面と向き合うということ

年が明けてから、口内に違和感を覚え、歯科検診の時に先生に診てもらいました。すると、レントゲンを撮ることになり、ぼんやりとした可能性を言われて。無意識の間に食いしばりがどうしても強く出て、歯の割れ目からばい菌が入ってしまったかもしれないということ。改めて別の日にCTを撮ることになり、大事にならなければいいと祈りました。そして2週間後、予定通りさらに詳細な画像を撮ってもらい、原因が判明して。「ぼこっと出たものは固いですよね。これは、骨隆起のようです。食いしばりが強いことで骨が出てきてしまったのですが、まだ小さいのでとりあえず様子見で大丈夫です。小さくなることはないので、逆にもっと大きくなって違和感があればすぐに来てくださいね。ちなみに反対側もそういった傾向があります。」そう言って、CTを見ながら説明してくれました。自分のリアルな画像を直視できないなと笑いを堪え、とりあえず大事にならなくて良かったと安堵し、病院を後にしました。食いしばりによる防衛反応で、骨が発達してしまったのか?!人間の体って不思議だなと。今日は母と待ち合わせの日、笑顔で会えそうで良かった。

その後、約束していたショッピングモールに先に着いたので、座って待っていました。すると、背後から「わっ!」と驚かされて、キャーと声を出すと母が大爆笑。そう来たか!とこちらも思わず笑ってしまって。すっぴんの母、お化粧をしない日は負のオーラがいつも付きまとっていたのに、メイクをしていない彼女から明るいオーラを感じ、ちょっとこみ上げそうでした。母の努力の賜物だ。その後、息子の誕生日祝いにと一緒に服を選んでいる中、広い店内で離れると、私の名前を大声で呼ぶので慌ててしまって。これも含めてうちの母、おおらかな気持ちで接すると自分に言い聞かせ本人の元に向かいました。そして、どさくさに紛れてセールになっていた私の服も一着買ってもらうことに。二人分を喜んでプレゼントしてくれたので、お礼を伝え、そのままカフェに入りました。こうして外でお茶するのなんて、いつ以来だろうといろんな気持ちになって。そして、気になっていた財政事情をこちらから振ることにしました。「お父さんのパチンコ代ってどこから出ているの?」「二人の年金から生活費は使っていて、お父さんは自分のお財布から、きっと銀行時代の退職金からだと思う。」「二人の生活に影響はなさそうでそれは良かった。」「50歳で銀行を退職して、関連会社に出向になったでしょ。そのタイミングでお父さん、借金があったから、まずはそれを全額返済してから残った分を二人で分けたの。」具体的な数字も話してくれて、急に頭の中で繋がりました。私が大学4年の時、バイトで貯められるだけ貯めてこれで卒業できると思っていた頃、母が伝えてきて。「学費の支払い期限が近くなって、お父さんが振り込んでくれていたことが分かった。」と。その話を聞き、驚いたのとちょっとした違和感がありました。今って、ボーナスの時期じゃないよねと。まとまった額を、父なりに無理してかき集めてくれたような気がしました。その数年後、結婚式当日、母が教えてくれて。お父さんが出してくれた学費、本当は少し足りなくて、そのことをおじいちゃんに話したら出してくれたのと。おじいちゃんの気持ちも嬉しかったのと、なぜ足りなかったのか、そこも多少引っ掛かっていたのだけど、今回その答えが分かった気がして。その時の父が借りられる限度額だったのではないかと。若い女性にも貢いだ、ギャンブルも続けていた、一人暮らしの生活に余裕がないのは自業自得だったのかもしれない。それでも、最後の最後で父親としての役目を果たそうと動いてくれた、その気持ちがその当時の私にとってどれだけ嬉しかったことか。それが、やはり借金してまでだったとは。卒業式が終わってから、袴姿で会いに行ったのは大正解だったな、この歳になり改めて思いました。婚姻費用のことで、両親は揉めに揉め、間に入った私はそれこそもみくちゃ状態でした。それでも、ようやく落ち着いた頃、退職金を均等に分けたと二人が個別に話してくれて安心しました。その前に借金を返済したなんて、どちらも言わなかった、彼らなりの配慮だったと今になって気づくとはね。お父さん、借金してから学費を払ってくれたの?そんな話を聞いたところできっととぼけるだろう。知らん、忘れた、何のことだ。こんな愛の形もあるんだね。

カフェの目の前には凪いでいる母がいる、今伝えられることを伝えなくては。「お父さんね、手術をした後もすぐに仕事復帰して、めちゃくちゃ責任感が強かったし、その仕事を大切にしていたからあまりにも急に退職が決まって、心のやり場に今でも戸惑っているのだと思う。お母さんにべったりではなく、パチンコという居場所があってそれはそれで良かったと思うんだ。私ね、実はお父さんの次の仕事を探していたりもしたの。税関係には強いと思ったし、実際求人もいくつか見つけた。でもね、これまでのお父さんのキャリアや待遇を考えたら、プライドを傷つけてしまうかもしれないとか、慣れない仕事のストレスでまたお母さんに当たるようなことがあってもいけないと思ってやめたの。」そう話すと驚き、伝えてくれて。「お父さん、大きな手術もして、本当にこれからまたどうなるか分からないなって思った。だからお金よりも、残りの二人で過ごす人生を大切にしたいと思っているよ。」母からこぼれ落ちる小さな宝石が見えたようでした。これが、何よりの本心なのではないかと。「名古屋のお墓をこっちに持ってくる件も、お父さんのタイミングでいいと思う。きっとね、帰省するきっかけも欲しいと思うんだ。お墓参りっていうね。そうしたら同期にも会えるし。」そう話すと笑ってくれました。そして息子と選んだシュシュのお誕生日プレゼントを渡すと、喜びながら言われて。「あのね、去年のSの誕生日、何か届けようかとも思ったんだけど、いつかまた笑って会える日を願ってやめておいたの。ごめんね。」お母さんがそういう気持ちでいてくれたこと、知ってるよ、心の中で届けてみる。「うんうん。今日買ってもらったから!ありがとう。」あなたって子は、そんな表情で微笑んでくれました。S、ありがとう。母との糸電話が通じたようでした。長かったね、でも確かに見えた景色がある。人を想う人、そうあり続けたい。