時間が経った後

息子の入学式の為に購入した、ベージュのパンプス。午前中に靴屋さんへ行き、色々試して一番しっくりくるサイズを選んだものの、気に入った色が品切れだったので、後から郵送してもらいました。早速履いてみると、「ママのお靴、可愛いね!」という我が家のちっちゃいピーコが登場。すっかり気に入り、入学式も片道20分を歩いて往復することに。
そして、仕事用で使おうと思い、週末に電車に乗って移動してみると、靴擦れに気づき、痛くて戻るのが精一杯でした。なんでだろうと考えながら、玄関の靴箱を開けてみると、原因が判明。以前買った同種類のパンプスは22.5cmだったのに、今回は間違えて22cmを購入してしまっていました。理由は多分、午前中に買いに行ったから。一日歩いた足が結構むくんでしまうことを、すっかり忘れていたという大失態です。エナメルなので、素材的に、段々広がってくるということは期待できそうにないので、足の為にも短距離用の臨時フォーマルに決定。

大学図書館にいた頃は、事務室についてからぺったんこの黒い靴に履き替えるので、金曜日など、気分を変えたい時はヒールのあるロングブーツを履いていったこともありました。帰宅時間になり、あの時間の電車に乗りたいと慌てながらブーツに履き替えようとすると、すっかりむくんだ足にファスナーが食い込んでしまい、ストッキングが伝線するわ、足痛いわで最悪な状態に。ふくらはぎを揉みながら強引に履き、もう二度とロングブーツは履いてくるものかと自分に誓った苦い経験です。

去年の春休み、かなり気分が悪かった日、私の顔色があまりにも悪いので、息子がさすがにソファで寝かせてくれて、近くで遊んでいました。その時なんとか気持ちの悪さを紛らわそうと観ていたのは春の選抜高校野球。東海大相模(神奈川)と智辯和歌山(和歌山)という好カードでした。東海大相模がリードをしていた8回。智辯和歌山の監督が、最後のチャンスだと思い、塁に出たランナーに代走を送りました。“絶対にホームベースに帰ってこい。”そんな監督の気持ちが選手に伝わり、他の選手にも伝わり、猛攻で本当にホームに戻ってきた選手を見て、震えました。準決勝の試合、俺達がここまで積み上げてきたことを、ここで終わらせるわけにはいかない。そんな気迫が、チームの気持ちが、画面を通して伝わってきました。

代走は、打つことも投げることもしません。試合の終盤に、ここぞという時に足の速い選手が走る場面です。たった一つの仕事だとしても、苦しい練習や試合を乗り越えてきた仲間の為に、そして、自分達をここまで強くしてくれた監督の為に、絶対に戻ってくる。ワンプレーが、こんなにも人を惹きつけるのだと、負けは彼らの終わりではないのだと、そこにどれだけの力を注げるのか、どれだけ仲間を信頼できるのか、その一瞬の為に、どれほどの思いをしてきたのだろうと、選手達を見ながら沢山の気持ちが流れ込んできました。

時間が経っても、その時の感動が蘇ってきます。ピンチランナーか。テレビや新聞に取り上げられなくても、とても大きな役割であり、その姿が格好良かったです。

試合は、延長戦の末、智辯和歌山の勝利。試合後のインタビューで監督が言っていました。「負けてもいいから、夏の為に何かを掴め。そんな話をしながら来ました。」
名監督と言われる所以が、ここにある。