それぞれの世界観

息子がふとした拍子に伝えてきました。「ボクも左利きが良かった。」「どうして?世の中の仕組みは右利き用になっていることが多いから、結構不便な時もあるよ。」「だって、ママの世界に行けるから。ママと一緒がいい。」その言葉を聞いて、何とも言えない気持ちがこみ上げてきました。二人暮らしを始め、前より密が濃くなったことを実感し、その中で息子なりに居心地の良さを感じてくれているようでした。自分は違うけどその人の大変さを経験したい、そう思えることは彼の器を少し広げてくれる一歩なのだと思うと嬉しくなって。相手を知ろうとすること、知りたいと願うこと、そんな気持ちを持っていたら、その人も心を開いてくれるかもしれないよ。ほんの少し空いた間口から手を繋げた時、お互いが温もりを感じ合えたらいいね。人と人が優しく繋がれるのはこんな時。お母さんの世界に来てくれてありがとう。

新学期が始まり、新しいクラス表を見てみると、仲良しのKちゃんの娘ちゃんとまた同じクラスだと分かり、嬉しくなりました。そして、新しい担任の先生は30代後半の女の先生。学年便りを見ると、図工の担当は2年生の時に担任をしてくれたT先生だと分かり、驚きました。3年生の広報委員でもお世話になり、まさか今度はこのような形で繋がれるとは思わなくて、ご縁とはこういうものなのかもしれないなと感激してしまいました。すごく頑張らなくても自然な流れで関わり合える人達を大切にしていきたいと改めて思っています。2年生の時の図工、大きな魚を作る授業で、沢山のボタンを魚に貼り付け、夜になるとライトも点くという自由過ぎる息子の作品に笑ってしまいました。上手い下手とかでなく、お魚さんが伸び伸び泳いでいるようで、そのライトは自分だけでなく周りの魚への優しさにも思えて、その発想そのものが息子らしいなと和ませてもらったことが蘇ってきました。その時の図工を評価してくれたT先生、彼の中にある何かを見てくれた気がした何とも言えない通知表の時間でした。あれは、ちょうちんあんこうだったのか?!

マブダチK君と久しぶりに話した時、彼の仕事のことも伝えてくれました。「俺さ、課長になって、新入社員の時からずっと可愛がってきた部下が辞めるって言い出したんだよ。理由を聞いたら社長のパワハラだって。コロナのワクチンは絶対に打て!という人で、でもみんなそれぞれ色々な事情があるから、部下は打てずにいたんだよ。そうしたら、そいつだけにかなりまくしたてて強い口調で怒鳴ってさ。周りが聞いていても明らかなパワハラだと思った。でも、それを理由に辞めるってちょっと待てよって思ってさ。もう一度考え直せないかって聞いたんだけど、彼の意思が強くてそれ以上引き止めなかった。Sみたいなヤツなんだよ。本当に人が良くて、だから余計に言われちゃいやすいのもあった。沢山傷ついてきたんだと思う。あまりにも腹が立ったから社長にあれは言い過ぎだと俺からも言ったんだよ。でも、社員の為だと言って、全然分かっていなくてさ。だから、Sの気持ち分かる、実感としてな。くそ~。本当に公私ともに色んな話を聞いてきて、可愛いヤツだったんだよ。それがパワハラで辞めるって・・・。」「それっていつの話?」「先週だよ!本気で社長に腹が立ったから、休んでは困る日に有給取って、子供達連れて東山動物園に行ってやった!もう知るかよって思ってさ。」どうやら、私が息子を連れて行った前日に彼は動物園に行っていたことが判明。中間管理職の彼が、部下を守ろうと上司に楯突いたことが分かり、正義感の強さは相変わらずで、そんな行為を見て、部下の方は少し救われたんじゃないかと思いました。「K君のような上司がいてくれて、その方は幸せだったね。これまで届けてくれた気持ち、彼の中でずっと残っていくと思うよ。」そう伝えると、微笑みながら部下のこれからを心配していました。心髄までK君はK君なんだなと。
ガストのドリンクバーとオムライスを食べ、彼がささっと伝票を掴んだので、自分の分は払うと伝えると「うるせい!」と言われてしまいました。「お子さん達の為におもちゃでも買ってあげて。ここで払ってもらったら次回誘いづらいから。」「今のセリフそのまま返す。子供の為に買ってやれ。いいかS、この先俺がお前から払ってもらうことは一度だってない。2万の食事をしたら千円ぐらい出してもらうかもしれないけど。あのなあ、これだけいい時間を過ごせたんだよ。お金じゃないぞ。俺がどれだけ楽になって、また頑張るかって思えたか分かるか。」そう言って屈託なく笑ってくれました。途轍もなく辛くなったらガストのオムライスを食べに行こう。彼との時間が蘇り、私もきっと同じように頑張れる。

名古屋駅で息子と選んだ新幹線は、K君がご馳走してくれた分から出したものでした。最近、遊びに行った公園の近くにはお土産屋さんがあり、富士山近くでゲットしたマメ太(次男)と静岡のサービスエリアで見つけたマメジロー(長男)、そして今回マメコを発見し、どうしても三きょうだいにしたいからと懇願され、三番目の長女として我が家にやってきました。お兄ちゃ~んと言って抱き合う三匹。息子の世界はいつも穏やかで、たまに旅に連れて行き、寝る時も一緒。K君の長女の名前には桜の一文字が入っていて、それを知った時泣きそうになりました。どうしても入れたかったんだ、離れていても繋がっている世界。2時間再会して、確認するのには十分過ぎる時間でした。彼はきっと最終章までいてくれるだろう。