そこに居てほしい人

最近、嬉しい忙しさでお気に入りのカフェに久しぶりに行ってみたら、いつもの店員さんがいなくてなんとなく寂しくなりました。
他の店員さんも優しいのですが、初入店からずっといてくれた方なので、そこで見守られているかのようなほっとできる雰囲気があって、「久しぶりに来ましたよ~。」と言えなくて残念。

大学図書館で働いていた時に、教授専用ブースが設けられている席に、必ず座って調べ物をされている名誉教授の先生がいらっしゃいました。
白髪で紳士的で、笑顔が穏和で、配架する時にちらっと席の様子を見るのがとても好きでした。

雨に日も風の日も、雪の日も、必ずそこに座っている佇まいが、本の中の一部分のようで。
この教授の方に教わった学生さん達は、幸せだっただろうな。

帰り際に、いつも私に手を振ってにこっと微笑んでくれる姿に、仕事の疲れは吹き飛んでいました。もちろん私も、その日一番のビッグスマイルで会釈。
でも振り返ってみると、会話らしい会話をした記憶がありません。
お互い、そこに居ることがとても自然なことになっていて、いないとなんとなく寂しくて、別れ際の挨拶が小さな繋がりを感じさせてくれて、そんなことが堪らなく嬉しくて。

言葉は無くても伝わる想い、それが静寂の中の図書館だったこと、色々なことを感じ、考える場所で、感性が磨かれていたのかもしれないと改めて思います。

利用してくれる学生さん達の中で、図書の貸出が無くても、勉強や資料収集などで図書館を利用してくれる方達は沢山いました。
会話は無くても、私がカウンターに座っていることにほっとしてくれた学生さんはいたかな。
こちらはしっかり見えていましたよ。
よく利用してくれる方達は、自分のお気に入りの席がなんとなく決まっていて、いつもの学生さんがいつもの席にいてくれることが嬉しかった。

上司がこんなことを言っていました。
「図書館は、人が来てくれなかったらただの建物だよ。綺麗に整っていても、利用してくれて初めて図書館としての役割が果たせていく。だから、来てくれる人を大切に迎えよう。」
形式的な対応ではなく、心のこもったサービスとは何か、沢山のことを教わりました。
そんな上司は、図書館職員という「人」もまた、同じように大切にしていた。

時々怒られたし、背筋が伸びる緊張感もあったけど、そこに居てくれることでやっぱりほっとできた人。

今度行ったら、一凛珈琲のいつものスタッフさん、居てくれるかな。
言葉は無くても、安心できる雰囲気、私も大切にしたい。