで十分。そして、おじいちゃんの温もりも覚えていてね。

高校3年の時、野球部のエース君とキャッチボールをして、伝えてくれました。「ツーストライク、ワンボール。これでピッチャーが有利になった。1球遊べる。」「3球ストライク投げた方がいいと思っていた!」そう答えると、緩急をつけることも大切だと、カーブもぼんやりと教えてくれて。直球ばかり投げている場合ではない。色々な球を覚えて、自分自身を味方に付けよう。
「ナイスボール!」もっと自分に自信を持て。彼が野球を通して教えてくれた気持ちを思い出した春めいた午後。武器が一つあればいい、それを磨けばいい。そうしたらランナーが出ても怖くない。