社会見学の醍醐味

学校の帰りに、ボランティアの方達が運営してくれている児童達の遊び場所。息子は学校から遠かったこともあり、ほんの数回しか参加したことはなかったのですが、また再開してくれたことが分かったので、お迎えに行く約束をして見送りました。

パソコンバッグを自転車に入れ、時間通りに体育館へ行くとなぜか体操服を着た上級生の子達ばかり。あれ?もしかしたら中止ですれ違ってしまった?と慌てていると、優しそうな女の子が近づき、「どうしたんですか?」と話しかけてくれました。「今日ね、ここで子供と待ち合わせをしているんだけど、学校後の遊び場所、変わってしまったのかなあ。」と困惑していると、その子の友達がさらに近づき教えてくれました。「それならパソコン教室です。」「ありがとう!それってどこ?」「二階に上がってもらった一番奥です。」「なになに?どうしたの?」とこれまた元気そうな男の子も会話に参加。そしてまた一人彼の友達追加。なんだかもう二年生の親なのか、司書だった頃の自分なのか分からないぐらいの状態になってしまい、小学校にしっくりき過ぎだなと笑いを堪えながらお礼のご挨拶。「みんなありがとう~。本当に助かったよ~。」と手を振りバイバイ。あれ?体育の時間だったよね。先生ごめんねと思いながら、慌てて息子の下駄箱へ。それにしてもいい子達だったな、いい学校なんだろうな。そんなことを思いながら、靴を脱ぎストッキングのまま靴を持ち、保護者用のプレートを忘れた!と怪しい人全開で二年生の靴箱を物色。焦っている時ってどうしてこんなに目的のものが見つからないのだろうと思っていたら、長靴を発見!まだいてくれたのね。

とりあえず校内にいることは分かったので、言われた通りに二階に上がったものの、軽い迷子になってしまいました。ここはどこ?と混乱していると男の先生が通過してくれたので、泣きつくと丁寧に教えてくださり、無事に目的地へ。真面目になにやら勉強をしている息子を確認し、手を振るとテンション低めで帰りの準備をしてくれました。ボランティアの方にお礼を言うと、笑いながら伝えてくれて。「お母さん、玄関で来賓用のスリッパがあるので良かったら使ってくださいね!」靴を持ってうろつく私がさぞかし面白かったようで、一緒に笑ってしまいました。いいな、こんな朗らかな方達に囲まれていたら子供達も元気をもらえる。そして、息子にひと言。「最後は手を洗って帰ってね~。」感染対策が素晴らしい。
その後、息子のクラスを通過すると、担任の先生が隣のクラスの先生とミーティングをされていました。少しだけご挨拶をと思い、声をかけると、誰だっけ?という顔で出迎えてくれました。そうだよね、靴持ってやばい人です。きちんと名乗ると一気に先生の表情が和らいでくれて。「お忙しい所、すみません。」「いえいえ、今授業研究を二人でやっていたんです。どうやったらよりよくなるかの相談です。」ああ、混ざりたい。そんなことを勝手に思いつつ、「すごいですね!大切な時間ですね。」そう言うと、微笑みながら頷いてくれました。ご心配をかけてしまったお詫びと、もう大丈夫なことを伝えると、優しい返事が。「今日の帰り、R君の気持ちをやんわり聞いてみたんです。随分落ち着いたと話してくれました。」先生のアフターフォロー、さすがです。丸っと包み込んでくれる、この安心感に何人もの子供達が助けられてきたんだろうなと思いました。

「R、隠れていないで先生にありがとうをしよう。」すると壁の向こうから出てきて、照れながら伝えてくれました。「ありがとうございました。」ペコリ。「何かあったらすぐに言うんだよ。先生とタッチしよう!」そう言って出してくれた大きな手。そこに息子のまだ小さな手が重なり、泣きそうになりました。先生感染が~ではなく、さっき息子に手を洗わせておいて良かった~でもなく、言葉よりももっと大きな信頼や繋がりを、親と子供とはまた違った先生と子供の絆を感じ、堪らない気持ちになりました。“先生”という仕事、いいな。
そして、息子と一緒にワイワイ言いながら階段を降りると、踊り場に来たところでまだ先生が立って会釈してくれている姿が見え、どんな気持ちで二人の背中を見送ってくれたのだろうと思いました。この親子なら大丈夫、そう感じてくれただろうか。

パソコン教室に向かう時、1年1組の廊下を通過しました。そこには、また1年生の担任になった前の女の先生が、机に向かいお仕事をされていました。ほんの一瞬通過しただけ、それなのになんだかどうしようもなくその時間が尊く感じられ、心の中で会釈。先生、ありがとう。

下駄箱で靴を履き、今育てている学校のトマトを一緒に観察して帰ろうとしたら、信号待ちの所で旗を片手に安全に子供達を誘導するボランティアの男性を見かけました。傘を持って対決を挑む男の子の相手を旗の棒でやろうとしていて、その光景が何とも微笑ましく、感慨にふけっていると息子がひと言。「体育館で遊べると思っていたのに、コロナの影響で、自主勉強だったんだよ~。だからもうやだ~。」気持ちは分かる!体育館が使える日までゆっくり待とう。でもね、お母さんはとっても優しい時を過ごせたよ。そこには、温かい人達が沢山いてくれたから。

お姉ちゃん、空港のお仕事大変?そんなことを大阪で聞いたことがありました。「人間関係も含めて色々あるよ。神経も磨り減る。辞めたくなったことなんて数えきれない。でも、飛行機が飛び立つ前に空港スタッフがお客様に手を振るんだよ。その瞬間がとっても好きでね。忙しくていつも見られる光景じゃないんだけど、そのタイミングはこの仕事をやっていて良かったなと思う。」姉のこの言葉が大好きでした。9割は嫌なことの連続、でも1割のキラキラを大切にしている、それを知っている人は気持ちを好転させていけるのだと思いました。
社会見学、そこにいる“人”の汗が堪らない。努力の一滴、時に涙の一滴なのかも。