濃さのある週末

秋晴れの気持ちがいい土曜日、電車に乗って公園の新規開拓をしようと息子を誘ったものの、ボク頭が痛いからいいやと断られてしまいました。気圧の変動などで心までぐちゃぐちゃっとなり、イライラをぶつけてきたので、ここは冷静に話をすることに。「頭が痛い時、気持ちも体も辛いの分かるよ。でも、そういう時に自分で少しでもコントロールできたら楽になると思うんだ。こういった時にはこういう気分になるんだってパターンが分かると、辛さの渦から抜け出せることもあると思うから。Rは、外では本当に頑張っている。でも、辛さをお母さんには見せてくれる。お母さんも受け止めきれない時があってごめんねなんだけど、Rのいい所も苦しそうな所も、ぐずっちゃう所もみんなあなたで、お母さんはそういう所全部見ているし、あなたがあなたらしくいてくれること、それが一番大切なことだと思っているよ。相手に合わせたら、相手の人は楽だよ。でも、それで成り立つ関係を本物だとお母さんは思わない。ありのままを出せて、お互いがこの人といると自然な自分でいられるって思えることが大事なんだと思っているよ。そういう人に出会えたら、その関係を大切にしてね。」その話をすると、背中を向けてこっそり涙を拭いている息子がいました。母を怒らせることが怖く、気に入るいい子でい続けた子供時代。どれが本当の自分か分からなくなりそうな時があると、弱音を吐ける相手に出会えた学生時代。今、目の前にいるお前が本当のSだろ。俺にはよく見えているから安心しろとマブダチK君に言われ、どれだけ嬉しかったことか。辛さを浄化し、喜びを大切な人達へパスしていく。きっとこれが私の進む道。

その後、息子の心はすっかり落ち着き、お昼ご飯を食べながら伝えてくれました。「ボク、ママと旭川に住みたい!」ははっ。「Rが気に入ってくれて嬉しいよ。いい旅だったね。飛行機に乗って、綺麗な街に行って、世界がぐっと広がってくれたような気がしているよ。色々な地域を旅して、気に入った所に大学受験するのもありかもね~。」「ボク、一人暮らしより、ママと一緒がいい。」あらあら。どこかで突き放し大作戦を練ることにしよう。ふらっといなくなり、息子の元へ一通の絵ハガキが。『今、○○を旅しています。馴染んでいるから当分帰らないわよ。母より』それを見た彼女がひと言。「あなたのお母さんってちょっと変わっているわね!」「ちょっとどころじゃないんだよ!」と息子。あんたも変わってるわ!!と遠方から突っ込む予定。未来が見えるってなんて幸せ。そんなあほな妄想に笑いを堪えながら、息子と預けていたメダルをやりにゲーセンへ行くことに。ジャラジャラとした音を聞いていると、最近母が伝えてくれた話を思い出しました。「よくK君がゲームセンターでメダルをくれたわよね。何度も遊ばせてもらって本当に楽しかった!」母の口ぶりでは、どうやら一度や二度ではなさそう。その当時、父が家を出て、自宅は訳の分からない状態だったので、きっと気分転換に母を連れ出したと思うのに、必死過ぎて記憶が見事に飛んでいました。K君に聞いたとしても、彼は呼吸をするように優しさを人に向ける人だから、すっかり忘れているんじゃないかと思っていて。母が笑う姿に安堵した私を見て、彼がそっと微笑んだことは容易に想像できる。ありがとうをどうやって返そうか。お前がいない世界は考えられない、だから絶対に俺を先に見送れ。この約束を守れた時、彼に恩返しできるのかもしれない。

色々な気持ちが交錯した夜、回転寿司で息子と大盛り上がり。「前にね、おじいちゃんとおばあちゃんと別のお寿司屋さんに行った時、頼んだみそ汁に全く具が入っていなくて、おばあちゃんが店員さんに怒っていたよ~。」と知らない話をされて大爆笑。「そういえば、お母さんがまだ小学生の時、おじいちゃん(父)と回転ずしのお店に行ったらね、みそ汁が飲みたかったらしく、回ってきたお椀をおじいちゃんが取って、蓋に付いていたテープをびりびり剥がしだしたの。そうしたら、それを見た店員さんが、『すみません、それは見本なんです~』って伝えてきて笑っちゃってね。そのお椀に“お味噌汁もあります”って書いてあってただのサンプルだったの。熱くないんだから分かるよね~。」そう話すと息子もゲラゲラ笑い、伝えてくれました。「おじいちゃん、ばかじゃん!」そのひと言に余計笑えてきて、楽しいひとときでした。荷物をまとめ、不機嫌に実家を出て行った父の後姿がだんだんと薄れていく。

次の日曜日の夜も、人生ゲームがやりたいと言い出し、うまくいかないので途中で機嫌が悪くなり、思いっきり大人の対応を取ることに。「いい時もあれば悪い時もあるよ。人生ゲームなんだから。でも、悪いことって長続きしない。いいこともね。いろんな波があるから面白いんじゃない?お母さんが勝ってしまったから、最後は勝敗に関係なく、宝くじ大抽選会をやろうか!」と言うと、目を輝かせた息子。宝くじを5枚ずつ取り、私がルーレットを回すと彼が大当たりで、大満足でようやく終了しました。ローテーションするぬいぐるみを抱え、息子の部屋でハイタッチしてようやく就寝。ほっとしてテレビを点けると、ソフトバンク対ロッテの試合がやっていて、右上には『マジック1』の文字が。この試合に勝つか引き分けで優勝が決まるよねと思いながら、ぼんやり見ているとソフトバンクが8回の時点で負けていることが判明。その裏側で行われている2位のオリックスが勝ちそうだということも分かり、え?と思いながら釘付けになりました。その後オリックスが勝ち、9回表に点は入らず、ソフトバンクが負け、優勝を逃すことに。マジック1からこんなことってある?と呆然としてしまい、選手達の無念さが伝わってきました。プロ野球ファンとして、何とも言えない気持ちが押し寄せ、肩を落とすソフトバンクの選手達の姿を覚えておこうと思いました。今の悔しさをきっと思いっきり見せてくれるんじゃないかと。この記事を公開する時、どんなクライマックスシリーズの結果が待っているだろう。ワンプレーが沢山の感動を運ぶ近未来を楽しみに、この記事を閉じようと思います。負けから教わったこと、息子に繋げなければ。勝利の美酒を仲間と味わえるその時まで、選手達は諦めない。