笑いがそこにある

息子が夏祭りから帰った後、改めて面白い情報を伝えてくれました。「D君だけじゃなくて、いつも一緒に帰っているT君とも待ち合わせをしていたの。でも、前の日にもお祭りに行ったらしく、かき氷を4杯も食べて、お腹が痛くなって今日は来られなかったみたい。」「それは残念だったね。どうして分かったの?」「前の日も一緒に行ったD君が教えてくれたから。4杯も食べたらお腹壊すよね~。」と人の悲劇を笑いながら話すので、一緒に笑ってしまいました。男子の行動、どこまでも面白いな。「1杯300円のかき氷を4杯だから1200円使ったんだよ。他を選んでみようとか思わなかったのかなあ。」とある意味正論とも取れる発言に、余計に笑えてきて大盛り上がり。T君がどれだけ真っ直ぐな子か知っているだけに、他を一切見ないで突っ走った挙句の腹痛に、なんだか微笑ましくなりました。息子はというと、とりあえず全体のお店を見て、かき氷とポテトとくじ引きと射的をやって、ちゃっかり二つのおもちゃをゲットして帰宅。自宅に帰っても楽しめるっていいよね~と言いながら、車と竹とんぼでひとしきりはしゃいでいて、なんだか息子らしいなと見ていて嬉しくなって。まだ小さい時に行った市民祭のスーパーボールすくいで、彼がゲットした小さな招き猫を玄関に飾っているよ。人を呼んでくれるご利益は、ずっとそのまま。

その翌日、バスに乗って市内のプールに行くことになりました。それぞれのプールバッグに水着を詰め、忘れ物がないかを何度も確認し、バス停へ。張り切って出たので、思ったよりも早く着いてしまい、それでもバスに乗ると快適空間でほっとしました。最寄りのバス停で降り、プールまで少し歩いた為、二人とも少し疲れたものの、到着するとテンションが上がってきて。更衣室が別のことに不安を感じていることを知っていたので、受付で説明をすると、男性のスタッフさんが付き添ってくれることになり安堵。ロッカーって場所によって使い方が違うんだよね。そんなことを思いながら慌てて着替えを済ませ、シャワーを抜けると不安そうな表情でベンチに座っている息子を発見。「待たせてごめんね~。ロッカーの使い方分かった?」「うん、お兄さんに教えてもらった。」「不安の中頑張ったね。大きな一歩だよ。」そこのプールはパパと二人で出かけた思い出の場所でした。一人で着替え、周りを見渡すとお父さんとお子さんという組み合わせで、寂しい気持ちもこみ上げただろうと思います。それが分かるから、その気持ちをぐっと心の底に隠そうとしているのを感じるから、軽くハグして頭をポンポン。お母さんがそばにいるよ。異性でいること、何もかも守ることはできない時もある、でもその寂しさはきっとあなたを強くしてくれるから。いろんな気持ちが交錯していると、息子が準備体操をしようと私を促し、手を引っ張って流れるプールを案内してくれました。二人で弾け、その後はボールプールへ。沢山のカラーボールが浮いていて、ひとつ拾った息子がなぜか歓喜し、見せてもらうと書かれていたのは『4等』の文字。「何かイベントをやっていた時の名残でしょう。何かもらえる訳じゃないよ~。」と言うと、「な~んだ。帰りに商品でももらえると思ったのに。」と言うので、二人で笑ってしまって。日常の中でいきなり当たりが出たらいいよね。通勤ラッシュの改札で、突然くす玉が割られ、「おめでとうございます!あなたが100万人目のお客様です!」なんて言われたら、嬉しいかな。会社遅れるわ!!と逆に腹が立つかも。辛い時こそ、顔を上げてみてください。掌にさくらの花びらが一枚、そっと落ちるかも。その手を握った時、少しだけ元気が出でくれたなら。

そんなことをあれこれ考えていると、息子のビート板練習で思いっきり水をかけられ、二人で爆笑していると、近くを泳ぎながら通りかかった男の子に下腹部を思いっきり蹴られ、癒着部分だったので痛みで叫びそうになりました。その時、マブダチK君の言葉が思い出されて。「何を差し置いてもお前は自分の体を守れ!」彼は私が無茶するのを知っている、だから、ブレーキの利くお守りを渡してくれたんだなと。下腹部に手を当て、深呼吸し、息子に気づかれないようにその時間を楽しみ、休憩タイムがやってきて、ほっと一安心。すると、とんでもない失態に気づき、大騒ぎ。「どうしよう!Rのプールバッグにはタオルが入っているんだけど、お母さん忘れちゃった!」「え~!乾くまで待つ?ボクが使ったら、プールに持ってくるから、それからママが使う?」「そうすると、待たせちゃうからいいよ。受付で水着が売っていたから、タオルも売っているかも。ちょっと聞いてくるね。」そう伝え、ささっとロッカーに戻りお財布を握りしめ、スタッフさんに事情を説明すると、半笑いされながら言われて。「もしかしたら、入っていると思って忘れちゃった系?」どんな系統やねん!!他にもタオルだと思ったらイカだった系とか色々あるのかな、ナイナイ。と心の中で呟きながら、スタッフさんと一緒に笑ってしまい、びしょびしょの状態でミニタオルをゲットし、難を逃れました。慌てて息子の元に戻ると、冷静な9歳児がひと言。「ママ、あって良かったね。」今日はなんだか彼の成長を一段と感じ、散々遊んで、おやつを食べて楽しく帰ってきました。寝顔を見て、ほっとした夜。息子が初任給をもらうまで、がんばれ私の心と体。

プールに行ったら、なぜか姉と小学生の時に隣町のプールに自転車で行った時のことが蘇ってきました。何でもない日常。でも、私達姉妹にはそんな小さな出来事が、大人になって優しく思い出されて。いつもどこかで自分と戦っていたから、あたたかい時間がそこにあってくれたことが、嬉しかった。「お姉ちゃん、プールに入るとちょっと痩せるって言っていたよね。でも、必ずアイス食べて帰るよね。」「いいのいいの。お楽しみなんだから。」そう言って、いつも二つのアイスを買ってくれました。そんなネネちゃんが就職した大阪。海外旅行から帰って、関空の制服を見ると、吐きそうになる時もあったと話してくれたことがありました。戻りたくない実家、ここで頑張るしかないと必死でいた姉の後姿をずっと見てきました。その時出勤用に買ったルイヴィトンのバスケット型のバッグ。もういらないからと渡され、大学に一度だけ肩にかけて持っていくと、私が苦学生だとなんとなく感じていたみんなに驚かれ、使うのをやめて。それでも、かさばると分かっていて、関東にも持ってきて、一人暮らしの狭いアパートにも置き、引っ越しの度に段ボールに入れられ、今もクローゼットの中にあります。姉の苦労を知っているから捨てられなくて。彼女がまた苦しい気持ちになった時、そのバッグで会いに行こうと思っていて。きっと笑ってくれるはず。「お財布だけじゃなくて、バッグもまだ持ってくれていたの?!」と。「関空で働いていたネネちゃんがここに詰まっているから。」そんな言葉を伝えたら、彼女はまた自分を取り戻してくれるだろうか。きっとまた泣いた後に笑ってくれるに違いない。