自分だけのお守り

少し前に、せっかくだから久しぶりに一緒に息子とお風呂に入ると、なぜか恋話で大盛り上がり。「最近ね、好きな子いるの?」と何気なく聞いてみる。「・・・うん。ママも知っている子だよ。」「ええ?誰だろう。」そう言って頭に浮かんだ子の名前を全部出したものの、みんな違うと言って隠してしまいました。でも、最後に伝えた子の時に、一瞬はにかんだことを見逃さなくて。「分かった!○○ちゃんだ!」そう言うと、顔が赤くなり本当に恋をしたのだと嬉しくなっていじりまくり。

その子は、息子が夕方までの延長保育で泣いてしまった時、ずっと寄り添ってくれていた優しい女の子でした。お母さんとも仲良くなり、プライベートで遊んだ時に話してくれて。「私、仕事でいつも遊んであげられないから、最近子供の方が気を使ってくれて切ない時があるよ。だから、こんな風に幼稚園の外で、お友達と遊べると思わなくて、誘ってくれて本当にありがとう。」一人一人、抱えている悩みはそれぞれで、でも信頼できる誰かに話すと少しだけ軽くなることが不思議。朝一で子供を送り届け、タイミングが同じなので挨拶をするようになり、控えめな彼女にささっと連絡先を渡しました。役に立つかは分からないけど、困った時に良かったら連絡してきてねと。とっても喜んでくれて、それ以来の友達。深く付き合っているわけではないのだけど、繋がっていられる安心感が、何とも言えない心地よさになっているんだな。「延長保育の時にRが大泣きしてしまったらしくて、○○ちゃんがそばにいてくれたの。お礼を伝えておいてね。」「うちの子何にも話してくれないの。なんだかしっかり者で、ぐいぐいいっていなければいいのだけど。」そう言って笑ってくれました。今も、席が近くて優しくしてくれているそう。そんな子に恋する気持ち、分かるよ。
そんな話で盛り上がっていると、二人とも汗だく。最初で最後のコイバナかな。沢山恋しなよ。傷ついて、時に自分が傷つけてしまって、守られて守れる人になっていく。自分の不甲斐なさを痛感して、もっといい男になってやるって、そんなことの繰り返しでいいじゃない。いい味出るよ。

入院案内の中でもらった沢山の資料。それに目を通していたら現実が迫ってきて、辛くなってきたので祖母の入院中のことを思い出してみました。調子があまりにも悪い時は、個室を利用していて、そこに敷物を敷いて、ぬいぐるみで遊ぶこともしばしば。私にとって病院は、祖母に会える大切な場所でした。そこで、姉がかくれんぼをしようと言い出し、私が鬼になり、10数えると、廊下に行ってしまう気配がしました。その後を追いかけ、廊下をぐるぐる回って探したもののいない。乾燥機室を探していると、看護士さんに怒られてしまいごめんなさい。諦めて病室に戻ると、姉が涼しい顔で祖母からもらったお菓子を食べていて、半泣き。「お姉ちゃんを探していたら、看護士さんに怒られたんだよ!なんでかくれんぼやめちゃったの?」「だって見つけに来ないから飽きちゃったんだもん。」なんだそれ!「え~ん、おばあちゃ~ん。」そう言って泣きつくと慰めながら私にお菓子を渡してくれました。ずる賢い姉に、どんくさい妹。この構図が分かっている祖母は、いつも笑いながら、二人の相手をしてくれて。そう、病院は沢山の思い出が詰まってる。

そして、不安な気持ちを押し殺していたら、蘇ってきたマブダチK君との会話。「この先、お前は結婚して子供ができるかもしれない。遠くに行って、もしかしたら連絡が途絶えるかもしれないけど、Sがこの世に生きているだけで、俺幸せなんだよ。お前が地球のどこかで幸せに暮らしてるって思うだけで、頑張れる気がするんだ。だから、俺より絶対先に死ぬなよ。もうお前と話せなくてもいい。でも、生きていてほしい。約束はできなくていい。でもな、こういう気持ちが本当の幸せっていうのかなってSに出会って分かった気がした。それを伝えたかったんだ。だから、無茶するなよ。」こんな時は、彼の言葉がどうしようもなく染みてくる。この世に生を受けたことを、こんな風に喜び、そして大事にしてくれるんだなと。連絡しづらいじゃないか。命に関わるようなことがあったら絶対に連絡しろ。アイツの絶対は絶対なのだけど、場合によってはこっちにきそうだなと笑えてきて。来てもいいけど、国道一号限定だと言って一緒に笑おうか。自分の命を、こんなにも大切にしてくれる人に出会えた私の方が、大きなお守りをもらった。だから、大丈夫。

最後にK君に会ったのは、女友達と男友達の4人でカフェをしたファミレス。婚約の報告をし、沢山笑って、お店のドアを出た時に、女友達が半泣きしてハグをしてくれました。そして、K君が伝えてくれて。「絶対におばさんにはなるなよ!」そう言うと、みんなが笑ってくれて。「おばさんを通り越して、かわいいおばあちゃんになってやる!」「ああ、楽しみにしてるよ!なれるもんならなってみろ!じゃあな、また会おう。」それが、最後に交わした会話でした。老けていられないな。ぐっと医療に寄りかかり、でも自分をしっかり持っていたらかわいいおばあちゃんになれるかな。何気ない約束が、こんなにも力をくれるなんて。言葉に心が込められるから、届くものがあるんだ。
「お前さ、本当に可愛い気がないんだよ。まずはそれを自覚しろ。面倒くさいし、物事深く考えるし、もう少し上手に甘えられないのかとか、思う所はいっぱいあるよ。この先、こんな面倒くさい女性に二度と会う気がしない。それだけSは変わり者なんだよ。良くも悪くもな。そんな人に出会ったら嫌でも人間らしくなるだろ。お前ってそういうヤツだ。」悔しいけど、認める。