爽やかな人

この間、息子と公園へ行く途中、自転車に乗っていたら、随分爽やかにトレーニングウェアで走る男性に挨拶をされ、びっくりしながらも負けない笑顔で挨拶をすると、あっさりすれ違いながら行ってしまいました。サングラスをかけていたし、誰だ?と思考を巡らせていると、思い当たったのはただ一人。齋藤教授!!ではなく、息子が野球チームでお世話になっている教授にそっくりなHコーチでした。慌てて息子にも聞いてみると、そうだよ~という返事。いつもはメガネをかけているのにサングラスで朝っぱらからランニングをされていると、10歳は若く見えますね。きっちりメイクで出てきて良かったとよく分からない安堵。3月までで辞めてしまうという噂は、噂で終わってほしいです。このコーチがいてくれるからと思って入ったチーム。高校生になるまで息子にはスマホを持たせなかったという信念を持つ先輩パパとしても学ぶことは、ヒットの数程あるはず。

毎年年度末になると、連絡がくる野球チームの役員募集。来年度は学校の役員が決まっているのですが、また余裕ができたら検討しようと思います。『役員メンバーでできることを協力してやっていく感じです。是非子供達の活動継続のためにご協力をお願いします!一緒に○○(チーム名)を盛り上げていきましょう!』なんて嬉しくなるメール。役員をしてくれた先輩パパからのメールは、チーム愛や子供達の愛に溢れていて、令和になっても変わらない味のあるこの雰囲気も、子供達には引き継いでいってもらいたいなと思いました。そんなことを思っていたらある一つの光景が。

小学校を退職する時、スーツを着て、全校生徒の前で挨拶をさせて頂きました。全員の先生の視線を浴びながら、伝えたこと。「人との出会いも素晴らしいものですが、本との出会いもまた、素晴らしいものです。自分のお気に入りの一冊を見つけて、それをいつの日か自分の子供達に読んであげてください。皆が図書室に来てくれて、私も嬉しかったです。今までありがとうございました。」そんな話を感極まりながらして壇上を降りた時、一人の先生が近づいてきてくれました。それは、教頭先生。「子供達に、気持ちのこもったメッセージをありがとうございました。」言葉って、こんな風に、こんなに優しく届いてくれるものなのだと、児童を通して伝えてくれた教頭先生の言葉に、沢山の綿がコーティングされていたようで、あまりにも温かい時間がほんの一瞬流れました。この想いは、先生達が引き継いでくださるのだろうと確信した時。

その小学校で、やんちゃな6年生の男の子二人に手を焼き、やってくる度に困っていた毎日。それをどこかで聞きつけた6年生の男の先生が、休み時間になって図書室に来たと思ったら、男子二人を廊下へ呼び出しました。何かを諭すようにも、怒っているようにも見えた後、その男子達がもう一度図書室に入ってきて、私の前で謝ってくれました。「先生、いつも迷惑をかけてごめんなさい。」超面倒くさいなという顔をしていたので吹き出しそうになりながらも、「ちゃんと反省してね。わざわざ言いに来てくれてありがとう。」そう伝えると、その様子をそっと廊下で見ていた男の先生。図書室に入ってきてその場で怒ろうと思ったら怒れたはず。外に連れ出してくれたのは、何よりも図書室の穏やかな雰囲気を一変させたくなかったという先生の配慮なのだと思いました。昼休み、校舎の片隅で、昔の高校生のように座り込んでタバコを吸っていた先生。「お疲れさまです。」と言いながら通り過ぎると恥ずかしそうに毎回会釈をされました。最終日、職員室に残っていた先生達に改めてお別れの挨拶をすると、席を立ってびっくりするほど深々と頭を下げてくれた先生。教員と司書という立場でしたが、図書室を大事に守ってくれた先生がここにもまた一人いたのだと、先生はこの先もこうやって芯の部分を大切にしながら、子供達と向き合っていくのだと思いました。息抜きの為に吸っていたタバコ、その先生にとって何よりも貴重な優しいオフの時間。