優しい配慮

いつもより若干早めにシェアオフィスに着くと、営業の方らしき方を何人も見かけ、カタカタとパソコンを叩いた後にサクッと出ていく姿を気持ちよく見送った朝。中にはゴロゴロが付いたスーツケースを持参の方もいて、これから出張なのだと分かりました。朝からお疲れさまです。
そんな状況の中、なぜか私が気に入っている席はいつも空いていて、常連の方の配慮もあるような気がしてきました。固定席と自由席があるのですが、私は長時間いないので自由席。それでも、なんとなく皆さんがどこかで気に入った席に座っているのは感じ、空けておいてくださってもいるようで、簡単にはサボれないという嬉しい悲鳴です。

以前、電車の中で寝ていた時、はっと目を覚ますと目の前にご年配の男性が立っていたので、慌てて席を譲ろうとしたら、にっこり笑って制止されてしまいました。「まだまだ頑張りますから!」そう笑って伝えてくれると、隣にいた品のある奥様も微笑み、「あと一駅だから大丈夫ですよ。」と言われ、なんだか胸がいっぱいになりました。あなたの気持ちは嬉しかったですよ、でも気にしないでくださいね。そんな言葉を遠回しに伝えてくれたご夫婦。素敵な年の重ね方をされているのだと思いました。咄嗟に言えるのは、醸し出す穏やかな雰囲気は、日常なのだと。そんなことがあった日は、一日優しい気持ちに包まれます。

週に2回行っている息子の公文。一旦学校から帰るとまた出るのが面倒くさいとぶつくさ言われるのですが、ちゃっかりお菓子を食べてから、文句を言いながらも必ず行っているところは褒めてあげたいです。スペシャルサービスで、エレベーターホールまで見送ると、すっかりスイッチの入った顔でバイバイ。あと何回、こんな日があるかな。かあさんウザイと言われるのは時間の問題?!そんな息子がやってきた国語のプリントを見てみると、1問だけ間違えていて“ながぐつ”を“ながぶつ”と書いてあり、大爆笑。これ、先生も採点しながら笑ったんだろうな。長物なのか永物なのか。長い物か、永遠の物?という解釈を楽しみながら、本人に聞いてみると、「“ながぶつ”だとずっと思っていたんだよ~。」という息子なりの反撃。やっぱりコイツ、感覚で言葉を覚えているな。よく見ると、先生が丁寧な字で“ながぐつ”の説明をしてくれた痕があり、ほんわかした時間がプリントを通して伝わってくるようでした。

塾の講師をしていた頃、毎回塾に来てくれるのに、成績がずっと低いままの中学1年生の男の子がいました。お父さんが車で送ってくれた時、さすがにこちらの力不足を詫びると、とても爽やかな笑顔で伝えてくれました。「落ちるところまで落ちたらいいんですよ。そうしたら、さすがに本人も上がるしかないことに気づくでしょう。中途半端な位置で満足してしまうよりも、落ちた方が本人の為です。だから、先生気にしないでください。」めちゃくちゃ格好いいなと思いました。そして同時に、お父さんももしかしたらそういった経験をされたのだろうと。誰かの力に頼り過ぎず、自分が置かれた位置に気づき、そこからどうするのか。立ち止まり考え、悩んだその時間はきっと生きてくる。なんだか私までもお父さんに励まされたようで、深くお辞儀をするだけで精いっぱいだったような気がしています。

英語の“ありがとう”はなんて言う?とその子に聞くと、「コンビニの、あれなんだっけ?ファミマ。いや違う、サンクス!」と答えてくる。なんだか感覚で生きている素直だった中1男子君が、将来の息子を連想させる。