天気のいい日、また電車とバスを使って、主治医のいる総合病院へ行ってきました。いつものようにドアを開け、ご挨拶をするとほっとして近況をざっと説明することに。「先生、やはりホルモン剤をやめたら、下腹部の痛みが強くなってしまい、婦人科の先生に内診をしてもらうと、癒着が酷いことが分かりました。仕方がないので治療を再開をしたら、少し痛みは和らいでいます。」「そうか。手術をするとどうしても癒着は避けられないところがあってね。僕が見つけなければ、手術しなくても良かったのかな。なんだかごめんね。」「いやいや、先生とんでもないです!先生が見つけてくれなかったら、あの後卵巣が破裂して、もっと大変なことになっていました。先生が助けてくれたんです。」そう言うと、何とも言えない優しい表情で微笑んでくれて。「ホルモン剤を飲んでいたら、痛みは和らぐかもしれないけど、それで癒着が落ち着くわけではない。手術を重ねることで癒着はもっと酷くなるから、そうならない為に薬の治療で乗り切れたらいいね。」主治医の色んな気持ちを感じ、こみ上げそうになりました。自分が見つけた卵巣腫瘍により、この患者さんは手術をすることになった。結果的に良性だったものの、腫れ上がった左側卵巣の摘出、それにより術後の痛みで苦しむことに。良かったんだけど、悪かったような、医師として何ができるだろう、いつもそんな気持ちで向き合ってくれる先生の気持ちが痛みの元に届き、温もりを感じました。残された右側の卵巣を大切にします。先生が見つけてくれたから、悪化していた右側は最小限で食い止められたんだ。優しさと感謝がそこに詰まっている。
そんな喜びを感じながら、久しぶりにシェアオフィスでパソコンを開いていると、一通のメールが来ました。よく見てみると、オフィス内で働かれていたITエンジニアの方からでした。シェアオフィスに併設されているオフィスで勤務されていたものの、お見掛けしなくなり、退職されていたことが分かりました。それが、前向きな知らせであればきっと出る時に報告してくれただろう、それがないということは何か事情があったのだとそっと見守ることに。それから半年、思いがけず連絡が入り、メールを開けると一山越えた彼の姿がありました。『お久しぶりです。お元気ですか?ご連絡できずにおり、すみません。昨年の秋にオフィスを出まして、おかげさまで○○駅周辺に事務所を構えることができました。いただいた本を大事にしています。もう一度読み返して、○○さんに近況を報告しないなんて感謝を忘れていて、絶対にこれはいかーん!と思いメールしました。すみません。どうぞこれからも宜しくお願い致します。』何かがあり、そこから這い上がった人の言葉がそこにはありました。彼がとても辛そうにしていた時、デスクに一冊の本を置いておいたことがあって。誰とも話したくない時もあるだろう、それでもほんの少しでも力になれたらと願い、届けた本でした。後日、読み終わった後、感激のメッセージをもらい、とても嬉しそうにしてくれたのでそのままプレゼントをさせて頂くことに。その本が、もう切れても全然おかしくない縁を繋いでくれていたのだと思うと、胸がいっぱいになりました。人間関係でいつも悩み、能力は十分お持ちなのに、円滑にいかないコミュニケーションの自分をいつも責めていて。そんな彼が、自分の事務所を持ちたいといつも私に語ってくれていた夢が叶ったことを報告してくれて、文面を読みながら泣きそうになりました。諦めないで良かった、何か大きなメッセージを運んでくれたようで、そんなご縁をこれからも大切にしていきたいと思っています。「自分の弱さを出して、話を聞いてくれたのは○○さんだけでした。孤独でした、ずっと。でも、この世の中に受け止めてくれる人がいるんだなって思えたら、少し救われて。ありがとうございました。あなたのお仕事、応援しています。僕のような方に届くといいですね。」このサイトを技術面でもアドバイスをしてくれた方、彼の気持ちも入っていた。
バタバタと帰宅した息子が、とてもさりげなく伝えてきました。「この間学校休んだ時、実はほとんどずる休みだったの。朝の5分は調子悪かったんだけど、その後すぐに良くなった。」「知っていたよ。それでも学校を休ませた。実際その5分間は調子悪かったしね。半日授業で、しかも雨でちょっと小寒かったから、頭痛持ちのRは休ませた方がいいと思ったの。」「ママ、気づいていたんだね。」「そう。集団生活、大変な時もあるから気持ち分かるよ。でも、その大変さの中に、喜びも沢山詰まっていてさ。そういうことに気づいて、自分の中に取り込んで、ゆっくり大人になっていけばいいと思うんだ。」「うん。ボクが学校休む時って大体いつも月曜日で、三連休だね!」「勝手に三連休にしちゃっているだけなんだけどね~。週末弾けるから、リズムが崩れやすいんだと思うよ。でも、一年間で一、二回しか休まないから偉いなあと思うよ。」率直な感想を述べると、嬉しそうにはにかんでくれました。ママに嘘ついても、きっとバレてる。でも、それを包んでくれる時もあるんだなと。「ボクね、音楽の成績はきっと良くないと思う。」「いいよ。苦手なことがあって、得意なことがあって、人間らしくていいじゃない。お母さんは苦手なことだらけ。図工の授業、本当に嫌だったから、Rが好きになってくれてとっても嬉しいよ。苦手なことを助け合っていけばいいと思うんだ。Rが好きだと言ってくれた社会。色んな地域に行って、色んなものを感じて、ゆっくり世界を広げていこうね。」「うん。ママって好きな言葉ある?」「いっぱいあるよ。」「ボクはね、“ママ”!」なんじゃそりゃ。お母さんと呼ばれるのは諦めることにする。「ママ、キャッチボールしようっ。」あと何回言ってくれるだろう。色褪せた青のグローブは、命が尽きるまで取っておく。