新規開拓中

文庫化されるまで粘ってみようと思っていた『ノーサイド・ゲーム』(池井戸潤著、ダイヤモンド社)。耐えられなくなり、どさくさに紛れてプログラマーのMさんに買ってもらいました。私がうずうずしていたのは気づいていたよう。さすがはビジネスパートナー、分かってはいたのですが、序番ではまりました。野球はこのままずっと好き。そんな中で、また新たに胸を熱くさせてくれるスポーツに出会えたようです。

実は、シェアオフィスでお世話になっているスタッフさんの中で、ラガーマンだった方がいて、私の質問攻めに喜んで答えてくれました。2014年まで会社のラグビーチームでスタンドオフのポジションにいたよう。がたいが良く、顔にあるすり切れた小さな痕がなんともいえない戦いの激しさを伝えてくれているようで。内側から溢れるエネルギーと情熱に、話していて嬉しくなりました。「僕、日本以外だとニュージーランドを応援していたんです。あのハカ(国際試合前に舞う民族舞踊)って、実は2種類あるんですよね。相手チームは絶対見なくてはいけないというルールはないんですが、やはり敬意を払う意味でも並んで見ていたりしますね。」そんな風に嬉しく話してくれた時、ネット上で見た、ある一つの記事を思い出しました。
それは、愛工大名電の野球部員の方達が、練習前にラグビー選手の影響を受け、ハカをやっているということ。スポーツの枠を越え、国を越え、自分達を奮い立たせようとするそんな姿に感動しました。私も、野球愛はそのままで、ラグビーというスポーツを純粋に楽しもうと思わせてくれたグッドニュースでした。

そんなラガーマンだったTさんのことを色々調べてみると、東北の子供達にスポーツで笑顔を届ける為、何年も前からラグビーを教えに行っていることが判明。そのことを改めて尋ねてみると、いい表情で話してくれました。「僕、子供がとても好きなんです。今年は釜石の方へ行ってきたんですけど、復興は大分進んでいましたよ。」と。もうあかん。受付で、朝から人が行き来するところで、泣きそうでした。「ルールもよく分からない子供達と、ラグビーボールを持って走るのは楽しいですよ。」その笑顔は、その場所でもらった子供達の笑顔そのままなのだろうと思いました。「ラグビーって、部活でもあまりなかったりして、子供達に浸透しづらいんですよね。もう少し普及してくれたらなってやっぱりそう思います。」

私に何かできないかな。まずは、彼が所属していた企業チームのグッズを買い、トップリーグの試合を観戦しに行くこと。そして、ラグビーの良さを私なりの視点で書くことができたら。『One for All, All for One(一人は皆の為に、皆は一人の為に)』このフレーズを耳にする度にこみ上げてくる気持ち。日本代表の桜のジャージを見て、勝手にご縁を感じたこのスポーツを小さくてもいいから応援したい。その気持ちが、きっとまたこの場所で膨らんでいくと願って。
「私、スクール・ウォーズ世代なんです。ラグビーをやっていた方に出会えたのが初めてだったので本当に感激です。1時間ぐらい熱く語り合いたいです。」「いくらでも話しますよ~。」そんな話で盛り上がっていたら、受付の電話がプルップルッ。「すみません、また改めて。」と申し訳なさそうに伝えてくれた表情を見て、高揚しながらエンドレスですよと心の中で呟きオフィスへ。

どうして、ラグビーをやろうと思ったのか、なぜこのスポーツに惹かれたのか、今も大学生や子供達に教えているのはどうしてか。そして、仲間をどう思うのか。企業スポーツの中にいた彼だからこそ、聞いてみたいことは山のよう。とことん付き合ってもらうよ。