さようならは言わない

昨日、インド人の友達から連絡が入り、『I will be visiting 幼稚園 tomorrow, so want to say final goodbye.(明日幼稚園に行くよ。最後のお別れを言いたい。)』という内容を見て、ほっとしました。12月に会う約束をしていて連絡が無かったので、もしかしたらもうシンガポールに行ってしまったのかもと思っていたら、予定が遅れていて、きちんと挨拶に来てくれるところがいかにも彼女らしくて。とても優しく、丁寧。そういったところも、ホストママに似ている。

オーストラリアのホストファミリーと別れの日、ママが車で送ってくれることになり、「街を案内するから寄り道をするよ。」と言ってくれました。まず向かったのは、フィリピンからの移民の方達が集まるショッピングモールでした。中を一緒に歩いていたら、そっと言葉をかけてくれました。「S、あなたなら分かるでしょう。他のショッピングモールとは何かが違うことを。ここに来る人達は、アジアからの移民の方達が多く、みんなこうして助け合ってここまで来たの。知らない国で生きていくことは大変なこと。でも、同じような境遇の人が集まれば頑張れることもあるの。私達はこうして、この国で励まし合ってきたのよ。あなたは、とても繊細な子。この場所に連れてきたら、言葉よりも雰囲気でそのことを感じてくれる気がしたの。」そう伝えてくれたママと目が合った時、私の目が潤んでいることに気づき、そっと肩を抱いてくれました。
この家族に出会ったのは必然、そう思ったのは私だけでなくママも同じ気持ちでした。移民の人達の暮らしを見せたかった。それは、短い間でも一緒に暮らした私に過去をさらけ出してくれたママの優しさ。ここで感じたものを忘れないで。それが彼女の暗黙のメッセージでした。

その後、有名州立大学のキャンパスに連れて行ってくれました。大学の名前がプレートで書かれた芝生のど真ん中で手を広げた私をパシャリ。「どうしてここに連れて来てくれたの?」と聞いた私に、笑いながら伝えてくれました。「だって、Sは大学が大好きでしょ。」嬉しいぐらい鋭いな。ブリスベンの歴史ある大学、このキャンパスに足を踏み入れたから、また頑張れる。

最後は、ゴールドコーストに向かう高速バスのターミナルまで送ってもらい、最後のランチ。「日本食が恋しいでしょ。」と言われ、誘われたのはフードコートにある親子丼のお店でした。どうしてこのお料理を親子丼と言うの?と聞かれたので、適当に説明することに。「鶏が親で、卵が子供だから親子丼!」そう伝えると、「日本人って頭もいいけど面白いのね!」と笑ってくれました。
「これが、私の職場の番号、これが自宅の番号、アドレスはこれ。S、いつでも連絡してきなさい。」そう言って渡されたメモ用紙は、びっしり手書きで書かれていて、しょっぱい親子丼を食べながら「Thank you.」というのが精いっぱいで受け取りました。

トランクを引き、エレベーターに乗って別れる前、ママは決して別れを言わなかった。次があると、また会えると信じてくれていたから。彼女は多分、私に会い、オーストラリアに来た頃を思い出したのだと思います。過去を振り返るきっかけになったのだろうと。それを、私に伝えたかったし、ありがとうも、またねも、元気でねも、沢山詰まったハグをしてくれたのだと思います。だから、「Goodbye.」ではなく、「See you.」だったのだと。

インド人の友達とも同じような別れ方ができるかな。オーストラリアに行く時は、シンガポールを経由していくよ。
だからやっぱり、”final goodbye”じゃない。