今月も、お誕生月がやってきました。39歳になり、40歳まであと1年をどう過ごそうか考え中。
30歳の時は、20歳からの10年間頑張ったご褒美に、思い切ってBVLGARIの時計を買いました。なんだかドキドキしてしまい、嬉しさと沢山の気持ちがこみ上げて、30代もっと飛躍できたらいいな、なんて思っていて。
週末のお楽しみに、自分を高める為に愛用していた大切なアイテムです。
出産し、腕時計をすることも無くなったので、箱にしまっておきました。久しぶりに探してみると、どこにも見当たらず、家じゅう色々な所を開けてみて、ようやく見つかったのがなぜかベッドの下。埃まみれの箱をそっと開けてみると、錆一つない時計に安堵。そして、やっぱり30歳に買った時のことを思い出し、お風呂の中で泣けてきました。
20歳の時、学費の為に少しでも時給のいい所を情報誌で探し見つけたのが、日本料理店でした。面接に行くと、20代半ばの若い男性店長さんで、着物を着て接客している女性の方達は、母に近い年齢の方が多く、とても落ち着いていました。「フランス料理のフルコースって分かりますか?その日本料理番だと思ってください。一品ずつ目で楽しんで頂きながら、丁寧に接客をしていってほしいです。できますか。」やや緊張しながら、「はい。頑張ります。」
それから、先輩に着付けを教えてもらい、お酒の種類を覚え、個室の接待では、座ってお酒を勧められたことも。どうしていいか分からず、おちょこの日本酒を飲み、顔を赤くして戻ると、先輩に笑われ心配され、「上手に断れなかったら、口を一口付けて返せばいいから。」と教えてもらいました。
大人の世界にたじろぎながらも、最初に受け取った給与明細を見て、その額に驚きました。そこには往復の交通費まで含まれていました。翌日お店に行き、店長に、「大学と自宅の途中にあるので、交通費は大丈夫です。定期券を持っているので。」と伝えると、「面接の時に知っていたよ。Sちゃんは車で大学に通っていることにして、自宅からお店までの交通費は出るように、上には伝えておいた。だから、気にしなくていい。女子大生が、お酒を扱うお店で深夜まで働くのは、大変なことだと思う。何か理由があるから、応募してくれたんだと思ったよ。」「店長、ありがとうございます。どうして私を採用してくださったんですか。」「笑顔に品があったから。落ち着いた接客をしてくれるだろうと思ったよ。年齢じゃないなって思った。」
手が滑って、2万円の食器を割ってしまった時も、試験でなかなかバイトに行けず、大幅なシフト変更をお願いした時も、タイムカードを押し忘れて帰ってしまった時も、こちらで何とかするからいいと言ってくれました。調理場の板前さん達も、着物を着た母親世代の先輩達も、皆が応援してくれたから、続けられることができたし、貯めることができた大切なお金です。その一部がBVLGARIに詰まっているのだと思うと、沢山の感謝が溢れました。この時計を使い続ける限り、忘れることのない、あまりにも大きな温かさに包まれた記憶が蘇るのだと思います。
40歳の自分へのご褒美は、1年かけて考えるとするか。10年分の気持ちを乗せることはとても大きい。30歳を超えるプレゼントが自分にできるかな。でもなぜか超えなくてもいいとも思う。
それぐらい私にとって特別なもの。